「…か、カカシさん、どうしたんですか?」
待ってましたとばかりに「えぇ?」とカカシがわざとらしく上目遣いにこちらを見遣る。
引きつる頬を宥め、カカシの言葉を待っていれば、カカシは人差し指で床にのの字を書きながら、恥らった声を出した。
「イルカ先生ってば、俺の前で自慰してくれるなんて、そんな…。願ってもないことって、きゃぁぁぁ」
『カカシ、恥ずかしいッ』と声を上げる割には、邪念のこもった瞳でこちらを凝視するカカシに、どっと疲れが出た。
「アホかぁぁあ! 誰がんなこと言った! つぅか、してたまるかッ」
憤るイルカに、カカシは「じゃぁ、何ですか?」と首を傾げる。誰か普通の会話というものをこいつに教えてくれ。
心の奥底で嘆きながら、イルカはズボンから手を離さず立ち上がる。
「着替えですよ、着替え。はぁ、ついでに風呂に入ってきます」
前の部分が微妙に黒く滲んでいるのを隠しながら、イルカは廊下に面した風呂場へと足を向ける。
「あ、先生、忘れ物ですよ」
引き止め、手に持たせてくれたものに、タオルを用意してくれたのかと、気が利くカカシに感謝の念が沸き起こる。
ありがとうございますと、口を開きかけて、手にあるものに目を走らせた途端、顔が引きつる。
白いフリフリのエプロン。
「なんじゃ、こりゃっぁぁ!」
「あぁ、ひどい!!」
渾身の力で床に叩き付けたものに、カカシが悲鳴をあげて縋りついた。
「ひどいのはあんただ! だから、言ってるだろう?! あんたは俺に着せて何が楽しいんだッッ」
魂の雄叫びをあげるイルカに、カカシは白いエプロンを抱きしめたまま頬を膨らませた。
「楽しいに決まってるじゃないですか。イルカ先生がこれ着てくれるんですよ? 恥ずかしそうな顔で、『きて、カカシさん』って言ってくれるんですよ?! ひらひらとしたエプロンの下、見えそうで見えないアングル! その癖、後ろを向けば無防備なその姿! どこを取っても、おいしい服のどこが楽しくないと言えるんですかッッ」
ぐわぁっと写輪眼を見開き、つつーと鼻血を出してまで、力説してきた男を前に、膝が崩れ落ちる。
「…誰か、こいつの病気を治してやってくれ……」
「俺はまともですッ」と叫ぶカカシを無視していれば、恨みがましい目で見られた。その強い視線に怯めば、カカシは口を突き出し問いかけてくる。
「じゃ、逆に聞きますけど、イルカ先生はどうして着るのが嫌なんですか?」
「男が着るものじゃないからです」
きぱっと言った言葉に、カカシはため息を吐きながら首を振った。
「いやですね〜。頭、相当固いですよね、先生は。…まったく先生という立場でありながら…」
小さく呟いたカカシの最後の揶揄に、イルカの頬が引きつる。
自分で教師は天職であると胸を張って言えるイルカに、カカシの言葉は到底聞き流せる代物ではない。
「…カカシさん、どういう意味ですか?」
引きつる頬を感じながら笑顔で問えば、気のない顔でカカシはさらりと言った。
「いえね、了見の狭い先生って子供たちからすれば、さぞかし堅苦しい存在だな〜と思った訳ですよ。だって、自分の好きな物を好きって素直に言えないんですからね」
カカシの言いたいことが分からず、苛立ちが募る。思い切り顔を顰めていれば、カカシは「分からないですか?」と笑い、目を細めて説明し始めた。
「だからですね。もし、先生の可愛い教え子の中に、男だけど可愛いもの好きな子がいて、こういったフリフリのエプロンも勿論大好きで、家で着ていたりするとしますよ。そういう子がいるのに、イルカ先生はずばっと言っちゃう訳ですよ。『男が着るものじゃない』って」
「う……」
以前、昼休みに女子生徒がイルカにリボンを巻きつけた時、苦笑しながら似たようなことを言ってしまった事実を思い出す。あのとき、男子生徒もかなりいた。
嫌な汗を掻くイルカに、カカシは続けて言う。
「イルカ先生は、腹が立つほど子供に好かれていますからねぇ。あなたが思っているより、自分の発言が子供たちに影響を及ぼすことを自覚した方がいいんじゃないですか? 幾人の子供たちが大好きなイルカ先生の教えを守って、自分の好きな物を手放してきたんでしょうねぇ」
「可哀想に」とぽつりと溢した言葉に、頭を抱えた。しまった、やっちまった。自分で気付かない内に、子供たちを傷つけてしまっていたなんて何たる失態。教師、失格じゃないか!
ごめんよ、イバラ、タイチ、シャケ、ゴマ、ノリ、アオ、カラクサ、シャミ、ドドイツ、カンタ、シバ、セン、タクマ、エド、キイ、ハネ、サカン! 傷つけちまって、本当にごめん!
今、受け持っている男子生徒を代表に、イルカは床に膝をつき、深く深く頭を垂れた。深い慙愧の念に耐えられず、顔をあげられないイルカの肩に、優しく手が乗る。
顔を上げれば、そこには菩薩のような笑みを浮かべるカカシがいた。
「カカシさん…」
救いを求めるように、眼差しを投げかければ、カカシは分かっていますとゆっくりと頷く。
仏はここにいたかと、感動のあまり瞳を潤ませるイルカにカカシは綺麗な笑みと共に、イルカの手を包んだ。
「大丈夫、イルカ。安心して。これがあなたを救ってくれる唯一のものだよ」
広げた両手に、被せるように乗せてくる白い救いの布に、イルカは胸を熱くした。そうか、これが俺を救ってくれる唯一のもの。これに腕を通しさえすれば、俺は
「救われる…って、言うとでも思ってんのか! あんた、俺を馬鹿にしてんだろうッッ」
もう一度、手に握らされた物を床に叩きつけ、おまけとばかりに足で踏みにじる。
「あ、あぁぁ! ひどいですよぉ、イルカ先生!」
滂沱の涙を流して、白い物体を掻き抱くカカシに、イルカはケッと荒んだ顔を見せる。
「あんたも懲りない人ですね。俺は着ないって言ったら、着ないんです!」
両腕を組み、主張すれば、カカシの舌打ちが聞こえてきた。
野郎、俺がそんな手に乗るとでも思っていたのか。
この憤りを握り締めた拳に乗せようかと考えていれば、カカシはイルカに顔を向けた。
「ぶーぶー、どうして、先生は嫌がるんですか? 俺の話にびんびんと教師魂は揺さぶられていました。『男だから』っていう理由はもうないでしょ?」
胸の内をずばりと言い当てられ、イルカは怯む。
ねーねーと袖を引っ張るカカシの手を叩き、腰を下ろすと、しぶしぶ口を開いた。
「確かにカカシさんの言うことは一理あります。男だから、女だからというつもりは毛頭ありません。ですけどね、視界の暴力というものを知らないんですか、あなたはッッ」
床を叩き、イルカは力説する。
「いいですか?! まず、そんなもん着たら脛毛がばりばり見えます。腋毛も腕毛も、全て余すことなく晒されるんですよ?! 見苦しいことこの上ないと思いませんか? 思うでしょ。思うと言ってくださいッッ」
イルカの気迫に押され、カカシは曖昧に笑う。
「じゃ、じゃぁ、イルカ先生は見苦しいから着たくないんですね?」
「そうですよ。わざわざ汚いもの見せたって、いいことないでしょ? ごつい体だし、好まない限り、そんな似合わないもん着たくないですよ」
それじゃ、俺、風呂沸かしてきますんでと、腰を浮かせたイルカの手をカカシが掴む。
何ですかと、振り向いたイルカの唇にちゅっとキスを送り、瞬時に赤く染まった顔を間近に見詰めながら、カカシは優しく囁いた。
「風呂はもう沸いていますよ」
「う、あ………ありがとうございます」
顔を俯け、唇を押さえる仕草が可愛い。
目の前に晒された首筋がほんのり色づいている様を目の端に収めながら、イルカの膝頭を掬った。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
「……。な、何すんですかぁ?!」
一瞬ぽかんとした顔と見詰め合い、己の状況を理解した途端、暴れ出すイルカを宥めすかし、カカシは風呂場へと足を向ける。それを認めて、イルカの暴れっぷりにも拍車がかかる。
「ど、何処行くってんですかー! 何、考えてんだ、あんたは!」
脱衣所に入り、ぎゃーと叫びながら逃げの体勢に入るイルカの服を毟り、生まれたままの姿にさせて風呂場へ追い立てる。
「イルカ先生からお許しも得たことですし、その下準備をしようと思いましてvv」
「お許しだぁぁ?! あ、あんたその手に持ってる物騒なもんは何ですか?!」
ホルダーから抜いたクナイを指差し、イルカは風呂場の壁にぴたりと張り付く。二人の間を妨げる湯気を追い払いながら、カカシはクナイを振り振り近づいた。
「決まってるでショ。イルカ先生をつるつるてんにしてあげるんですv」
蒸し熱い浴室で、イルカの顔が青ざめたのが分かった。次に来るのはお得意のあれだろう。
「何、考えてんだ、この変態ぃぃぃぃぃぃぃいぃッ」
耳を押さえていても、凄まじい衝撃を伝えてくる声に苦笑する。お得意の大声を防がれ、イルカは血の気を引かせて、壁に抱きつくように身を縮こめた。
「二度も同じ手が通じる訳ないでしょ。それと、あんたが抱きついていいのは俺だけですよ」
一体、どんな独占欲だと、無機物にまで嫉妬するカカシのイカレ具合を心配しながら、イルカは逃げ場を探す。
右に視線を走らせれば、浴槽がある。左に視線を走らせれば、すぐそこには壁。そして、正面にはクナイを手に、空いている手をわきわきと開閉する、まんま変態の男が迫っている。
天井も低く、一人暮らし用に作られた狭い浴室は、逃げ場も隠れ場もあったものではない。
「か、カカシさん、勘弁してください! これから、季節は夏に向かうんですよ?! 毛がない男なんて、みっともないことこの上な―」
目にも止まらぬ早さで、口を塞がれた。
口を覆う手の平を抗議してみるが、ふがふがと間抜けな音が出るばかりだった。
「ふぅ〜ん、イルカ先生って、ずぅ〜っと俺のことみっともないって思ってたんだぁ」
カカシの言葉に、しまったと目を見開いた。
おそるおそるカカシの顔を窺えば、いつも眠たそうに半分だけ開けた目を違った意味で半眼にさせ、イルカを見詰めていた。
イルカは知っている。
カカシが自分の体毛が薄いことを気にして、頭髪用の育毛剤を体に塗りたくっていることを。
いくら塗っても生えない毛を諦めることなく、せっせと塗るカカシの姿は、帰らない主人を待つ忠犬のような一途さと通じ、イルカの涙腺を崩壊させた。
それを知った日、イルカはこのことは自分一人の胸に仕舞い、墓まで持っていこうと決心した。
そんなカカシを前にして、何と言うことを言ってしまったのか!
「あ、あのですね、カカシさん。俺、カカシさんに限っては、それは当てはまらないと思うんですよ。カカシさんって、すごい綺麗だからそういうのも、とっても似合いますよ。女の子が夢見る王子様そのものじゃないですか!! うわ〜羨ましいなッ。俺も一度は王子様って呼ばれてみたいっ」
必死に説得してみるものの、口を塞がれていては無意味だということをイルカは気がつかない。だが、カカシは腐っても上忍だった。
ふるふると体を震わせ、カカシは涙に滲んだ瞳できっぱりと言った。
「…それじゃ、王子様って気分を思う存分味合わせてあげますよッ! どこもかしこもツルンツルンの、幼女好みのおうぢさまとやらになればいいんですよッッ! イルカ先生のロリコーンッッ」
どうしてそうなる、はたけカカシ! あんたの頭はどれだけイカレちまってんだ!!
迫り来るクナイに、イルカはぎゃぁぁぁっぁと叫んだ。
「ふ、んぁ、やめ……」
途切れ途切れに漏れ出る懇願の声に耳を貸さず、カカシは零れ出る汁を撫でながら、手を動かした。
あれから、腕に始まって脇、腿、脛に至るまで全部の毛を剃ってやった。
やっぱりというか予想通り、激しく抵抗するイルカを快楽で絡めとりながら剃る行為は、新しい発見と驚きに満ち溢れ、カカシを大満足させた。
Sランクの任務を終えたような爽快感を味わいながら、ぐったりと浴室の床に横たわる、しどけないイルカの姿を視姦するに辺り、カカシはある一点から目が離せなくなった。
確かに今のイルカは、クノイチだったら羨むほどの無駄毛のなさだ。けれど、あそこの一点は………。
綺麗な筋肉がついた腕から脚を辿り、股の中心に唯一(髪を除いて)生い茂る、硬質な黒い草むらを見詰め、カカシはごくりと生唾を飲み込む。
いいかもしれない…。
かくして、カカシの思い付きにより、イルカは最後の砦ともいうべき毛を刈られることとなった。
「イルカ先生、綺麗にしましょうね〜。ほら、はしたない汁ばっかり溢したら、剃りにくいじゃないですか。ちゃんと我慢して」
ふるふると健気に勃つものを指で弾いてやれば、イルカは身を震わせた。
「やめ…っ。もう止めて、くださ…」
長時間、射精までいかせない快感を与え続け、イルカの体はぐずぐずに溶けきっている。
十分、熟した食べ頃イルカだが、メインイベントがこの後控えているのだ。ひたすらに我慢の子だ。
「イルカ先生、すごい格好。鏡で見せてあげたいくらい、やらしいよ。股開いちゃって隠しもしないでねぇ」
「ふ、ぅ」
力なく首を振った拍子に、イルカの眦から涙が一つ零れ落ちた。
壁に背をつかせ、開いた両足首をカカシの肩に乗せ、胸につくほど折り曲げさせている。
両手はカカシを遠ざけたいのか、近づけたいのか判断しかねる力で、股の間に位置するカカシの髪を掴んでいる。
「じっとしないと、大事なところを傷つけちゃうよ」
意地悪く笑いながら、緩く立ち上がったものにクナイを当てる。
ひくりと震え、怯えた眼差しを送る瞳が堪らない。
傷つけるつもりは毛頭もないが、イルカの怯える様は嗜虐的興奮を呼び起こす。
「あとちょっとだから、我慢して」
クナイを動かせば、イルカの瞳がぎゅっと閉じる。その瞳からこぼれ出た涙を舐めることで、食らいつきたくなる欲望を静めた。
浴室にクナイが滑る音が響く。
それにつられるように、時折イルカが息を零し、意味のない声を漏らした。
目を頑なに閉じ、やるせない様で眉間を顰めるイルカから目が離せない。本当にイルカはカカシを煽るのが上手い。
いっそイルカの身に溺れてしまいたい。
時折止まってしまうクナイと葛藤を繰り返しながら、手を動かす。
どっちが拷問か分かりゃしないネェ。
身体的には、散々煽った上でまだ一度もイカせていないイルカの方が辛いはずだ。けれど、カカシにしては、自分の方がきついと思えるのはどうしてだろう。
我慢させている側なのに、我慢させられている心持ちだ。今までのことが全て、イルカが企んだことではないかと穿ってしまう。そして、イルカは、ごちそうを前に、涎を垂らしてひたすら我慢しているカカシを笑っているのだ。
高い場所かを見下ろし、飢えた哀れな獣を笑っている。
あぁ、もー。訳わかんなくなっちゃう。
我慢し過ぎて、馬鹿な妄想に囚われそうになる。
頭を振ってやり過ごしたその時、浮き上がっている尻の窄まりに指を掠めてしまった。
「っっぁ」
びくりと痙攣するように跳ねた体より早く、クナイを遠ざけた。
危ないと一瞬冷や汗を流しつつ、顕著に反応を示したイルカを見て、生唾を飲み込んだ。
ちょっとだけと、尻の窄まりを掠めるように触れれば、イルカが息を飲み、喉を曝け出す。惹かれるように、喉へ喰らいつき痕を残した。
触れてもいないそこは、すでに熱を持ち、カカシの指を飲み込もうとするかのように扇動していた。
カカシが丹精込めて開発したそこは、快楽を受け止めるための場所として成り代わっている。
「か、カカシ、さん」
咎めるような懇願するような声をあげ、カカシに視線を向けるイルカにぞくりとした。
否応なく煽られる。奥歯を噛み締め、イルカを嬲ることで欲求を押し殺す。
「駄目だよ、イルカ。ここを綺麗にしないと、あげられないよ」
出した声はみっともなく震えていた。
「ぅっ、もぉ、やぁ」
けれど、イルカは自分の感覚に精一杯のようで、カカシの虚勢すら気づいていない。
舌足らずな声をあげ、くしゃりと顔を歪ませた顔が最高に可愛い。
素肌でイルカの肌と密着すれば我慢できないため、カカシは服を着たままイルカと対している。
けれど、服がきつい。ある一点を抑えてある部分が、痛いほどにカカシを苦しめていた。
何度も破綻しかけたが、やせ我慢を貫き遠し、最後の毛を剃り終える。
クナイを片づけ、目を瞑ったままのイルカの耳元へ、カカシは囁いた。
「イルカ、ほら、見て。綺麗になったね。―そうだ、ご褒美あげなきゃ。随分我慢したもんね」
ちゅっと音を立てて、瞼に口づけを送れば、イルカの目が薄らと開く。それと同時に震える手を伸ばし、カカシの袖を掴んだ。
何度も頷く、やけに素直なイルカが可愛くて仕方ない。
「か、カカシさん」
早くと、切なく潤んだ目に促され、カカシは物分かりよく微笑み、健気に震えて起つ性器に指を添えた。
「や、ちがッ」
途端、悲鳴じみた声をあげるイルカを無視して、カカシは指を動かす。散々煽った分だけ、終わりも早い。
戯れに敏感な先を抉るように触れただけで、あっけなく前を弾けさせた。
「―――っぅぁ」
縋りつくようにカカシに体を押し付けてきたイルカを抱きしめ、その項に鼻を寄せ、思う存分匂いを吸い込む。
その他愛無い接触でさえも、イルカには感じる要素になるのか、小さく声を上げ、体を小刻みに震えさせる。
――あぁ、もう堪んない。
最後のなけなしの理性を奮い立たせ、ちゅっと肩に口づけを送り、イルカから体を離した。
荒く息をつきながら、詰るようにこちらを見上げるイルカは壮絶な色気を垂れ流している。
「――ごめーんね。すっかり体が冷えちゃった。お風呂入りたかったでしょ。ゆっくり入っておいで」
「え」
まさかこのまま終わると思っていなかったのか、イルカは泣きそうな顔をしてカカシの袖を引っ張った。
体が冷えたなんて大嘘だ。イルカは快楽で体を火照らせ、熱いくらい。
「なに? どうしたの?」
親切ぶって聞いてやれば、イルカは唇を噛み締め、快楽に火照らせた体を震わせた。待っていても、何も言いそうにないイルカにため息をつく。
ここまでしてやれば、素直に誘ってくれると思ったんだけど、まだまだ強情だよ〜ね。
半分残念、残り半分は今後に期待と嘯きながら、カカシは背を壁に預けた状態で身動きできないイルカを抱え、浴槽に入れてやった。
「カカシさん…」
引き止めるイルカの手に口付けをし、カカシは耳元で切なく囁く。
「イルカ先生、俺、待ってますから。一人でしちゃうなんて寂しいことしないで下さいね」
カカシの言葉に、顔を赤らめるイルカの鼻先に口付けを送り、カカシは振り返ることもせずに浴室から出た。
「もっとも、それくらいじゃその熱は治まらないだろうけどね」
イルカを変えたのは、間違いなく自分だ。
自分なしではいられなくなる体になるまで身を寄せ穿ち、肌の感触を刷り込ませるように覚えこませた。
バスタオルとカカシが買った白いエプロンだけを置き、カカシは鼻歌交じりに布団を敷きに、寝間へと急いだ。
さぁて、イルカ先生はどうしますかねぇ?
勝算は五分。勝てばそれでよし、負けても無理やり着せてやろう。
これから始まる狂宴を思い浮かべ、カカシは笑った。
おわり
……おわりです!
実はこの小説、カカイラーではない友人のリクエストでした。
お題は「カカイルでエロ!」
へたれな私はここまでしか書けませんでした……。ふふ。