「そういうわけで、イルカ先生、お休みになっちゃったの〜。いや〜、愛が溢れるって恐いねぇ。ま、でもそれは世界の真理が認めちゃってる半身だから、それは致し方ないことなんだよ」
うんうんと上機嫌に頷くカカシに、テンゾウははぁとしか言葉を返せなかった。
目の前にいるカカシの顔は腫れ、覆面から覗く素肌には見事な青たんが浮かび上がっている。
上忍待機所に今は入らない方がいいぞとテンゾウに注意し、出入り口で踵を返していた上忍たちは、これに巻き込まれたくないからだったのかと、こっそりため息を吐いた。
だが、元よりテンゾウに回避の術はなかった。
上忍のご忠告にありがたく踵を返そうとした直後、話し相手を求めていたカカシに問答無用で引きずり込まれてしまい、がらんどうの待機所でカカシの話を聞く相手を強制的にさせられているのだった。
待機所でコーヒーを飲んで少し休憩したら、家に帰って眠るはずだったのにと、Aランクをこなした直後のテンゾウは、再び誕生日当日の話を話し始めたカカシに肩を落とす。
これで一体何度目だろう。テンゾウは一体いつ、帰られるのだろうか。
いつ終わるともしれないカカシの話にちょっと涙が出そうになった頃、テンゾウの隣で運悪くカカシに捕まった見知らぬくノ一が口を開いた。
「はたけ上忍、お聞きしてもいいですか?」
「ん? なぁに? オレとイルカ先生の愛の軌跡についてなら、何でも聞いてよね! 今日は機嫌いいから何でも答えちゃうーよっ」
語尾にハートが乱舞する口調で話すカカシはうざいと、尊敬する先輩の欠点をテンゾウは胸の内であげる。
くノ一はうざい口調のカカシが気にならないのか、嬉しいですとカカシの言葉に乗って質問を投げかけた。
「はたけ上忍のお顔はうみの中忍がなさったんですか?」
それはテンゾウも気になっていたことだ。
覆面の上からでも腫れあがったことが分かるそれは、強烈な打撃を食らったことが窺える。
そりゃ、任務の怪我でもないのに、一週間の絶対安静を言いつけられ簡易入院となったイルカの心情を思えば、カカシは殴打されて当然だ。特にイルカは仕事人間だから、よほど腹に据えかねたのだろう。
無理もない無理もないと内心で頷いていれば、カカシは首を振った。
「ちがーうよ。これは、あの怪力婆。イルカ先生には『ばか』って涙目で怒られちゃったっ。もぅ、なんであんなに可愛いんだろうね。怪力婆がついてなかったら、また襲いかかってたーよ」
この世の幸せを一人占めしているような笑顔で、カカシは語る。
テンゾウは思う。きっとカカシの思い違いだと。
一週間絶対安静のイルカはカカシを殴りたくても殴れない代わりに、五代目がイルカの心情を思いしこたま殴ってくれたのだろうと。
脳内に花畑を耕作しているカカシには、何を言っても無駄だろうと、珍しくテンゾウは空気を読み、沈黙に徹する。
くノ一はそうなんですかと頷き、再び問いを口にした。
「それでは、今、うみの中忍は木の葉病院ですか? 家に戻るのは今週明けになりますね」
その問いに、テンゾウはおやっと思う。
このくノ一、カカシが気持ちよく喋れるように適度な相槌と問いを徹底していたが、ここにきて一歩踏み込んだ問いかけをしてきた。
何か目的があることを匂わせるくノ一は、わざとこの問いを発したのか、それともただの偶然なのか。
そこまで考えて、テンゾウは自分の考えを笑う。
偶然な訳はない。何せ、ここにいるのは、自分たちと同じ、忍びだ。
今まで興味がなかったためくノ一の顔を見もしなかったが、改めて視線を向ける。
くノ一は長い黒髪をした、平凡な容姿の女性で、年の頃は二十代半ばという頃だろうか。
これといった特徴が見つけられない容姿は、潜入任務や草に向いていると観察していれば、カカシの鋭い声が飛んだ。
「……アンタ、何者? やけに気持ちよく喋らせてくれるとは思っていたけど、さっきからイルカ先生のことばかり聞いてくるよね?」
一触即発の空気を漂わせたカカシに、テンゾウはとうとう来たかと思う。
里内は言うに及ばず、里外でもイルカの存在を匂わせた代償がやってきた。
間者か、それとも裏切り者か。
もっとうまく立ち回ればいいものを、功を焦り過ぎてしくじったかと、くノ一を確保するため、カカシに指示を仰ごうと目を向けた瞬間。
「イルカ先生はオレの半身なの!! 例えイルカ先生に懸想としようとも生憎、真理が許してくれないんだからね!! アンタ、運命、いや定めに逆らうというの!?」
隣のテンゾウと仲良くしなさいよ、今、テンゾウフリーなんだから! と、一体何の話だということをぶちまけてきた。
「先輩?」
あなた、とうとう正気を失くしましたかとテンゾウの口から本音が出る寸前、くノ一は楽しそうに笑い出した。
「写輪眼もテンゾウさんも鈍すぎ。いい加減、気づいてくれてもいいんじゃない? もしかして忘れちゃったわけ? さすがに、それは悲しいわね」
テンゾウとカカシを見回し、肩を竦めるくノ一に、テンゾウは首を傾げ、カカシはまさかと息を飲んだ。
「お前、ツバキか!!」
人差し指を差したカカシに、くノ一はそうよと柔らかく微笑んだ。
特徴のないくノ一だと思っていたが、微笑めば驚くほどの色気がにじみ出る。表情にも若干の色が出、冴えない容姿から美しいと思える容貌に変わったことに驚いていれば、ツバキはカカシの差した人差し指から逃げるように一つソファを移動し、テンゾウの間隣に座った。
「お久しぶり、テンゾウさん。顔と歳は違うけど、分かる?」
柔らかく微笑みながら、頭を下げてきたツバキに、テンゾウははいと頷いた。
「御無沙汰しております。あのときはもう会えないかと思いましたが、うまくやったようですね」
直球すぎるテンゾウの言葉に、ツバキは苦笑を返した。
「私もベテランの草ですし、決めるところは決めますよ。それに、写輪眼にも言ったけど、憎まれっ子は世に憚るのよね」
流し目のような視線を送られ、カカシはフンと鼻息荒く息を吐いた。
「本当にそのようだーね。ぽっくり逝っちゃえば、苦しまずに逝けたのーに」
よくもオレの前にのこのこ現れることができたなと、カカシは険悪な表情で右手にチャクラを集め始めた。
先輩とテンゾウが窘めようとするより早く、ツバキはこれみよがしにため息を吐く。
命がいらないのかと、カカシを刺激するツバキを冷や冷やとして眺めていれば、ツバキはどこか余裕の態度で口を開いた。
「あら、そんなことを言ってもいいの? あなたが散々私たちに話してくれた素敵な時間は、元を辿れば、私の丸薬のおかげでしょうに」
恩を仇で返すとはこのことねぇと、ツバキは足を組みソファへと背をつける。
驚いたのは、テンゾウだけではなくカカシもだったようで、右手に集めたチャクラを散らし、硬直していた。
「……随分と酔狂な物をお作りになるんですね」
何も言わないカカシの代わりに素直な感想を言えば、容赦ない拳がテンゾウの頭に落ちる。完全な八つ当たりだと涙目で抗議すれば、カカシは冷たい眼差しを向けてきた。
「はた迷惑なって、お前の顔に書いてんの。ま、テンゾウの感想はどうでもいいとして、ツバキ、お前、一体何の目的が……あ」
問う前に答えに行き着いたのか、カカシの口が閉じる。
ツバキは「ご名答」と軽口を叩き、大きく伸びをした。
「イルカさんにはお世話になったし、誕生日プレゼントを贈りたいなと思ったのよ。ちょうど写輪眼の任務も小耳に挟んでたから、あの好事家へ事前に渡るよう手配しといたの。うふふ、私の特別丸薬、随分と楽しんでくれたようで良かったわ」
にっこりと笑うツバキに、カカシは非常に嫌な顔を見せる。
テンゾウにはツバキがわざわざ回りくどいことをする理由が分からず、首を捻っていれば、ツバキは小さく笑った。
「テンゾウさんは、どうしてイルカさんに直接手渡さなかったのか分からない顔をしてるわね。簡単な答えよ。写輪眼がいるから」
先ほどの仕返しか、人差し指をおおっぴらに向けるツバキに、カカシはますます顔を歪めさせる。
ここまできてツバキが何を言いたいか分かり、テンゾウはなるほどと顎に手を置く。
「確かに、先輩がいたら、イルカさんに贈り物なんてできませんよね。渡した瞬間、破壊されそうですし」
「そうそう。とんだ狭量な男だからね。それと、私もその頃任務が終わっている保証がなかったから、第三者介して渡してもらったの」
あの好事家、なかなかの役者なのよねと、種明かしをするツバキに、テンゾウは感心した。
草として優秀だとは聞いていたが、なかなか策略家でもあるようだ。
警戒心の強いカカシの行動と思考を計算した上での行動に、やるなと唸っていれば、カカシは思い切り大きくため息を吐き、頭を掻きむしった。
「……胸糞悪いねぇ。……ま、でも、いい贈り物だったのは認めてあげる」
顔と視線を逸らし、聞こえるか聞こえないかの声で褒めたカカシに、テンゾウは驚いたのも束の間、噴き出してしまった。
「ぶ、せ、先輩、かっこ悪!!」
「うわ、お前、本当にむかつく後輩だーね。そういう時は黙って見守るのが後輩の務めってもんでショ」
若干顔を赤くして文句を言ってくるカカシに、テンゾウは再び笑う。
笑いすぎたのか、カカシはお前はと一言言うなり、テンゾウに飛びかかってきた。
「せ、先輩、苦しい! 降参、降参しますからっっ」
首に腕を回され、昏倒させようとするカカシの本気にわめけば、うるさいとカカシは締め上げてくる。
本当に狭量な男だともがいていれば、傍らの気配が立ちあがった。
「あれ、帰るの? 時間あるなら、この度の礼に、テンゾウの奢りで食事でもどうかと思ったんだけど」
突然の言葉に、テンゾウは目を見開く。
そんなこと了承してませんよと拒否の言葉を吐く前に、ツバキは首を振った。
「せっかくのお誘いなんだけど、この後任務なの。また数カ月単位でここを離れることになると思うわ」
写輪眼直々のお誘いなのに勿体ないわと、ツバキは微笑を浮かべる。
対するカカシは「しっかりやんなよ」と言葉を向けた。
ツバキに対する態度が軟化した様子に、カカシにとってあの丸薬はそれほどまでに素晴らしかったのかと、テンゾウは思う。
現金なカカシに思うことがあったのか、ツバキはころころと笑いながら手を振り、待機所から出て行った。
「……不思議な人ですね」
二人きりになった待機所で、テンゾウがぽつりと言葉を漏らす。
カカシはテンゾウの首から腕を外しながら、まぁねと小さく肯定した。
主体性の見えないツバキは、少しだが昔のカカシに似ていて気持ちが悪かった。だが、今のツバキはそう悪くないものに見える。
初めて会った時とは少し変わったツバキの在り方は、何となくだが正しい在り方のように思えた。
一体誰に変えられちゃったのかねぇと、小さな刺を感じていれば、テンゾウが口を開いた。
「……結局、あの人、何歳なんでしょうか?」
「…………は?」
テンゾウはひどく真面目な顔で、ツバキが出て行った出入り口を見つめている。
これで、色恋が絡む発言だったなら興味深いことだったのに、テンゾウはあくまでも忍びとしての観察として発言していた。
「……お前も、早くオレにとってのイルカ先生のような人を見つけろよ」
ぶつぶつと分析し始めた、気真面目すぎて面白みの欠ける男の肩を叩き、カカシは激励の意味も込めて提案する。
「よし、今日はテンゾウの奢りで、飲むぞ。大丈夫、オレとイルカ先生の愛の軌跡を聞けば、お前にだってきっと運命の相手は現れるはず!」
「なんですか、その根拠のない言葉は!! いや、僕はもう今日は帰って寝」
「今日は徹夜でレクチャーしてやるからな」
さぁ、行くぞと、問答無用で夜の街に繰り出すカカシに、テンゾウの抵抗も空しく、徹夜でカカシの話を聞く羽目になってしまった。
******
三日後。
上忍待機所で待機しているテンゾウの元へ、イルカが顔を出しに来た。
どこで知ったのか、カカシが迷惑をかけたと菓子折りを片手にイルカが頭を下げる。
ツバキと会った日から、テンゾウは夜な夜なカカシの襲撃に遭い、徹夜でカカシのイルカ賛美の話を聞かされる羽目に陥っていた。
全くだとイルカに愚痴りたい気持ちもあったが、テンゾウは打ち合わせ通りに口を開く。
「いえ、僕も一人ですし、先輩と一緒にご飯食べられて良かったです」
イルカはお前の元に行くだろうから、空気の読めないお前はひたすらこれを言っておけとのカカシの命令だった。
だが、イルカもカカシのやりそうなことは大抵分かるのか、ひどくすまなそうな顔をして再び頭を下げた。
「すいません。……ヤマト上忍、無理に言わなくていいんですよ。飲食費代も全部ヤマトさんに押し付けたみたいで、本当に申し訳ありません。今度、ごちそうしますんで、また家に来てください」
腕によりをかけますからと熱心に口説くイルカに、テンゾウは心では嬉しく思いつつも、その日が来ることは永久にないだろうなと諦めの中にいた。
カカシはこうも言った。
『イルカ先生がお前を家に呼んでごちそうするとか言うだろうけど……、来たらどうなるか分かっているだろうな』
荒れ狂うチャクラを放出させ、竦むテンゾウを見下ろすカカシの顔が忘れられない。
これまたカカシに、イルカには形だけでも了承を示しておけと言われたことを忠実に守りながら、テンゾウは儚く笑った。
「わー、嬉しいです。その日を僕、楽しみにしていますね」
「はい、ぜひ!!」
意気込むイルカの気持ちを裏切っているようで何となく辛い。だが、我が身に代えられるものはないと、自分の思いを打ち消した。
開けてもいいかと聞けば勿論と言ってくれた言葉に甘え、包装紙を破ると、せんべいの詰め合わせが出てきた。
以前、イルカのところでお茶受けとして食べ、おいしいと言っていたことを覚えていてくれたのだろう。
ありがとうございますと言えば、イルカははにかんだ笑顔を見せてきた。
単なるごつい男の笑顔なのだが、何となくほっとするものを感じて和んでいれば、そういえばとイルカが切りだしてきた。
「ヤマト上忍、ツバキさんに会いましたか? 俺が入院している病院に、わざわざお見舞いに来てくれたんですよ」
人懐こい笑顔で喋り出したイルカに、テンゾウは固まる。
「……え?」
何かの聞き間違いかと聞き返すテンゾウに、イルカは嬉しそうに話し出す。
「ツバキさん、俺の誕生日をどこかからか聞いたらしくって、プレゼント持って来てくれたんです。それが、思いも寄らないもので」
いそいそと懐からイルカが何かを出してくる。
よほど嬉しかったのか、見せる気満々のイルカに気圧されて、テンゾウは物が何かも聞かずに、それを見てしまう。
テンゾウの目の前につき出された、それ。
顔が塗り潰された一枚の写真に映るのは――。
「隠し撮りしてくれてたんです!!」
目をきらきらと輝かせて、イルカは叫ぶ。
興奮を隠しもせずに最高だと頬を赤らめて、この素晴らしさを分かりあえるはずだと、目を逸らそうとするテンゾウに突きつけて解説をし始める。
「ヤマト上忍、見てください、この肉体美!! さすがカカシさん、さすがは里の誉れ、女版カカシさん! 一応覆面忍びに配慮して、素顔はお見せすることはできませんが、これだけでも眼福ものだと俺は思うんですっっ」
「いや…、あの、うみの中忍?」
うろうろと視線をさ迷わせるテンゾウの前には、尊敬する先輩の女の姿。しかも、何故その服を選んだのか理解できない、寸足らずのパツンパツンに張ったミニスカナース服。そして、恐るべきは、全く似合っていないことだ。
カカシの体格が良すぎて、もはや女が着ているとは思えない。顔を隠しているが故に、女装ですと言われたら、疑うこともしないだろう。
だらだらと変な汗を掻くテンゾウの前で、イルカは語る。
カカシの素晴らしさを、カカシの肉体美を、そして如何に女のカカシが愛らしかったかを、拳を握りしめて熱弁をふるった。
口角泡を飛ばさんばかりのイルカの姿に既見感を覚え、これって連日連夜聞いた気がすると、テンゾウは遠い目で思った。
「あ、それでは、ヤマト上忍、ここら辺で失礼します。お時間ある時にぜひうちに来てくださいね」
上忍待機所に馴染みの顔が増えたところで、イルカは輝かんばかりの笑みと共に席を立ち、テンゾウに暇乞いを切りだした。
それに無表情で頷き、新たな語り相手を捕まえ、嬉々と喋り出すイルカを眺める。
すごく見覚えのある景色だと、テンゾウは乾いた笑みを浮かべた。
そして、テンゾウは理解する。
カカシもカカシだが、イルカもイルカなのだと。
カカシの女姿の写真がどうして存在するのか、一体どこで誰が撮ったのかなど、考えれば考えるほど気になることがざくざくに出てくるはずだが、イルカには女カカシの写真が一番重要で後のことは瑣末な事象に映るに違いない。
常識的で人畜無害に見えるイルカも、実は根本的なところではカカシと同じ性質のものを持っているのだろうと、テンゾウは推測した。
「あ、アスマさん、これ見てくださいよ!!」
ドン引きする上忍たちの中、顔見知りを見つけては嬉々として写真を見せに行くイルカを眺め、テンゾウはひとまず一週間くらいは身を眩ませることにしようと考える。
カカシはイルカの可愛らしさを周囲に語りたがる気質を持つが、独占欲が強いが故に具体的なことをあまり言いたがらない。だが、イルカは周囲にあまり語りたがらない気質だが、ここ一番の時は見せびらかして自慢したい思いがあるようだ。
カカシとイルカの根は同じだが、方向性がまるきり違う。そしてその違いは、周りにはた迷惑な、いやテンゾウのみが被害に遭う迷惑な八つ当たりに発展するに違いないのだ。
カカシが里外任務に出ている今しか逃げる時はないと、テンゾウが立ちあがった直後。
「……な、なんで、あれがあるの……?」
今一番聞きたくない声が聞こえてきた。
背後で聞こえた声に振りかえりたくなくて、テンゾウは固まる。
「……ねぇ、テンゾウ。これはどういうことなのかな?」
肩を掴まれ、びくっと身を震わせるテンゾウに、カカシはおどろおどろしい声で語りかけてくる。
カカシ自身も己の女姿はあり得ないと思っていたのか、非常にご立腹な様子に、テンゾウは乾いた笑みを漏らす。
ひとまず、テンゾウが言えたことは。
「先輩、愛されてますね」
その一言に尽きた。
珍しく自分でも的確に掴んだ言葉を言えたと思ったのに、対するカカシの反応は違った。
「どこがよぉぉぉぉ!! あんな生き恥を晒されて、お前は愛されてると思えるのか!? くそ、ツバキの奴、これが目的かっ。全てはこれのためだったのか!! ちょっとお前ら、何、笑ってんの! イルカ先生、それ寄こしなさいっ」
「あ、カカシさん」と本人の登場を喜ぶイルカと、冷やかしの只中に突入していくカカシを見て、テンゾウは小さく呟いた。
「……僕も、恋人作ろうかな」
面倒で騒がしくて、思い悩むことも悔やむこともあるかもしれないけれど、二人でいることがしっくりとくる、ああいう関係性になら、なってみたいとテンゾウは思った。
「テンゾウ、お前!!」
カカシの怒鳴り声が聞こえ、テンゾウは「はいはい」と怒られるために一歩踏み出す。
急に騒がしくなった一角の輪に入り、尊敬する先輩と言い合いをする今の状況を悪くないと笑う。
そういえばイルカの同僚が女の子を紹介してくれると言っていたっけと思い出し、今度紹介してくれるようにお願いしてみようと思い立つ。
カカシとイルカのような二人になれたらいいなと願いを込めて。
でも、独占欲はほどほどの人がいいなと、八つ当たりをし始めたカカシを見て、テンゾウは思うのだった。
終わりました!!
遅くなりましたが、イルカ先生、誕生日おめでとうございます〜!
祝えているのか、いないのか、微妙だ!!
そ、そして、すぐにカカシ先生の誕生日が……。((=口=:)))アバババババ