おまけ
「どうした、ナルト。元気ないじゃないの」
お前にしては珍しいと、歯に衣着せぬ物言いで尋ねてきたカカシに、肩を落としていたナルトはつまらなさそうに唇を突き出した。
「べっつにぃ。おれの誕生日のツケの支払いで、イルカ先生が今日から里外任務でいなくても、おれ、平気だしぃ。おれたちだって今日から里外任務だし、別に凹んでなんてないってば」
口では平気と言っているが、気にしているのは明白で、拗ねたように道端にあった小石を蹴るナルトに、サクラとサスケは内心で笑みを浮かべていた。
策はうまくいき、イルカとカカシを離すことに成功したらしい。
ナルトには少々可哀想なことをしたが、これも自分たちの快適な生活環境を維持するための止むを得ない犠牲だ。
許せ(してね)ナルトと、両名は胸の内で呟き、本命の様子を探った。
本命のカカシは、特に普段と変わった様子はなく、手に持つ本も猫背も覆面も至って変化は見られない。そればかりか、時折鼻歌を口ずさむほどの上機嫌具合で、ナルトほどとは言わないまでも、相当落ち込むであろうと予想つけていた二人は肩透かしを食らった気分に陥った。
カカシの弱点を見誤ったかと、二人で密かに視線を交わし合う。
しかし、どう考えてもカカシの弱点はイルカ以外あり得ないとサクラが首を捻った時、ナルトが「うそ」と小さく呟いた。
一瞬喜色が浮かんだ声音に視線を向けるよりも早く、ナルトが大きく手を振り駆け出す。
「イッルカせんせー!!」
里外任務でいないはずの、恩師の名前を叫びながら。
「え」と小さく声をあげるサクラに続いて、サスケも呆気に取られて、走るナルトの背中を見つめる。
どういうことだとお互いの顔を見合わせる前に、不意に肩へ手が乗った。
二人の背後。
簡単な引き算の問題で、ナルトがいなくなり、後に残るのは当然。
「お前ら、なかなか見どころあるなー」
間伸びした、とても聞き覚えのある声が、頭上から降ってくる。ぎっと固まった二人の肩を一、二度叩き、声の主は朗らかな調子で語りかけてきた。
「敵の弱点を見極め、最大限の有効な手段で攻める。確かに良い手だ。ただし」
トーンが落ちた声と同時に、肩を掴まれた。思わず声をあげそうになる喉を叱責し、サクラは唇を噛みしめ、サスケは身構える。
「敵の動向も常に監視してなくちゃ、せっかくの策も後手に回っちゃ―うよ?」
笑い声を残し、大門の側に立つイルカの元へと足取り軽く向かうカカシへ、詰めていた息を二人は吐いた。
さすが上忍と言うべきなのか。策を見破られたことといい、背後に立たれた時のプレッシャーは今まで味わったことがないほど極悪なものだった。
滑り落ちる汗を拭いながら、サスケが忌々しそうに呟いた。
「藪蛇になっちまったな」
一瞬止まり、次の瞬間、サクラはサスケの言わんとすることを正しく理解した。
つまり、本日の里外任務は。
「イルカ先生と一緒の里外任務ってことっ!?」
任務中、あのバカップルをずっと見続けなくてはならないのかと、悲鳴をあげるサクラの先で、ナルトの歓声を耳にしながら、サスケは小さく諦めの笑みを浮かべた。
敵の策さえ利用し、己の利益にする。
高い勉強代だったなと、恩師と上司、そして何も知らず無邪気に喜ぶ、とことん鈍いスリーマンセルの一人が呼ぶ声に従い、サクラを引きつれて、サスケは歩き出した。
おわり
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…おまけになっているのか、なっていないのか。悶々ですが、要はカカシ先生ってきっと策士だと思うんですって言うことを伝えたかtt……orz
少しでも楽しんでいただけたら、嬉しいです。はい(T^T)