レッスン10
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「大丈夫ですかねぇ、あの二人」
執務室で書類を捌く手を休め、不意にシズネがぽつりと呟いた。
この後、綱手が注目している木の葉競馬レースが始まるため、ラジオに噛り付いていたいのだが、どうしても抜け出せない所用が重なる度に溜まった書類が雪崩を起こしたことを機に、秘書であるシズネがこれを片付けるまで一切の賭け事禁止令を出してきた。
公私共に、全てをシズネに依存している綱手にはその令を破ることなど出来るはずもなく、こうして執務机に噛り付いて書類を捌いている。
今日は大穴が絶対来ると第六感がうなりをあげているというのにと、ぎりぎりしながら書類と格闘していた途端、これだ。
人がせっかく真面目にやっているというのに、お前は他所ごとかいと非難の眼差しを向ければ、シズネは正しく理解した後、お茶を濁すように提案してきた。
「休憩しましょ。休憩。綱手様、今日はとっても頑張ってますから、奮発して大虎屋の羊羹だしちゃいますよー」
ここでちくちくと嫌味を言っても良かったが、ちょうど喉も乾いたこともあり、見逃すことにする。
「さぁね。まぁ、なるようになるだろ。本当に、あいつらときたらはた迷惑な奴らだよ。だいたいどこの世界に、里長が出張って恋の架け橋をしてやる隠れ里があるんだよ」
慣れた手つきで茶を入れ、続き部屋にある応接間の机にシズネが羊羹とお茶を用意する。こちらへどうぞと促されるままに、書類だらけの机から一目散に背を向け、ソファへぐったりと体を預けた。
里長に就任してからだいぶ慣れたとはいえ、機密扱いからこまごました書類の処理は目の疲れと首肩の凝りを蓄積していく。とんとんと気休め程度に肩を叩いていれば、シズネが背後に立ち、肩と首に触れて、チャクラを流してくれた。
血液の流れを良くする、医療用に用いられるチャクラ術だ。
ほんわりとした温かさと凝りが薄れていくような気持ちよさがあり、張りつめていた体が解れていく。
「ふふ、ここにいらっしゃるじゃありませんか。ねぇ、五代目」
上機嫌な声音を出すシズネに、綱手ははぁとため息を吐き、首を振る。
「致し方なく、だ。お前も甘いねぇ。私が嬉々として一介の忍びの恋愛事情に絡んでお節介焼く、世話焼き婆の柄だと思ってるのかい?」
じろりと背後に目をやるが、シズネはにこにこと笑ったまま返事をしない。
その事実に非常に塩辛い気分に陥りつつ、綱手はもういいよと手を振り、共にお茶を飲む。
ずずっと啜り、その温かさとお茶の風味にほっと息がこぼれ出る。
空気がたちまち緩んでいきながらも、シズネが興味を示すのは件の二人のことだ。
「綱手様。私は後聞きで、出合わせてもいなかったから分からないんですけど、そこまで鈍かったんです?」
大虎屋の羊羹の甘みを堪能しつつ、その問いに首を竦めて答えてやる。
「あぁ、壊滅的に鈍かったね。特にカカシ。あいつは故意に鈍くしていた疑いがある。ったく、本当に捻くれた奴に育っちまったもんだよ。小さいときは……小さいときも生意気だったな」
何かを思い出したのか、ふっと煤けた笑みを浮かべる綱手にシズネは深く聞かないでおこうと心に刻みつつ、話を回す。
「故意に、ですか?」
「あぁ、暗示に近い感じじゃないかねぇ。何せ、上忍連中が寄ってたかって、イルカに気があるんだろうって直接言っているのにも関わらず、どういう脳内変換をしたのか、友人関係の好意だと受け止めてんだからな。私にはあいつの考えていることは分からんよ。焦がれるほどに思う相手が目の前いるのに、それを押さえようとする気持ちなんざな」
一瞬、どこか物悲し気な遠い視線を見せた綱手に、シズネは黙って受け止める。色々と、あるのだ。
その代わり、一つ呼吸を置く様に茶を啜り、綱手がこちらへ戻った頃合いを見計らい再び話かける。
「もしかして、くノ一クラッシャーもその辺が関係してます?」
シズネの言に綱手は苦虫を噛み潰したような顔になった。どうやら鬼門だったらしい。
「……本当に。私はここ最近で一番頭にきた出来事だったよ」
ぎちちちと奥歯を噛みしめる音が響き、綱手の体から禍々しい怒気がにじみ出る。
思ったよりご立腹な様子に慌てるシズネを尻目に、綱手は自身が組んだ両手をみしみし音を立てながら、述懐し始めた。
「カカシに気のあるくノ一が多いことを利用して、故意にイルカの姿形、仕草をするように唆し、一番出来がいいくノ一を恋人にしてはボロが出たところで捨てる。ふははははは、よぉくもよぉく考えたもんだ。相手はくノ一、ターゲットの好みを模倣して近づくのはそれこそ十八番だ。だがねぇ、それを私的な場で公然と利用するとは、くノ一全員に喧嘩を売っているとは思わないかい?」
語気は冷静だが、にじみ出る威圧感が半端ない。
ひぃぃぃっと内心で小さく悲鳴をあげるシズネだが、綱手の視線を受け取って、全面的に肯定した。
「ま、まったくもってその通りだと思いますぅ!」
「そうだろう。そう、だろうねぇ。まぁ、私も始めはお互いがお互いの意志で始めたことだから見逃してたんだよ。どうせ、紛い物だ、長くは続かないと。おまけに本物のイルカが近くにいるんだ。どうせカカシの奴が音をあげると、そう思っていたんだがなぁ。思っていたより相当カカシん坊の奴は阿保だった」
物騒なチャクラが綱手の体を包む。ジジジと局所的な地震が起きたように応接間が震え始め、シズネは身もふたもなく叫んだ。
「つ、綱手様、落ち着いてくださいー!! 部屋が吹っ飛びます、吹っ飛びますからー!!!」
ガタガタと応接机が揺れ始めたところで、はたと綱手は正気に返り、揺れていた茶器や備え付けてあった本棚は余韻を残して静まった。
「悪い。ちょっと我を失いかけた。私が火影に就任してから早々の出来事に、カカシん坊は私を殺すつもりなのかと思ったくらいだったからな」
はははと乾いた笑い声をあげつつも目が死んでいることに、綱手の側に長年い続けたシズネはその胸中を思いやり涙する。
綱手が火影に就任した時は、木の葉崩しの影響も色濃く、全てにおいて人手が足りていなかった。その中、数少ない上忍くノ一を精神的に壊しまくるカカシの存在は、綱手にとって悪魔よりもおぞましい何かだった。
火影としての仕事の慣れなさにかまけ、カカシのねじ曲がった恋愛を見て見ぬふりをした結果、未曽有の上忍くノ一欠乏を招いたのはとにかく手痛い失態だった。
空いたくノ一の任務は女体変化したカカシに全て回してやっても良かったのだが、如何せんカカシはカカシで別な任務が目白押しだったこともあり、そのツケは上忍連中にいった。
木の葉の上忍は仲間思いの奴らばかりで、女体変化の任務も顔は引きつらせていたが快く引き受けてもらい、ここまで何とかやってきた。
もうこれ以上はカカシの好きにやらせてたまるかと、阿保臭い任務を火影直々の名で出し、無理やりイルカとの接点を繋げた。
結果はまずまずだろう。
何故か、イルカは一人でカカシに完膚なきまでに振られたとしょげかえっていたが、目を覚ましたカカシがイルカを逃すことはない。
少々の意趣返しもこめて、イルカを里外に出し、カカシに意味深な言葉を叩きつけてやったら、カカシは休暇を願い、里に帰った足で即、イルカを追いかけていった。
その際、休暇を取る時にとある約束事を交わしたので、カカシの首根っこには太い太い綱がついている。おまけにイルカという切り札もあるため、次にカカシと相まみえる時が非常に楽しみだった。
「ふふふ、ふはははははは」
近しい未来を思い、暗い笑い声を発する綱手へ、シズネは生温かい眼差しを向ける。きっと疲れているのだろう。
「ところで、綱手様。カカシさんがイルカさんへ好意を寄せているのは、あの問題行動で分かるんですけど、イルカさんの気持ちはいつ知ったんです?」
綱手の薄暗い笑い声を聞くのも飽きたシズネが問いを口にする。すると、綱手はぎょっとした顔で自分の秘書兼側近に目を向けた。
「お前は気付かなかったのかい?」
「何がです?」
質問に質問を返すシズネに、綱手はひどく残念なものを見る眼差しを送る。
「……お前も鈍いんだねぇ。あぁ、だから浮いた話が」
「綱手様」
秘書兼側近の痛いところだったようだ。
賢明な頭脳を持つ綱手は、この対処をしくじれば今後苦難の道のりが待っていることを予測し、颯爽と話を変える。
「受付所に一度でも行ったら分かるもんさ。イルカときたらカカシの話題が出る度にあからさまに反応していたからねぇ。見ていてこっちが可哀相なくらいの焦燥ぶりだったよ。あんときの阿保カカシはくノ一クラッシャーとしての道をまい進していたから」
「……そう、ですか」
挙動不審な仕草を見せるシズネに、綱手は察して、あえて指摘しなかった。君子危うきに近づかず。
「あぁ、そうなんだよ。なかなかに間抜けな話だが、私のあのときの地獄は両片思いした男どものすれ違いが発端だったということだ。……カカシん坊の奴、今は幸福絶頂の時だろうよ。だが、帰ったら目に物を見せてやろうじゃないか。今まで潰したくノ一の無念と怨念は余すことなく私が引き継いだ。ふふふ、ふはははははははははは!!」
両目を見開き、再び不気味な笑い声を上げ始めた綱手に、シズネは今、温泉地で仲良くやっているだろう二人に、特にカカシへ向けて手を合わせる。
どうか、成仏してください、と。
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「……休みたいです」
「さて、カカシはこれからこっちの任務に行ってもらうよ。今、療養中のくノ一に変わってお前がするんだ」
「……イルカとイチャイチャしたいです」
「今、腕利きのくノ一を複数誑し込めて精神崩壊させた手腕だ。お前にとってみればお茶の子さいさいだろう? 腑抜けたことを言ってる暇があるならさっさと出立しな」
五代目は取りつく島もなく、カカシさんに依頼書を持たせた。
任務から帰って来てからすぐ次の任務を渡され、疲れ切っているカカシさんの肩がぐっと下がる。ちらりとこちらを見つめるカカシさんの視線を受け、俺は五代目から了解を得て、受付カウンター内からカカシさんの元へ駆け寄った。
「カカシさん」
「うー、辛いよぉ」
近付くなり、真正面から抱き着かれる。
ぽつりと漏らされた弱音にだいぶ参っているなぁと労いも込めて、頭を優しく撫でた。
くすんくすんと鼻を鳴らしながら、心身共にだいぶくたびれているカカシさんは小さくぼやく。
「確かに、五代目と約束したけど、ここまで休みなく働かせるのはひどすぎる……。しかも内容がほとんど女体化変化で脂ぎったおっさんの相手なんてぇ」
イルカーと首元に顔を押し付け、頭を擦り付けてくるカカシさんがどうにも不憫で仕方なくなった。
温泉地で二人で二泊して、里に帰ってからというもの、カカシさんは通常任務に加え、カカシさんが潰したくノ一の補填任務に駆り出され、ここ三ヶ月間はほぼ無休だ。
いくらカカシさんが優秀だとはいえ、これ以上無理な任務を続けると致命的なことが起きるだろう。
首元に懐くカカシさんを抱きしめながら、俺はよしっと決意を固める。
ぐっとカカシさんの背中を抱きしめたまま、五代目へと向き直り、背筋を伸ばした。
「五代目、俺から提案があります」
どこか呆れたような視線で俺たちを見ていた五代目が俺の言葉に訝しげな表情を見せたが、言ってみろと言わんばかりに頷いたので、これ幸いに発言する。
「はたけ上忍のくノ一補填任務、私にも回してください」
「っ!」
ずばんと言い切ると同時に、カカシさんの首が起き上がり、信じられない表情で俺を見つめてきた。
咎めるような視線を受け、カカシさんが何か言い出す前にさっさと口に出す。
「はたけ上忍へ自身の思いを伝えることに怯んでしまった結果、はたけ上忍があのような行動に走ったのだと私は思います。
よって、私にも相応の責任があると愚考いたします」
あのとき、俺が言えば良かったのだ。何度でも、繰り返し。
自分の気持ちに気付いた時、彼女がいようと、俺自身の思いを口に出せば、カカシさんはくノ一をいたずらに傷つけることはなかったんじゃなかろうか。
俺が自己保身に走ったせいで、意気地がなかったせいで、カカシさんを蛮行に走らせることになってしまった。
俺も諦めていたし、きっとカカシさんも諦めていた。
二人が諦めてしまったからこその悲劇だと思う。
ただ、どう考えてもカカシさんが付き合ってきたくノ一に俺の代わりをさせるのは土台無理な話だ。何度考えても、聞いてもそれだけは違うんじゃないかと思うが、実際被害が出ているのでそこは大人として飲み込んでおく。
俺の提案に、五代目は深いため息を吐いた。
「……カカシん坊、イルカの言葉を聞いてどう思う? 恥ずかしくて聞いてられないだろうねぇ。誰がどう聞いても、お前が100%悪い。いや、くノ一の連中も下心があってのことだから、まぁ、加減してやって80%くらいにしてやろうかね。ともかくお前には勿体無さ過ぎるほどの好い男だねぇ」
何故か五代目はカカシさんに悪態をついた後、俺を褒め始めた。え、提案は? 俺の提案。
「……そうだとしても、渡しませんし放しません」
カカシさんは反転して、五代目から守るように俺を背中に隠すと妙に固い声を発した。
対する五代目は悪戯っ子のような笑みを唇に乗せている。
「カカシん坊の癖に、そんな顔もできるようになったのかい。安心おしよ。私には全くそんな気はないさ。まぁ、さりとて火影として利用はきっちりさせてもらうがな」
笑顔で何か黒い発言をしたような気がした。それに伴って目の前のカカシさんから不穏な気配が立ち上ってきて、俺はちょっと動揺する。
よく分からないがカカシさんにとってよろしくないことが起きそうなのは分かったので、俺はカカシさんの加勢をすべく口を開いた。
「と、ともかく、私にもくノ一代理任務をお任せください! これでも変化にはかなりの自信があります!!」
伊達にアカデミー教師をやっているわけではない。
わずかな情報で活路を見出したり、敵対する上忍が複数絡む任務は、圧倒的に実力が足りていないが、脂ぎったおっさんを誑し込むくらいなら辛うじて俺でもできそうだ。とはいっても妖艶な女性とやらにはなれそうにもないが。
おっさんの一人や二人、なんぼのもんじゃいと闘志を燃やしていると、背後ならぬ前面から狙撃された。
「ダメ! 絶対、ダメー!!」
まさかの駄目出しに眉間に皺が寄る。理由を聞こうとするより早くカカシさんは反転するなり俺の肩を掴み、ひどく血走った目を向けてきた。
「イルカ、自分が何を言ってるのか分かってる? オレみたいに適度に媚売って関心もらって笑って地獄に落とすような真似、絶対できないでショ!? あまつさえ、イルカが男落とすために変化するなら初心系純朴女子。確かに目を見張る成功率はないけれど、相手を本気にさせちゃう一番まずい手でしょうが!! アンタ、ただでさえ情に弱いんだから、この手の任務は絶対にしちゃダメ!!」
「え、いや、そんな」
「ダメー!! 絶対しちゃダメ! イルカがどこも知れぬおっさんを相手にしてるって想像するだけでも嫌なのに、実際にするなんて耐えられない! オレを思うなら大人しくここでオレの帰りを待ってて!!」
カカシさん俺のことを純粋可憐な何かに勘違いしている。これでも俺は、老若男女問わず情報を得るのは得意な方だ。脂ぎったおっさんの一人や二人、どうってことはない。
しかし、ただでさえ顔色が悪かったのに、土気色に変わるに当たり、俺は口を閉じることにした。心労を取ろうとして逆に負担をかけてどうする。
「分かりました。分かりましたから、そんな泣きそうな顔しないでくださいよ。……でも、言っときますけど、俺だってあんたがそういう任務しているってことでかなり思うところもあるんですから、自覚はしてくださいよ」
かなり遠まわしで焼きもちを告げれば、カカシさんはちゃんと受け取ったようで、険しかった顔をへにゃりと崩してきた。
「イルカー、好きーっ」
「はいはい、俺も大好きですよ」
尻尾があれば盛んに振っている気配を駄々洩れにし、カカシさんが再び俺に抱き着く。
負担を減らしたい当人にはすげなく断られてしまったが、それでも俺は諦める気はない。
忌々しさと呆れを持った目でこちらを見つめている五代目に、こちらからも視線を送る。
じーっと見つめていれば、五代目は俺の視線に気付き、非常にしょっぱい顔を見せたが、しばらくすると頭を豪快に掻きながらため息を吐いてきた。
「分かってるよ。……カカシ、朗報だ。お前のくノ一の代理任務はこの一件で終わりだ。最後の任務なんだから失敗したら承知しないよ」
そろそろいけるのではないかと思った通り、どうやら俺の密かに進めていた秘策は大当たりしたようだ。
シズネさんと出会う度に、こまめに情報収集をした甲斐があった。
カカシさんに絶望の淵に叩き落とされたくノ一たちの情報を密かに集め、それとなくシズネさんに提案し、早期現場復帰させるためにも、失恋から立ちなおさせる作戦を立ち上げた。
その名も「失恋を癒すにはやっぱり新しい恋だよね」作戦。
失恋で自殺未遂までいきかけたのにさすがに無神経ではとシズネさんに引かれたものの、俺はこれでも人を見ることに秀でている。
二親を突然無くして天涯孤独になったことから、生きるために否応なくついた技能だが、まぁ、ここではその云々は割愛しておく。
ともかく、俺はカカシさんによって精神病棟送りにさせられたくノ一たちの生い立ち、生活環境、交友関係、赴いた任務、恩師など、時には人を頼り、時には受付員という特権を行使して、情報を集めに集めまくった。
そこで出た結論は、被害になったくノ一たちは非常に優秀かつ、プライドも高く、くノ一としての己に誇りを持っている一方で、何かに頼りたい、癒されたいと願っていることが浮かび上がってきた。
ならば、見込みは多いにあると俺は再び情報を収集した。
無論、ここでの情報は里に住む独身男性のものだ。忍び、一般人問わず、ともかくあらゆる伝手を使い集めに集めまくり、その中で件のくノ一たちと気が合いそうな者、かつ自然な成り行きで会えそうな者を絞り込み、それとなく木の葉病棟へ送り込んだ。
もちろん、送り込むためには、病院の院長をしている五代目と、病院内で顔が利くシズネさんの協力は不可欠だった。
「悪化させたらお前どう落とし前つけるつもりだい」と、絶対零度の眼差しで五代目に見下ろされた時は冷や汗ものだったが、うまくことが運んで何よりだ。
中にはなかなか新しい恋に向かおうとしない人もいたが、そこはそれ、温かく見守りつつちょっとした小細工を入れつつ、人を入れ替えたりなんだりしているうちに、晴れてくノ一たち全員に良い人ができた。
うん、あれだよ。一見頼りなくてさ、自分よりも収入安いとか、階級も中忍とか下忍で格下で、見目もそんなに良くないとかだけど、じっくり付き合っているうちにいざっていうときは頼りになって、家事もそこそこできて、いつも穏やかで癒しを与えてくれる男はそれなりにいるってことなんだよ。
生まれて初めて彼女が出来たと、恥ずかしそうに報告してくれた幼馴染を思い出し、俺は感慨深くなる。
……良かったな、同志たちよ!!
「お前、里主催の見合いパーティの幹事しないか?」と五代目は真剣な目で言ってくれたが、それは速攻で断った。俺は乱戦には弱いのだ。
五代目の言葉を聞き、上がったカカシさんの顔が喜色に染まる。
生気が少しだけ蘇ったそれに安堵しつつ、俺は一旦カカシさんから離れ、用意していた特製弁当と兵糧丸、替えの着替え一式を見繕った風呂敷を取り出すと、手渡した。
「カカシさん、帰ったらゆっくり一緒に過ごしましょうね」
「うん!! すぐ終わらせるから待ってて!!」
別れる際、ちゅっと軽いキスを唇に受けたことに気付いたのは、カカシさんの姿が受付所からいなくなった後だった。
くっ、このロマンチストの男前がっっ。
そこそこ人の目がある受付所だったため、カカシさんと同じ上忍の皆さまはからかうように指笛を吹いたりとこちらを冷かしてくる。
真っ赤になった顔を御せないまま、半ばやけくそで受付所の定位置についた。
その際、五代目はどこか呆れたような眼差しを送っている。
「……どうかしましたか?」
頬をこすり、引きつる頬で笑みを浮かべれば、五代目はため息を吐く。
「いやねぇ。お前、随分と色々隠し球を持っているんだねぇと思っただけさ。ま、ともかくも、だ。お前には何かと世話になったからね、今日はもうお上がりよ。ついでに三日くらい休みをやろうか?」
特別だよと上機嫌に言う五代目に、俺は苦笑いを漏らす。
くノ一の件でほとほと困っていた五代目に力を貸す形となっていたが、俺としては立派な下心があったので感謝されることではないのだ。
「なんだい、私の感謝がいらないってのかい?」
睨み付けられるように見られると同時に、迫力のある魅惑の二つの物体を押し付けられ、焦った俺はつい口を滑らせてしまった。
「ち、違います! ただ俺の嫉妬とかそういうのも絡むんで!!!」
仰け反って距離を取る俺に、五代目はにやりと非常に楽しそうな笑みを浮かべる。あぁ、なんで言っちゃうかな、俺!!
「ほほー、お前も男だねぇ。好きな男の元彼女が気になるから、ああも必死に頑張っていたわけか」
「……カカシさんには絶対内緒にしてください」
顔全体が熱くて仕方ない。耳までも真っ赤になっていることを自覚しつつ、小声で頼めば、五代目は不思議そうな顔を見せる。
「なんで隠す必要があるんだ。カカシの奴、喜ぶんじゃないのかい?」
どうだろう。確かに今のカカシさんなら俺がすること全て喜びそうな気はするが。でも。
「男なら、好きな人の前では格好つけたいんです」
嘘偽らぬ気持ちを告げた途端に、隣から破裂音が聞こえた。
その後にククククと押し殺したような呻き声が聞こえたことで、俺の気持ちは急降下する。
「五代目」
不貞腐れた気分で名を呼べば、五代目はすまんすまんと言いながら込み上げる笑いと格闘している。
時折来る帰還者たちの報告書を受け取り、その帰還者たちが不思議そうに五代目を見つつ帰るまでがワンセットとなり、それを五回繰り返したところでようやく五代目の笑いが収まった。
「はー、笑った、久しぶりに腹が痛くなっちまったよ。イルカ、あんた、男だねぇ」
浮かんだ涙を人差し指で拭いながら感心されたが、俺は全然嬉しくない。というか、非常に遣る瀬無い思いでいっぱいである。
五代目を無視する勢いで黙々と目の前にある書類の仕訳をしていると、五代目はさすがに悪いと思ったのか軽い謝罪を告げた後、再び前の話を蒸し返してきた。
「なぁ、イルカ。話は戻すが特別休暇をやるよ。お前なんだかんだといって、くノ一たちのフォローするために休んでないんだろ? 今日から三日休んどけ」
心の底から労ってくれる声に、不貞腐れた気分が霧散する。
日中はアカデミーや受付の任務があるため、自由に動ける時間はもっぱら夜だった。
合間に合間に仮眠を取るようにはしていたが、万全とはいえない状態だ。
視線を上げれば、五代目は慈愛のこもった眼差しで俺を見つめていて、何となく照れる。
「五代目のご厚情は有り難いのですが、その、出来れば、はたけ上忍が戻ってから連休をいただけませんか?」
俺の発言に五代目は非常に塩辛い顔を見せた。
顔がこのバカップルめと物語っていて、つい顔が赤くなるが、俺はそれもあるけれど違うんだと声に力を入れる。
「ち、違いませんけど違うんです!! あの、俺、受付任務をしたいんです!!」
「……今時、仕事人間は好かれんぞ」
誰にという言葉が微妙に真実をついてて二の句が継げなくなりそうだったが、誤解を解くために言葉を重ねる。
「いや、カカシさんこの調子なら早く帰りそうだから、まず俺が出迎えてあげたいというか、労ってあげたいというか!」
思っていることの半分も伝えられない言い分をもどかしく思っていると、五代目は全てを察して、目に手のひらを当て天を仰いだ。
「あー。カカシがお前にハマる気持ちが少しわかったよ」
「はい!?」
突然の発言が意味不明過ぎてビビる。
五代目は「こういうところがシズネには足りないんだ」とか「相手が悪すぎる」「素でやる奴に勝ち目はないってわからないのかね、あのバカどもは」などとぶつぶつと独り言を呟いていた。
一人で反省するようにぶつくさ言っている五代目に声をかけづらくて、気になりつつも静観していれば、やがて五代目はふっと小さく笑うと、大きく伸びをした。
「とにもかくにも、だ。今日は飲むぞ、イルカ、付き合いな!!」
「はい!?」
二度目の唐突な発言に度肝を抜かれる。一体どうしてそうなった!?
俺があまり乗り気でない表情をしていたのか、五代目は柳眉を跳ねさせる。
「ほー、火影の誘いを断るつもりとは、お前いい度胸してるじゃないか」
「いえいえいえ、別に断ってませんし、唐突すぎるというか、五代目と飲むなんて畏れ多すぎて逆に申し訳ないというか」
魅力的な果実を寄せ、こちらに身を乗り出してくる五代目から身を引き、ぶんぶん首を横に振る。五代目は俺の言葉に少し思案するような顔をした後、受付所入り口に視線を向けるなり、にやりと音がつきそうな笑みを唇に浮かべ、指を差した。
「おい、お前ら! 今宵はあのカカシを肴に飲むぞ、付き合え!!」
生き生きとした瞳で宣言する五代目の視線の先には、カカシさんと仲の良い、上忍と特別上忍の皆様の姿があった。
「いいですね、ぜひ!」
「いいっすけど、奢りですか?」
「聞きたいこと色々とあるんですよね」
「ごちになりまーす!」
真っ先に応じたのは、紅先生とゲンマさん、アオバさん、ライドウさんだ。
残るアスマ先生は微妙な表情をしていて、嫌なのかいいのかよく分からなかった。
「他の奴らも今晩空いてるなら来い。場所は八花亭。もちろん、私の奢りだ。臨時収入が入ったから無礼講だよ!!」
続く言葉に受付所内が歓声に沸く。
八花亭といえば、木の葉を代表する老舗旅館であり、食事も提供している。そして、何と言ってもその料理が絶品かつ非常にお値段が良いことでも有名だ。
中忍、下忍の収入では手の届かない高嶺の花。ならばこそのこの歓声であろう。
きゃっきゃとはしゃぐ中忍下忍の姿に、今宵の宴がとんでもない規模になりそうだと思いつつ、その費用を受け持つ五代目の懐具合の温かさに疑問を覚える。
じーっと疑り深い目で五代目を見ていると、五代目は俺の視線を平然と受け止め、慰謝料代だと宣った。それでいいのか五代目火影と内心で突っ込むが、風の噂というよりシズネさんから火影就任当時の修羅場を聞きかじっている身としてはそう強くも言えない。
悶々と思い悩んでいると、五代目はそっと俺に囁いた。
「このことを黙って、かつ今晩の宴に参加するなら、カカシと一緒に三日間の休みをやるよ」
「御意に!!」
長いものには巻かれろ、それが中忍の生き様だ!
俺の返事によろしいと五代目はご満悦に目を細め、皆に向かって叫ぶ。
「今晩、19時より八花亭にて宴だ!! 今宵は飲むぞー!!」
『おおー!!』
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「お疲れだったんですねぇ」
卓に突っ伏して動きもしないイルカに、シズネが旅館の者から借りた薄い毛布を掛けてやっている。
その顔は母性愛に溢れていて、その手が好きな男どもから熱い視線で見つめられているのだが、本人が全く気付いていないため進展する欠片もない。
「鈍感ってのは自分も相手も殺すもんだな」
そう呟く綱手に、シズネは忍びの本質と捉えたのか、何を当たり前なことを言っているのだと不思議そうな顔を見せてくる。
賑わった宴もそろそろ下火になる頃、綱手に絡まれて畳へと撃沈している忍びが多い中、生き残った者たちは綱手を囲み、それぞれの配分で飲みを続けていた。
上忍の比率が高いのは、毒物耐性が極まり酒では酔えなくなったためだ。
酔って高いびきをかいて寝ている忍びを羨ましそうに眺める上忍たちを鼻で笑い、空気で酔えるようになれと綱手は発破をかけてやった。それに苦笑いを漏らす上忍たちに、自分にはない若さを見て少々面映ゆい気分に陥る。
私の若い頃はなぁと老いた者だけが語れる特権を行使し、長い昔話に発展しそうになった直前、ぽつりと漏らされた一言に風向きが変わった。
「イルカさん、全くわかってなかったんですねぇ」
しみじみと呟かれたそれは、場にいる者たちの共感を誘うには十分過ぎた。
「おれたちが言っても全くだったな」
「カカシは確信犯臭いが、こいつは素で分かってないよな」
「どうりで、長引くわけだ」
ぽつりぽつりと漏らされる言葉はどれも実感がこもっている。
間接的に被害を受けた連中をねぎらう意味でも設けた宴だ。無関係な者たちがあらかた眠っている現状を見て、その思いの丈を吐き出せとばかりに綱手はうんうんと頷き、聞き役に徹する。
この宴の最中、綱手の隣で酒を飲まされ続けたイルカに、上忍たちはくノ一がイルカの格好や仕草、性格を真似られて大変だったなと言葉をかけた。
すると、当のイルカはきょとんとした顔で大真面目にこう言い放った。
「カカシさんからも言われましたけど、そんな綺麗どころのうら若い女性が俺の真似するなんてありえないでしょう。俺、カカシさんの付き合っていた方たちと会ったことありますけど、似ている要素は何一つありませんでしたよ」
言い切るその言葉に、上忍一同は驚愕した。
イルカを真似た短めのポニーテールに、お洒落の一文字もない真っ当な正規服。いつも人の好い笑みを浮かべこちらを気遣う口調に、人の話に親身になって聞くその姿勢。ほんの少しがさつで熱血漢な性格に、照れた時に鼻傷を掻く仕草、あまり手入れをしていない髪と小麦色に焼けた肌。極めつけは、成人男性の忍びには当たり前についている、けれど女性には過剰すぎる筋肉を、くノ一たちが身に着けたことだろう。
被害にあったくノ一は誰もが見目麗しく、女としても忍びとしても一流だった。それがちょっともさい成人男性へ近付こうとする姿は、不憫すぎて涙無くしては見れなかった。
だというのに、当人からちっとも似ていないと断言されるとは、今までのくノ一たちの努力に唾を吐いたも同然だ。
これは件のくノ一たちには聞かせられないと、上忍たちはお互い墓場まで持っていくことにした。
「正直、五代目が差配してくれなければ、この一件は収まらなかったと思います」
指名任務へ出たカカシの代わりに、くノ一の任務をちょくちょく引き受けていた上忍が深い念を込めた物言いで言葉を吐いた。
ここにいる者たちのほぼ半数がそれに同意を示すことからして、綱手はいわずもがな上忍たちにも迷惑をかけたのだと改めて実感する。
綱手は何度も深く頷きながら、己の持つ酒を差し出し、上忍の杯に注ぐ。
「皆にも苦労をかけたねぇ。今宵は飲むがいい。もし足らなかったら全てカカシの奴にツケるからな、遠慮するな」
はいっと男泣きに泣く上忍の肩を叩き、これで全てが丸く収まったと綱手は心から笑った。
「ねぇ、あのカカシがイルカと付き合ったからって、大人しくなると思う?」
「……ならねぇだろうよ。むしろ、ここからが本番だろう」
「まぁ、ぼちぼちかわしつつ楽しむしかないんじゃないすかねぇ」
「興味深いですね」
「え、何が?」
穏やかな顔で酒を酌み交わす中、カカシの腐れ縁たちは冷静に判断を下していた。そして、それは的中する。
「嫌です、絶対嫌です!! なんでオレが行かなくちゃならないんですか!!」
受付所で激昂する里を代表する忍びの姿に、場は戦々恐々とするかと思いきや、周りの目はまたかといったような呆れの入った目を向けていた。
何度も言い合ったことなのか、対する五代目火影たる綱手は額に青筋を立てながら、ちっとも笑っていない目で唇だけ笑みの形を浮かべていた。
「カカシ。何度も言っただろう。確かにお前ほどの忍びがすることではない。が、指名任務なんだ。先方はお前がいいと言っているんだつべこべ言わずに里の犬らしく言われた任務を全うしてこい、この駄犬がぁぁぁぁ!!!!」
途中で切れた綱手から怒りのチャクラが放出すると共に、手元にあった文鎮を投げつける。殺傷能力が宿ったそれをひらりと躱し、カカシはなおも言い放った。
「オレは里の犬である前にイルカのものなんです! どうせこの任務も綱手さまが借りパクした赤字補填の実入りのいい任務なんでしょう!? なんでオレがしなくちゃいけないんですか! 横暴だ、横暴、この借金火影! それとですね、前々から言おう言おう思っていましたけど、綱手さまはイルカを拘束しすぎです! オレが任務にいない間、何しれっと火影補助業務手伝わせて秘書まがいのことさせているんですか! すでに秘書はいるでショ! イルカに手を出すの止めなさいよね、若作り婆!!」
「んだと、この年中色ボケ箒が!! お前には一度忍びってものの性根を叩きこんでやる必要があるな!!」
わーわーとお互いが罵り合いながら、綱手は目につくものを片っ端からカカシに向けて投げつける。
里の火影と看板忍者がやり合う様は上忍といえども手を出しづらく、受付所があわや崩壊となる寸前、一人の忍びが受付所内へ駆け込んできた。
「すまん、アカデミーでトラブって遅れ……って、何しているんですか、カカシさん」
床や壁に文房具が突き刺さり、重苦しいほどのチャクラが垂れ流されている状態に、駆けこんできた忍びは驚きの声をあげる。
「っっ、イルカ!!」
「イルカ!!」
一人は喜びに満ち溢れ、一人は怒りに満ち溢れた声でその忍びの名を呼ぶ。
「イルカ聞いてよー! また遠出でお飾りの護衛任務しろって言うんだよ! 明日の晩はイルカと一緒に鍋する約束があるのにひどいと思わない!?」
「この駄犬をどうにかしな、イルカ! お前が飼い主だろう!」
二人の言い分を聞き、イルカは引きつった笑みを浮かべていたが、ふとイルカはカカシに尋ねる。
「カカシさん、その任務地ってどこです?」
お飾り任務ならば尋ねても大丈夫だろうと当たりをつけ聞けば、カカシは水で有名な地の名をあげた。
「うわ、そこのお酒、鍋によく合うっていうんで有名なんですよ! ラッキーですね、カカシさん。お飾り任務ならほとんど危険なことはありませんし、お土産が買えるくらいの時間もありますよね」
にこにこと笑うイルカの顔を見て、今まで荒れ狂っていたカカシのチャクラがふいに消える。そして現れたのはひどく嬉しそうな弾むようなチャクラだ。
「そうですね、オレ、ラッキーですよね!! これもイルカと一緒につつく鍋を最高にしろという天の導き。不肖、はたけカカシ、護衛任務行って参ります!!」
「はい、カカシさんなら大丈夫とは思いますけど、くれぐれも怪我しないように注意してくださいね。お帰り、お待ちしております」
カカシへそっと駆け寄り、手を握りしめ、イルカは心からの言葉を手向ける。
するとカカシは握られた手をこちらから握り返しながら、上忍の早業でイルカの唇を軽く奪った。
触れ合うだけの軽いそれにも、未だ慣れない様子で硬直するイルカを愛おし気に眺め、カカシは唇を離すと、イルカへと囁く。
「じゃ、行ってくるね」
ダメ押しで離れ際に耳朶へ唇を押し当て、口布を上げるなり、善は急げと受付所から消え去るカカシに、綱手は無表情で、周りの者たちは呆れた目で見送った。
「……っ、男前か、天然か!!」
カカシが去ってから数十秒後、ようやく我に返ったイルカが漏らした言葉に再び受付所内は何とも言えない空気に包まれる。
けれど、真っ赤になって悶えるイルカは幸せそうで、綱手を含め、周りの者は口を閉ざした。
受付職員全員で、床と壁に突き立ったもの抜き、通常通りの空気が流れ始める。
受付の引継ぎをし、綱手の隣に座ったイルカへ綱手は視線を向けた。
じっとこちらを見つめる綱手にイルカは首を傾げ、黒い瞳を真っすぐに向ける。
「……イルカのレッスンをシズネに受けさせてみようか」
ぽつりと漏らされた言葉に、イルカが驚きの声を上げるより早く、受付所内から声があがった。
「ずるい、私も受けたいです!!」
「私も!!」
うら若きくノ一たちから上がる声にビビるイルカに、綱手は皮算用を弾く。
これはもしかするとビッグビジネスのチャンスかもしれない。
「レッスン内容は『男を手玉に取るやり方、もしくは男心のうまい操縦法』だな」
「はぁ!? 何ですか、それ!! どっちかいうと俺が手玉にとられてます!!」
「いや、『天然の生態』の方がいいかもしれん」
はいはいはーいと手を上げ、アピールするくノ一の声に混じり、思案の顔で顎に手を置く綱手。
妙な成り行きになりそうなイルカはビビりながら、「できませんからね、それに絶対しませんからね」と声を張り上げていた。
人気レッスン講師が木の葉の里に生まれる日も近いかもしれない。
おわり
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……もうね、題名に振り回されたと思います。題名難しい。 楽しんでいただければ幸いです!!