ビンゴブックに載った男9




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「……六代目、仕事しないで何見てるんすか」
髪型だけ見れば、愛しいあの人と似ている補佐官くんが厳しい目でオレを睨んでくる。
オレの手元にあるのは、イルカさんが昔つけていた日記だ。
幼少時からつけていたそれは、九尾の事件で一旦燃やし尽くされたが、中忍になったのを機に再び書き始めたらしい。
そして、それをこっそりと盗み見、何度も熟読しつつも、特にお気に入りの一冊が手元にあるこれ。
ちょうどオレとイルカ先生が出会った頃の日記で、イルカ先生はその時の思いを日記に記している。
可愛い。本当に可愛い。
今のイルカさんの馴れた故の気安さとか、お互いの信頼関係に裏付けされたぞんざいな態度とかも心許してる感があってぞくぞくするけど、この時の初々しいまでのイルカ先生の存在は国宝並みに可憐で貴重だ。


「んふふふ、ないしょ~」
分かっているくせに聞いてくる補佐官ことシカマルに笑みを返せば、シカマルはため息を隠さずに面倒くさいとぼやいた。
アスマの口癖がすっかり板についたシカマルが微笑ましい。
にやっと違う意味で笑えば、態度に似合わず勘の鋭い師匠大好きなシカマルはむくれたように顔を背けた。
「イルカ先生が一カ月里を出るからといって業務に支障はきたさないでくださいよ。それも補給だと思って諸々黙っておきますけど、疎かにしたらバラしますから」
淡々と脅すシカマルに、はいはいと相槌を打つ。
それが面白くなかったのか、シカマルは机に手を付いた。
「六代目。早速、あちらの機密箱の整理をお願いしたいんですが。残すところ、あれだけなんでとっととお願いしますよ、マジで」
シカマルが親指で指した先には、木箱の中に乱雑に放り込まれたガラクタがある。
三代目の遺したものらしく、本来ならば五代目が処理をしなくてはいけなかったのだが、五代目のズボラさに加え、本来の業務で四苦八苦な有様に手がつけられず、オレにお株が回ったものだ。


「分かったよ。一時補給も済んだことだし、ちゃっちゃとやーりますか」
今日里を発つイルカさん恋しさは、幾分あの日記で紛れた。
あーぁ、先方からの熱烈な要望がなけりゃ、火影権限で潰してやれたものを。
木の国から新しい忍びの教育機関を立ち上げるために、ぜひご指南をと指名を受け、イルカさんは旅立つことになった。
ったく、何のためにアカデミーの校長に就任させたと思ってるんだろーね。 校長先生になったらおいそれと木の葉を出ることはなくなると思っていたのに、校長ともなると色んな所に顔を出すとは思わぬ誤算だよ。ほんと、初耳なんだけどー。一体誰がその情報を秘匿したのかなぁ? オレ、六代目なんですけどぉ。アカデミー校長と火影は密接に関わり合ってるから、顔を合わせる機会多いですよって、テンゾウお前言ったよね? テンゾウの癖してオレを騙してたのかーな?
「……いや、実際、校長と火影の仕事、一緒になること多いじゃないですか」
オレの思いは筒抜けだったのか、シカマルが冷静に返してくる。
ま、確かにその一面はある。会議とか、会議とか秘密の会議とか、用がなくても呼び出せるくらいに公的にも関係は近しいよ。でも、オレが言っているのは、長期で里を空けることになるなんて思わなかった、ってことだーよ!!
「……前に、ご一緒に砂の里へ言ったじゃないっすか。公的に、おまけに二週間も」
ジト目で突っ込まれて、つい黙る。
「さぁて、整理、整理と」
都合の悪いことは無視をして、ガラクタへ手を伸ばした。
何々、エロ本。陶器の欠片。仕損じの紙。書類、書類、書類と。
書類は後々の資料になりそうなものだけを取って、あとは捨てるための箱へとぶちこむ。
エロ本は、ま、あれだ。嗜み程度に保管するのが吉だ。何せ、三代目は書籍収集家として名高い。一見ガラクタと思っても、実はなんてことがざらにあるため保管する方がいいのだ。
え、別に興味何てないよ。だって、オレにはイルカさんいるし、ま、内容が良かったら参考にでもゲフンゲフン。ま、そういうことだ。


まずはどういう系統の書籍かを確認するべくページをめくる。
ふむふむ、古語のエロ本とはまた狭いところを攻めてくる。古典エロ、あの妙に長ったらしい言い回しは嫌いではない。
ほうほうと読み進めているオレを、シカマルはどこか引いた目で見つめてきたが、イチャパラが愛読書だったオレには痛くも痒くもない。
速読していると、中間部分に差し掛かったところでひらりと何かが舞い落ちた。
「ん?」
手のひらサイズに折られた黄ばんだ紙だ。
折り線がある部分は、折り目がつかないようにと意図的に折られたそれを手に取り、慎重に開いてみる。


「え?」
開いたと同時に出た人物画に思わず声が出た。
「……イルカ先生?」
興味が出たのかこちらに近寄ってきたシカマルがその人物の名を呼ぶ。
その紙には満面の笑みを浮かべた子供がいた。
鼻には特徴的な一文字の傷。ちょんまげに結った髪。無邪気に笑うその表情。
幼くもそれはイルカさんの特徴を如実に表していた。特に笑顔なんて、そのまんまだ。見ている人も笑顔にしてしまう力を、この絵はよく捉えている。
単にイルカさんの幼少時の似顔絵だったら、こうも困惑しなかった。だが。
「どういうことですか。これ、ビンゴブックの一枚絵じゃ」
シカマルの指摘した通りだ。
これは間違いなく、ビンゴブックの一部だ。
それが証拠に、似顔絵の隣の情報欄にはイルカさんの名前及び特徴が書き連ねている。
そこで、さきほど読んでいた日記を思い出す。
ビンゴブックについてイルカさんが書いていた。
一時期、両親と離れてどこかで暮らしていた、と。自分がビンゴブックに載ったため、どこかへ隠れていた、と。


「……本当だったのね」
当時、思いが通じ、浮かれ切っていたため突っ込むのを忘れていた。
イルカさんのことで知らない情報がまだあったのかと、己の至らなさに臍を噛む。だが、今それを知ることができるのだと、ビンゴブックを具に読み込む。
「……こ、これは」
「……マジ、ですか?」
シカマルも読み終わったのか、続けて信じられない声をあげている。
イルカさんがビンゴブックに載った経緯は、不運というか、引きが強いというか、天然誑しというか、もう何と言っていいか分からない内容だった。


ビンゴブック曰く。
その一、本人の忍び的才が重要ではない。特筆すべきは関わった者たちの名前である。
木の葉の三代目火影、火の国大名、はたけサクモ、木の国大名、領主、波風ミナト、うずまき一族などなど。
挙がっている多方面で知られる数々の著名な名に、当時3、4歳児だったイルカさんがどうやって関わったのかと疑問は募るばかりだ。
というか、親父、お前もか! ちょっと、いつイルカさんと会っていたのよ、オレ全く知らないんだけど!? てか、ミナト先生も? オレに紹介するとか考えつかなかったの!?
その二、上記にあがった者たちからの寵愛凄まじく、もろ刃の剣となり得る。
その三、そしてこの先その資質は伸びることが予想され、その影響力は増していくものと考えられる。
その四、鴨葱的な存在かもしれない。
その五、情報収集している時にもちょっと心を取られかけた。
って、おいー! 何、してんの、このビンゴブックの記事まとめた奴! もしかしなくても接触した? こんなふわふわしたマシュマロみたいな子供に接触したのか、お前!!!


思ったよりも数倍恐ろしい記事の内容に、震えが止まらない。
これは一年間出禁にするわ。一歩も外に出るなって言われるわ。
たぶんだが、当時このビンゴブックが出回った時、三代目はおろか周囲の人間たちは焦ったに違いない。自分が可愛がっている子供が己たちのせいでビンゴブックに載ってしまった。もうどうにかするしかないだろう、と。
木の葉や他の国の一部の大名総出で、きっとこのビンゴブックを回収したのだろうなぁ。
その時の様子が目に浮かぶようだ。
そしてそれはきっとイルカさんが閉じこもっていた一年間で成し遂げられたのだろう。やり遂げた面々を思い浮かべ、涙がこぼれ落ちそうになった。


しんみりとしつつ、ビンゴブックをまた丁寧に織り込み、そっと襟元へ忍ばせた。
シカマルは何か言いたそうな顔をしたが、これは三代目から譲り受けた機密事項扱いの物だ。堂々とこれはオレの物だと言える。
いやー、しかし、整理してみるものだーね。こんな可愛いイルカさんの絵が見つかるなんて本当にラッキー。


これなら後二日は頑張れると己を励ましながら、業務を再開する。
よし、これを終わらせたら、ちょっと息抜きに里外で散歩しよう。その途中で木の国行きの団体と会っても全然不自然じゃないもーの。
襟元にそっと両手を添えて、さてまずはと執務机に積み上げられた書類へ目を向けた直後、ノック音が聞こえた。
シカマルがオレに目を向ける。それに頷いてやると、心なし浮かれて扉を開けている。
「六代目、ご無沙汰しております。シカマル、今いいかい?」
気軽にシカマルへと声を掛けるのは、テマリ姫だ。
「なんだよ、直接こっち来るこたないだろ。呼べば帰ったってのに」
素直じゃない言い方だが、顔はどことなく嬉しそうだ。新婚ほやほやな二人は、何だかんだと言って仲がいい。
オレは今朝、その最愛な人と別れたというのに、この二人はとても仲が良い。
「ちょ、ちょっと六代目、押さえてくださいよ、押さえて!! 本当に大人げねぇな!」
オレの怨念の念を受け、テマリ姫を背に隠すシカマル。
オレだってイルカさんを背に隠して、大丈夫オレがいますとか何とか言ってみたい。イルカさんの場合、「何、言ってんだ、あんたが隠れてろ」とオレを背に庇うんだから……好き。
あ、でもあの時はオレ、イルカさんを背に庇った。ものすごい危機的状況でそれが出来た! 惜しむらくは状況が会話を許さなかったけど、心の中では逢瀬を重ねていたから実質イチャイチャしていたといっても過言ではないよね!!


「……いやいや、嘘だろ。これ、本当か!?」
昔を思い出して興奮していると、シカマルの声に水を差された。
「一体なんなーの?」
現在進行形でイチャイチャしている二人へとやさぐれた視線を向ければ、テマリ姫が焦り始める。
「まさか、本気で知らないのか? 私はてっきりイルカ先生にはそれ相応の護衛が――」
テマリ姫の言葉に心の声が凪ぐ。
二人が覗き込んでいる紙切れを横から掻っ攫い、一目見て納得した。


たぶん最新版だろう。
今のイルカさんの顔がビンゴブックに載っていた。
つい先ほど見た記載にそっくりそのまま、挙がる名前は様相を変えて。


「あの、六代目? 落ちついてくださいよ。六代目?」
「あのさ、その、何と言っていいか。とにかく冷静になった方がいいと、思うんだ」
仲良し夫婦が揃って落ち着けという。
オレは二人に向かってにこりと微笑み、そして。


「落ち着けるわけないでしょうがぁぁ!! テンゾウ、他暗部二名。お前ら上忍連中収集してこい! ナルトたちも呼べ、ついでに里にいるイルカ先生の元教え子全員呼び出せ!! シカマル、火影勅命だ。最低限の防衛人数を置いて、木の葉全勢力をもって殲滅するっっ」
久方ぶりに血が沸騰した。
こんのふざけたビンゴブックを書いた奴は後程捕まえて目にものを見せてやる。
『御意!』
天井から降りてきたテンゾウを除く暗部二名が姿を消す。
残るテンゾウに何ちんたらしてんだと怒りの眼差しを向ければ、テンゾウは慌てて口を開いた。
「六代目。肝心のイルカ先生の元には」
「オレが行くに決まってるでショ!!」
間髪入れぬ返答に、テンゾウが絶句した気配を見せる。
「シカマル、あとは任せた。オレは先に行く。用意でき次第、順次追ってこい」
「……御意」
「本気か、シカマル!?」
オレの言葉を否定せずに受け入れたシカマルにテマリ姫が驚いた声を出すが、それに肩を竦めて応えていた。
「イルカ先生に何かあったら国が滅びても止む無しっていう輩が多いんだよ、おれらの世代は特に」
ニヤッとどこかほの暗い笑みを浮かべたシカマルにテマリ姫の顔色が悪くなる。
「もう、一体どこの馬鹿がビンゴブックなんて載せたんだか。仕事増やしちゃって。情報の出所洗わなくちゃ、おちおち寝てられないよ」
ぶつくさと文句を言いながら、テンゾウも姿を消す。
動き出した周囲を横目で見た後、オレも万が一のときのために用意したとっておきの虎の子の巻物を使うことにした。


指定点はイルカさん自身。
夜な夜なこっそりとイルカさん自身に術を定着させて、常に途切れさせないように掛けていた転移術。
チャクラを注ぎ込むなり、周囲の空気が揺らぐ。
陽炎のように揺らめく火影室内を見つめ、その時を待っていれば、けたたましい足音と同時に扉が開け放たれた。
「カカシ先生! おれも一緒に行」
「残念、お先ぃー」
任務帰還直後なのだろう。
だいぶ草臥れた服装のまま駆け込んできたナルトへ、手を振ってやる。
さすがはイルカさんのビンゴブックに名が挙がるだけのことはある。きっちりイルカさんに何かあったらどうにかなる筆頭の登場に笑みがこみ上げてきた。
目を見開き、何か抗議しようと口を開いたところで、術は発動し、景色は一転して森の中へと変わる。
木々の香りと緑の匂いが鼻腔を刺激する。
そして、招かざる客も近場に潜んでいた。
馬二頭辛うじて同時に走ることができるかという道なりで、何か異変を察していたらしい一行は、背中合わせの円陣を組みながら、突然背後へ現れたオレを目にし呆気に取られていた。


「は!? カカ……六代目、 何故ここに?」
ぎょっとした表情で、オレに目を剥くイルカさんへ、オレはにっこりと告げてやる。
「はい、火影勅命、木の葉の総意でイルカさんの木の国行きは中止となりました」
「はい?」
ぽかんと口を開けた表情も可愛いんだけーどね。それは里に帰ってから楽しませてもらおうか。
言葉尻と同時に、袖口に仕込んでいた暗器を飛ばす。
それを皮切りに殺到する気配へぐらぐらと燃え滾る殺意を覚えた。
「オレのイルカに指一本触れさせると思ってんの?」
「!? お、俺が狙われてるんですか!?」
イルカをオレの背に下がらせ、左右から忍刀を手に突っ込んできた忍びをクナイで捌く。
忍術を放つ気配はなく、あくまで接近してくる様子からして生け捕りが目的らしい。ま、あのビンゴブックの内容からしても生け捕りにした方が何かと有用だろーしね。
オレという存在を前にして一瞬怯みはしたが、逆にビンゴブックの信憑性が高まったようでやる気を見せている。
手練れの上忍三、いや四。やっぱ三か。敵さんの本気度具合が推し量れるが、まだまだ認識が甘い。
オレを除けば、上忍一名、しかも成りたてと、イルカを含む中忍のアカデミー教師職員5名を守りながら戦うのは荷が重いが、オレがイルカの元へ来た時点で勝利は確約されたようなものだ。


無駄口を叩かずに攻撃態勢を取る敵忍へ、こちらも迎え撃つ姿勢を取る。
オレの後ろにいるイルカは元より、オレの言葉を聞いた木の葉方も気合を入れて各々の武器を構えてはいるが、たぶんそれを使うことはないだろう。
均衡が破られる寸前、禍々しいチャクラがこちらへと接近してきた。
「イルカ、せんせぇぇえぇぇぇぇ!!!!!」
半分獣化しかけているナルトの登場に、敵の皆さんへ動揺が走る。
その動揺をついて、機会を窺っていた第三者が猛襲した。
さしもの上忍レベルとはいえ、ますます速さに磨きがかかっているあいつの一撃を避けることは敵わなかったようだ。
首筋に手刀を叩きこまれ、呆気なく意識を刈り取られる。
「……え、サスケ?」
横から飛び出た第三者を目にし、イルカさんが声を掛ける。
声を掛けられたサスケはどこかバツが悪そうな顔をして、軽く頭を下げたが、一段と身なりが薄汚れていることからして慌てて木の葉へと帰ってきたことが窺えた。本当に、こいつらイルカさんのことになると目の色変えるよね。


「イルカ先生って、サスケがなんでいるんだってばよー!!!」
「……うるさい、うすらトンカチ」
「はぁ!? お前ってばいつもそれだよな! 久しぶりに会ったってのに、その態度はないんじゃねぇのー!」
きぃきぃナルトがわめき始め、いつか見た光景と重なる。ナルトの遠く後ろに続々と集結する気配を感じて、まぁまぁの集合速度だなと合格点を出しつつ、呆気に取られているイルカさんを横抱きに抱き上げた。
「うぁっ、ちょ、ちょっと六代目っ」
きっとここにいたら、イルカさんはこいつらと話が盛り上がって滞在時間が長くなるのだ。
特にサスケなんて本当に久しぶりだから、正気に戻ったらイルカさんは喋りたくて仕方なくなるに違いない。
「下ろして、ちょっと下ろしてくださいってば!!」
人前で抱き上げられて慌てふためくイルカさんへ、オレはにこっと微笑む。
その笑みに何かを感じたのか、イルカさんは急におとなしくなり、窺うように視線を向けた。


「イルカさん、あなた、一年間は里外およびオレが指定した場所以外は出禁です」
「……え?」
「出禁です」
すぱっと言い切るオレに、イルカさんの目がうろうろと激しくさ迷いだす。きっと既視感を覚えているのだろう。うん、それは合っている。だって、あなた。


「ビンゴブックに載ってますからね。ほぼ監禁状態になると覚悟してください」


さーっと顔を青ざめるイルカさんを抱きなおし、オレは颯爽と里へととって帰る。
「ちょ、カカシ先生!! 何、一人で帰ってるんだってばー!!」
「おい、カカシ!! この場をどう仕切るつもりだ!!」
敵忍を縛りあげていた、木の国の派遣団がぽかーんと口を開けてこちらを見ている。その中に混じって、ナルトとサスケが抗議してきたが、オレは綽綽と答えた。
「後続にシカマルがいるから、そっちの指示に従って~。ま、予行練習だ。シカマルと協力して、イルカさんのビンゴブック回収してきな」
はぁぁぁぁぁぁあぁ!? と文句ありありの威勢いい声が聞こえたが無視。
オレは一刻も早く、この天然誑しで目の離せないオレのイルカさんを保護しなければならないのだ。


そういえば、火影就任と同時に隠れ家を数件継承した。
そこはガチガチに封印されている曰くつきの場所でもあり、中にはあの世とこの世の境目と繋がっているといわれているようなものもある。
その中でも特に特殊なものは、屋敷自体が生きていると言われるものだろう。
その屋敷は火影の命を一度だけ聞き、中に匿うものを守ってくれるという。
あまりに特殊な屋敷は当然木の葉の機密事項に入っており、当然、代々の火影のみにしか知られていない。


「……カ、カカシさん、俺、一年間どこへ住むんです?」
遠き日の記憶を思い出したのか、タイムリーな問いかけをしてくる。
オレはある予感を胸に、にこっと笑ってやる。
「それはたぶんイルカさんがよく知る場所ですよ~。子供の時の謎が解けますね。それにしても、いや~、本当に参りますねぇ。イルカさんってば、本当に本当に参りますねー」
「え、突然何言ってるんです? え? もしかして、怒ってるんですか?」
理不尽なといわんばかりにこちらを見上げるイルカさんを言葉に、オレは少し腑に落ちる。
あぁ、そうか。あのビンゴブックを見た時から感じていたモヤモヤ感。
怒りに近いようで少し違うこの感情は、きっと嫉妬だ。
でも、オレは正直に言うつもりはない。
だって、イルカさんにとっては不可抗力に近いことだし、全くもってイルカさんは無関係なのだ。
ただね。


今回の最新版のビンゴブックに載っていた、イルカさんを溺愛している候補が多すぎるの。
幼少期でも多かったのに、三倍以上は膨れ上がるかはおろか、オレの名前が筆頭にあがってもいいところなのに、一番にはナルトの名前で、オレは三番目。しかも二番、木本ゴンサクって誰よ。オレ、全く知らないよ? そんな知らない奴がオレより前なの? ナルトはまだ血の涙が出るほどの思いで我慢できるけど、木本ゴンサク、テメェは許さねぇ。あと本気で何なの、このビンゴブックの執筆者!! 一体どこでイルカさんと会っていたんだよっ。「手元に置きたい」とか、ふざけてんのか、テメェェ!!


「いいえー、全然怒ってませんよぉ。全く露ほども怒ってませんからぁ」
「嘘です!! 目の奥が全く笑ってません! ぶち切れてるじゃないですかっっ」
小刻みに震えだしたイルカさんに、んふふふと意地でも笑みを見せ、オレは木の葉へと駆ける。
テンゾウがきっとビンゴブックについての情報をさらいまくっているだろうから、そこから執筆者を見つけよう。
あ、そうだ。せっかくだから、正しい情報を載せてあげることにしよう。あれ、そうしたら……。


「あー、イルカさん、もしかしたら監禁生活二年になるかもしれません」
「……。っ!? どうしてです! アンタ一体何考えてんだ! おい、こら、アンタ、今何考えている!?」
襟首つかまれてがくんがっくん揺さぶられたが、オレは気にしない。
だって、ビンゴブックってのは正確な情報が売りポイントなんだよ。間違いはたださないとダメじゃなーい。


「んふふふ、んふふふふふ」
「あぁぁぁぁ、なんで俺がビンゴブックに載るんだよ! こんなの間違ってる!!!」


こうして、イルカさんの名前は二年間限定で、ビンゴブックに載ることになり、楽しい監禁生活を送ることとなる。








おわり。











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イルカ先生の人脈はすごいものだと信じてる……!! きっと行く先行く先で気に入られているに違いないって信じてる!!
信じさせてぇぇぇぇぇ!!!orz


以上、読んでいただきありがとうございました!!