「ッッ、嫌です! そこはもう止めてくださいッ」
「何言ってんの! ここ解さなくちゃ、傷ついちゃうでショ。大人しくなさいっ」
 イルカの足が、カカシの顔目掛けて飛んでくる。それを防ぎつつ、指を動かせば、カカシの髪を掴んでいた手が思い切り引っ張ってきた。
「止めろって、言ってんですよッッ」
「い、痛、痛いっ! 抜ける、ハゲるーッッ」


 カカシがイルカの後ろの穴に指を入れるまでは、とても順調に事が進んでいたのだ。
気持ち悪いと呻くイルカを宥めるように、前を触ってカカシは慎重に指を進めたし、イルカも弱音を吐きながらも、息を吐いて体から力を抜くように努力してくれた。
 お互いの協力の元、指を抜き差ししている間に、だいぶ柔らかくなり、二本目も入るようになった。三本目を入れてから、本番だとカカシが鼻息を荒くした時、突然それは起きた。
「っ、あぁっ」
 二本の指先を少し曲げて、中に押し入れた時、イルカの声質が変わった。さきほどまでは呻くような声だったのに、鼻にかかるような、腰に響く甘い声をあげた。
 突然の変化に、お互い、思わず顔を見合わせた。
イルカは今のは何だとカカシに問い、カカシはカカシでイルカに今の声は何と問うた。
 分からないとどこか怯えの表情を浮かべるイルカに、もしやと、もう一度同じ箇所を指で押すと、再びイルカは体を跳ねさせ、甘い声をあげた。
「ぁっん」
 声をあげた直後、イルカは顔色を変え、声を出した己が信じられないと口を覆った。ぷるぷると震えつつ、まさかと呻いたイルカに、カカシはそれだと頷いてやった。
 男には誰でもある快楽のツボ。
前立腺だ。
 顔を引きつらせてカカシを見たイルカに、にやりと笑みが零れ出た。
「イルカ先生のいいところ。見つけちゃったっ」
 意地悪く言ったのが悪かったのだろうか。
直後、イルカは暴れ出した。


「イルカ先生、アンタ、媚薬を解毒する気あるの?! 交わるなら、思う存分感じて喘いだ方がお得でショ」
「あ、喘ぐだぁ?! 嫌だっ、俺が喘ぐなんて気持ち悪いっ。交わるだけなら痛くったていいですッ。変な所触らないで、思い切りやってくださいよッッ」
 さっさと突っ込めと、叫んできたイルカに、カカシは頭を抱えたくなる。こんなはずじゃなかったのに、どこで間違えてしまったのか。
 髪が引っ張られる力がより一層強くなり、ぶちぶちと嫌な音が耳に届く。これ以上、ただでさえ細く貧弱な髪を失いたくなくて、カカシは叫んだ。
「わ、分かったから、引っ張らないでっ。入れるからっ」
 カカシの一声に、イルカの手の力緩む。そして「それでいいんです」とあっさり寝転がった。
 現金というか、何と言うか。
 いつでも来いと男らしく寝そべるイルカに頭を抱えたくなる。
 だが、ここで諦める訳にはいかない。カカシの明るい未来のために、イルカはカカシに溺れてもらわなければならないのだから。


「イルカ先生、後ろ向いてくれる? 始めはその方が入れやすいから」
「あ、はい」
 素直にうつ伏せになったイルカに、カカシはふふと笑う。無防備な尻を一撫ですれば、びくりと驚いたように体を震わせ、後ろを向いた。
「あまり触らんで下さい」
 尻に置いた手を払い、イルカは睨むようにカカシを見詰めてきた。
 本当にイルカは、この行為を解毒のためだけだと思っているようだ。分かってはいたが、少しぐらいカカシに夢を見せてくれてもいいのではないだろうか。
 落ち込んだ心は、前にも増して闘志を燃え上がらせる。
 決めた、何が何でも今晩、イルカを骨抜きにしてやる。
「ごめーんね。でも、直接触って誘導した方が分かりやすいでショ。そういう時は我慢してね」
善人の面を被り笑顔で言えば、イルカは渋々だが納得したようだ。
顔を前に向け、待ちの体勢に入ったイルカに、笑った顔が引きつる。
内心、この野郎とイルカへの恨み事がとぐろを巻いていたが、その我慢もあと少しだと、カカシは準備を進める。
「手が滑るから、服も脱いでくれる?」
「あ、はい」
 イルカは後ろ手から寝巻を脱ぎ、横に置いた。広い背中の真ん中、斜め横に走った傷を目にし、一瞬息を飲んだ。
 これほど重い傷だとは思っていなかった。


「? カカシ先生?」
 身動きを止めたカカシを訝しみ、名前を呼ばれた。それに何でもないと答えながら、違った意味で高鳴る心臓を押さえた。
 ナルトを庇って受けた傷。
 この傷を作った直後、よくナルトと一楽のラーメンに行ったものだ。ナルトから話を聞きかじった限りでは、イルカの傷は軽傷だと今の今まで思っていた。
「…先生、手と膝をついて。うん、そう」
 四つん這いにさせる振りをして、背中の傷に触れる。これで後遺症が全くないというのは、ある意味、運がいいといえる。もちろん、怪我がない方が一番良いが、イルカの幸運に深く感謝した。
 名実ともに、晴れてイルカがカカシの嫁になった暁には、里外任務に出させないようにしようと、カカシは誓うのだった。


 カカシの指示通り、イルカは寝台に両手と膝を突き、カカシに尻を突きだす格好をとる。
「……これでやるんですか?」
 振り返るイルカの表情は羞恥に染まっている。もじもじと尻を動かすイルカに、それは誘っているのかと問いかけたい気持ちが沸き起こるが、笑みを崩さずに頷いた。
「うん。これが一番体に優しいからね。男同士でも負担が少ないんだーよ」
 ズボンと下着を下ろしながら、実しやかに言葉を紡ぐ。
 実際はどうか知らない。だが、イルカも知らないらしく、そういうものですかと、慌てたように前を向いた。
 耳まで真っ赤になっている様子に少々疑問を感じたが、ここからが勝負だと張り付けた笑顔を脱ぎ捨て、ぎらつく目を尻に向ける。
 肉付きのいい尻を撫でて、「力を抜いて」と囁く。
「、ぅ」
 小さく声を出して、息を吐き出すイルカが可愛い。こうして従順に従ってくれれば、今頃はすでに一つとなり、快楽を共に貪り合っていただろうに。
 穴の周りを揉みほぐすように撫でつつ、潤滑油代わりの軟膏をたっぷりと含ませる。
先ほども使った軟膏は、カカシお手製の特別製だ。
主効能は傷薬だが、この夜のために微量の媚薬も仕込んである。
 昨日の今日で、きつい媚薬を使い続けるのは、イルカの体に悪いと判断し、あえて微量にしておいた。後は、カカシの腕次第だが、まず問題ないだろう。
「ん、カカ、シせんせ。まだ、ですか?」
 軟膏の効果が、ようやく現れたのだろうか。
 心持ち息を荒くし、鼻に掛かる声で催促してきたイルカに、力抜いてと囁き、人差し指を突っ込んだ。


「ッッ、カカシ先生!!」
 非難の声があがると同時に、イルカの肩が開く。振り返りざま、カカシの手を掴もうと寝台から手を離した瞬間を狙って、イルカの首根っこを押さえ、寝台に押さえ付けた。
 片手では体重を支えきれずに、前屈みにイルカの身体が沈む。横顔を寝台に押し付ける形で、高く腰を上げたイルカの格好を前にして、カカシは乾く唇を舐めた。
「っ、な、何す――」
 先手必勝とばかりに、イルカが感じていた箇所を押し潰すように触った。
「ぃあっっ」
 罵倒の声は、甘い声に掻き消される。
 よく解していたおかげで、指は簡単に出入りできる。二本目も潜り込ませればすんなりと入り、くちゅくちゅと卑猥な音を響かせた。
「あ、あぁ、あっ」
 面白いほどイルカの声があがる。圧し掛かるように、上から横顔を窺えば、眉根を寄せ、口を半開きにして息と一緒に声を吐き出していた。
「気持ちいいでショ?」
 耳を齧り、囁けば、閉じていたイルカの目が薄らと開く。
カカシを見つめ、あられのない声をあげながら、小さく首を横に振ってきた。素直じゃないイルカの態度に、負けん気が呼び起こされる。
「あ、そう? それじゃ、もっとしてあげようーね。お尻でイケちゃうくらいにならないと、お尻に入れてあげられないから」
 わななくように見開いた瞳に、笑みを浮かべ、三本目を潜り込ませる。前立腺を擦るのはもちろんのこと、指をばらばらに動かし、抜き差しを繰り返していると、イルカの瞳から涙が零れ始めた。
「あ、や、やめっ、あ」
 身体の下敷きになっていない手がさ迷い、シーツに縋りつく。息と声を吐きだすことに精一杯で、口はさきほどから開いたままだ。
 口内で引きつくように舌が蠢いたのを見て、誘われるように舌を差し入れた。
「ん、んんー、んっっ」
 苦しいのか、さきほどより声を大きくして、自由にならない顔を動かしている。それでも口内の中に舌を突っ込みつつ、視線を下に動かせば、イルカのものは完全に立ち上がり、たらたらと薄い液をシーツに落としていた。
 これも一応、イっていることになるのだろうか。
 真偽のほどはよく分からないが、カカシのものは、イルカの痴態に煽られ、我慢はとうに過ぎている。
ぎんぎんに滾っている己のものに説得され、ここらでいいだろうと指の動きを止め、ゆっくりと引き抜いた。
「っ、あっ、ん」
 舌も抜いてやれば、イルカはくったりと寝台に潰れた。ぼんやりとどこを見詰めているか分からない眼差しを向け、完全に気を飛ばしているイルカの体を仰向けに寝転がらせる。
 イルカのものは未だ硬度を失わずに、透明な液体を流し続けていた。
 おもしろい現象だと観察しつつ、両足の中に入り込み、太ももに手をかける。そのまま太ももを上半身に押し付けるように曲げても、イルカから反応は返ってこなかった。
 それも何だか寂しい気がしたが、正気に戻って再び暴れてもらっては困るので、先に入れようとカカシは自分のものを押し付けた。
 一度も触れていないのに、ずっと立ち続ける自分のものに苦笑が零れ出る。体を押し進めれば、狭くて熱い感触が先の部分を締めつけてきた。


「はっ」
 小さく息を吐いて、奥目指して進もうとした時、びくりとイルカの体が跳ねた。
「いたっ、……痛いっ。…や、……痛いっ」
 痛みで正気に返ったのか、身体を固くさせ、首を振った。ぱさぱさとシーツの上で黒髪が躍る。
「もう少しだから、我慢してっ」
 途端に狭まった隙間に、力技で押し進む。こういうときは一気にやった方が、カカシもイルカも楽に違いない。
「、いたっ、っぁ」
 イルカの肩を抱きすくめるように、一気に押し込んだ。小さな悲鳴をあげるイルカの声を間近に聞きながら、奥までようやく納まることができた。
 イルカの中は熱く、絡みつくようにカカシのものを絞ってくる。絞り過ぎの感もあるが、今までで最高に気持ちがいい。下手に動けば、堪える間もなくイってしまいそうだ。
 奥歯を噛みしめ、しばらく身動きせずに止まった。


「――全部、入ったよ。分かる?」
顔を真正面に向き直し尋ねれば、短く浅く呼吸を繰り返すイルカが何度も小さく頷く。そっとイルカのものに視線を落とせば、半分萎えかかっていた。
まだ慣れていないため仕方ないが、少しでも感じてもらいたくて、顔を突っ込み、充血している乳首を舐めた。途端、
「っ、あ、いやっ」
 びくんとカカシを浮き上がらせるほど激しく跳ねた瞬間、ぐっとカカシのものを絞り込んできた。
 扇動するように激しいその動きに、気を抜いていたカカシはあっけなく放ってしまう。
「う、っ」
 小さく呻いて、しまったと思うものの、もう抗う術はない。ぐぐっと腰が勝手に奥へと動くのを感じながら、最後の一滴まで全てイルカの中へ放出してしまった。
「っ、っ」
 びくびくと震える体を抱きしめ、全身の力を抜く。
 頭を痺れさせる快楽と、気だるさを感じながら、うっとりと呟いた。
「あー、気持ち、いい…」
 イルカにしてやられた感があるが、散々焦らされたのだから、仕方ない。
 それにまだまだ夜は長いのだからと、目覚まし時計の短針の先を見て笑う。


「…あ、熱い…?」
 カカシのものが小さくなったことで楽になったのか、さきほどまで顰めていた顔を緩ませ、荒い息の合間に、不思議そうな顔で呟いた。
 無防備なその表情は頼りなく、潤んだ瞳で胸を上下させる姿はしどけない。
 ぐぐっとせり上がる情欲にカカシのものが反応する。若いって素晴らしいと己を讃えながら体を起こし、腰を揺らめかした。
「は、ぅ、ん」
 腹の中で大きくなっていくものを感じたのか、イルカは訝しげな表情で唇を噛んだ。イルカが喜ぶ場所に当たるよう腰を動かし、表情の変化を見落とさないように観察する。
 辛そうな顔はしていないが、苦しげな表情を浮かべ続けるイルカに、もう少し奥かと腰をぶつけた途端、表情が固まり身体が跳ねた。
「あ、やっ」
 両肩の上についたカカシの手に、イルカの手が縋る。爪を立ててきたそれに苦笑しながらも、ようやく場所が分かったと唇を舐める。
 本格的に腰を使い動き始めたカカシに、イルカは悲鳴をあげた。
「や、やだ、止めっ…。いやだ、やだ!!」
 舌足らずな声をあげ、首を振っては啜り泣く。快楽と戸惑いに揺れるイルカの表情に煽られる。
ますます調子づくカカシの心情を知らずに、イルカは泣いた。
「気持ちいいでショ? イルカ先生の、また元気になってきたよ」
 指摘してやれば、違うと首を振る。何が違うのと言えば、イルカは違う違うと何度も首を振った。
 強情な所もすごく可愛い。そんなイルカに気持ちいいと、カカシを欲しいと言わせたら、それだけでイってしまうかもしれない。
 突き上げることは止めず、イルカの足をより開かせて、抱き合うように密着した。お互い腹の間に、滾っているイルカのものを挟み、律動と一緒に擦れば、あられもない声でイルカは叫んだ。
「いやぁ、あぁ、あーっ」
 目を見開いた瞳からは、さきほどからずっと涙が零れ落ちている。その雫を舐め取り、声を放つ唇を塞いでラストスパートをきる。
 最初にイッたのはイルカだった。後から追うようにしてカカシもイき、イルカの身体の上に抱きついて、力を抜いた。
胸に耳を押し当てれば、イルカの鼓動が異様に早かった。自分がイルカの鼓動を早めたのだと、何とも言えない充足感を覚え、笑みが零れ出る。
 しばらく快楽の余韻に浸っていると、イルカの手がカカシの肩に乗り、「重い…」と揺さぶってきた。
 もう少しこのままでいたかったのにと恨みがましく見上げれば、イルカは息も絶え絶えな様子でぐったりしている。
 カカシよりも二回多くイっているのだから無理はないかと、カカシはしぶしぶ体を起こし、イルカの中からものを引き抜く。
 ぬるりと出る感触が不快だったのか、イルカは眉根を跳ねあげて呻いた。


「う、ん」
 唇を噛んで声を押し殺す仕草にむらっとくる。散々カカシが出入りした場所からも、とろりとカカシ自身のものが零れ出た様を見て、ますます興奮してきた。
「も、もういい。もういいですっ」
 ぐったりとしていたイルカの目が見開き、掠れた声で懸命に首を振ってくる。
 何をそんなに慌てているのだろうと、イルカの視線を辿ってなるほどと合点がついた。
 イルカの痴態に煽られ、カカシのものはもう回復している。
 顔を青褪めさせ、涙目でぷるぷると首を振るイルカは、カカシの欲を煽って仕方ないらしい。ぎんぎんと反り立つものを感じながら、カカシはイルカに覆いかぶさり、にっこりと笑った。
「これで、終わったと思わないでーね」
 今夜は寝かさないと決めているのだから。
 ひっと呻いたイルカの唇を塞ぎ、カカシは再びイルカの体に挑みかかった。



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書いといてなんですが、このイルカ先生はちょっとひどいと思わなくもない…。
けれど管理人としては、始めはエロに非協力的なイルカ先生は大好きです!!(始めというのが肝要っ)






色温度ぷらす 8