大晦日。
今日も受付所は大盛況だ。
どしどしと来る任務希望者に、受付所内は活気に満ち溢れている。
人手がいないと嘆いていた、あの頃が嘘のようだと、私こと、うみのイルカは満面の笑みと共に、気迫漲るくノ一へと任務書を手渡した。
年の瀬も近づく頃、忍びとはいえ、やはり人の子である忍びたちも家族と共に年を越したいと、受付所からは足が遠のく。それは独身者たちも例外ではなく、独り身寂しい身でどうして働かなくてはならないのだと、一種のボイコットが起きる。
おかげでこの間は、受付泣かせの魔の期間だった。
身の回りにいる知人、友人に頭を下げ、あるいは実力行使で有無を言わせず任務を割り振り、どうしても人が捕まらない時は受付を抜け、己が手で任務をこなした。
せめてもの救いは、年の瀬に集中する任務は簡単な配達が主だということか。
とはいっても、さすが年の瀬。
正月、元旦までに届けてくれという時間制限付きの配達が多く、私の周りの人間は、家でゆっくりと正月を迎えたことがないと嘆く者が多数存在した。
かくいう私も例に漏れず、ここ5年は正月らしい正月を送っていない。正月って何だっけと、一呼吸置いて思い出す有様だ。
その現状を憂い、手を差し伸べてくれたのが、我らが火影さま、三代目だった。
「イルカや。久しぶりに正月は儂の家で過ごさんか? お主の好きな雑煮も用意するぞ」と、声を掛けられたのは、三年前。
雑煮って何でしたっけ? と、何気なく返した言葉から、受付任務者の苦悩を察した三代目は、正月三が日限定のイベントを催した。
その名も、「今年の福男」。
昨年、めざましい活躍を見せた忍びを火影の独断と偏見によって福男福女と称して担ぎ上げ、その運にあやかろうというイベントだ。
大晦日前日から正月三が日に任務を受け、一月一日〜三日までに任務達成し帰還した忍びの中から今年の福男(福女)が一名を選び福女(福男)を決める。その後、今年の福男(福女)から口づけと抱擁、里からの特典を与えられるという催し物だ。
運やツキを大事にする忍びにとって、とっても魅力的なイベントというのは建前で、要は客寄せパンダに他ならない。
毎年、福男と福女が交互に選ばれるそれは、二年前は今をときめく独身特別上忍男性三人が選ばれ、昨年は美女と名高い独身の上忍クノイチが選出された。
めざましい活躍とは銘打つも、あからさまな選出仕様だったが、三代目が睨んだ通り、閑古鳥が鳴いていた年の瀬の受付所は、お祭りかというほど盛り上がった。そして、大晦日前日から正月三が日までの任務達成率が、過去最高を叩き出した。
特に独身者は異様な盛り上がりを見せたのも、このイベントの特徴だ。
あわよくばお近づきに、それができなくてもこの身に触れて欲しいと、健気なのか下心なのか分からない独身者たちで受付所は溢れかえった。中には既婚者もいたみたいだが、特に言及はすまい。
というわけで、二年前から始まったこのイベントのおかげで、任務を割り振る苦労から逃れ、受付員一同、通常の勤務形態を取ることができた。
同僚たちと年末の受付任務の当番を前々から練り、今年は私が正月を味わう年だ。
今年は三代目のお言葉に甘えて、正月を一緒に迎えさせてもらう予定である。
頭の中ではすでに三代目のとこの豪華おせち料理が思い浮かび、口内に涎が溢れんばかりに沸き上がる。三代目が「今年のおせち料理は奮発したぞ」と直々に伝えにきてくれたこともあって、頭とお腹は今か今かと期待に膨れ上がっている。
ちらりと時計を盗み見れば、夢の時間まであと数十分。
早く早くと急かすようにお腹が鳴ったが、空腹こそが最高の調味料とも言える。
「頑張れよ、私のお腹。今日は小手調べ、本命は明日なんだぞっ」
弾む声音でお腹を宥めれば、「あ、そうだった」とばかりにお腹がきゅきゅーと返事した。うむ、愛い奴め。
うふふ、あはははと自分の腹と会話を繰り広げていると、受付所の戸が開いた。
「こわっ。あんた一人で何喋ってんのよ。つぅか、イルカ、分かってる? くノ一にとって決戦の狼煙がとうとう上がったのよっ!!」
ひと段落ついた時間に訪れたのは、アカデミーの同僚兼友人であるいとのマキだ。
くせっ毛の長い栗色の髪を掻き揚げ、プロポーションのいい肢体を見せびらかすように歩きながら、こちらへ向かってくる。
「マキ、どーしたのよ。今日は非番勝ち取って、夜から磯屋のブランド福袋をゲットすんだって、息巻いてたのに」
珍しいこともあるもんだと、目の前に来たマキを見上げれば、マキは息荒く受付の机に手を叩きつけた。
「あーんたは、どーしてそんなに情報が遅いのッ!! そんなんじゃ、くノ一の名折れよ!? 今日は待ちに待った恒例の福男イベントじゃないッッ」
言葉に乗って机を叩き、身を乗り出してくる。
そのハッスル振りに慄きつつも、私は半笑いを浮かべ落ち着くようにと宥める。
「知ってるって。そのおかげで私は大晦日の晩から三が日まで休日もらえたんだし。こんな大型連休、久しぶりで久しぶりで、もう今から夢心地よー」
ほうっとため息を吐き、火影さまの家で正月迎えるんだとうっとりと言葉を継ぎ足せば、マキは奇声をあげて頭をかきむしった。
「あんたバカー!? 言っちゃ悪いけど、火影さまとはいえ相手はご高齢のお年寄りよ?! その晩餐会にお呼ばれしたって嬉しかないの、ってか、里のトップの御前にあがる緊張で、物も食べられないわよー!!」
あぁ、恐ろしいと身震いをおこしたマキは大げさだ。
「やだなぁ、マキってば。三代目は緊張する方じゃないでしょう」
「あんたは、もうちょっと緊張しなさい」
へらへら笑ってご冗談をといった私に、マキの目が半眼になった。
確かに里のトップに立つ火影さまだが、両親が三代目と親交があり、幼いころから慣れ親しんだ身としては、三代目は祖父のような存在に近い。
「あぁ、今はその話してる時じゃないのよ。いいから、ちゃっちゃと任務ちょうだい。一月三日に終わる任務がいいわ」
無茶振りをするマキに、眉根が寄る。
「我がままだなぁ。正月の任務なんて、ほとんど配達任務が多いんだよ? そんな都合のいい任務なんてさぁ……って、おお、マキ、ツイてる。これなんてどうよ?」
数枚になった任務書をめくり、マキ向けの任務を見つけ手渡した。正月から三が日までのデパート警備。持ち場はマキが目をつけていたブランドの福袋などが売ってある、福袋専門の売場中心だ。
一瞥するなり、にやりと笑い、マキは親指を立てた。
「相変わらず、いい采配だわ。ナイスよ、イルカ。これで、三日目の最後、時間ぎりぎりに現れた私が注目を浴び、見事福男に選ばれし福女になれる…ッ」
ぐわっと目を剥くマキにびびる。えらく気合を入れているが、それだけ今年の福男に選ばれた人がマキにとっての本命だということだろうか。
「そうか、そうか。頑張ってね、応援してるよ〜」
快く応援の言葉を差し向ければ、マキは呆れた顔をさらけ出す。
「ちょっと、イルカ。その反応は何? あんたもくノ一ならちょっとは必死こきなさいよ。今年の福男は、何たって今も昔もときめくはたけカカシ様よ!!」
うっとりと手を組み合わせるマキの姿に、鬼気迫るくノ一たちの理由を見て、大いに納得した。
「あぁ、カカシ先生が福男だから、今回はものすごかったわけか」
里のほぼ全てのくノ一が結集したのではないかと思わせる集まりように、今年は何かが違うと思っていたが、カカシ先生ならば止むをえまい。
元生徒の上忍師を引き受けてくれたカカシ先生は、名だたる経歴を誇りながらもちっともいばることはなく、下位の者にもとても気遣い優しく接してくれる、大層できた御仁だ。
ただし、私以外の者、という注釈がつくが。
きゃーきゃー言いながら、カカシ先生に選ばれたらどうしようと十代の乙女のようにはしゃぐマキに生ぬるい目を向ける。
マキ曰く、カカシ先生は額当てと口布でほとんどの顔を覆い隠しているが、素顔は絶対美形だ。おまけに高ランク任務を受けているから金はあるし、長期任務中の伽でも決して無体な真似はせずに、逆に蕩けるような夢を見せてくれる男振り。顔良し、金あり、閨良し、おまけに里の誉れ。何もかもを持っている極上の男前こそがカカシ先生だとかなんとか。
きらきらした目で語りだすマキに、正直うんざりした。
何度もマキには言っているのだが、カカシ先生は乙女の夢を体現したようなキラキラした男ではない。
元生徒たちとの繋がりで、カカシ先生とは話すし、飲みにも行ったりするが、カカシ先生は至って普通の男、いやかなり神経質な男だ。
私が水遁の授業で多少濡れたが放っておけば乾く程度の服で、受付任務に入ったら、目くじらを立て怒鳴りつけられた。風紀が乱れる、だらしない、子供たちの手本である教師がそれでいいのかとうるさいうるさい。おまけにちょっと暑いからと、支給服の腕を捲っていただけでも見苦しいと怒る怒る。お前の猫背の方がよっぽど見苦しいとその時は本当に言ってやりたかった。
子供たちについて聞きたいからと誘われて飲みに行った時でも、焼き鳥を一本食べてもはしたないと怒られた。餡掛け豆腐のたれが唇についても怒られた。それを舌で舐め取れば激怒された。終いには、私が食べる姿が全部卑猥といちゃもんをつけられた。
子供たちのために我慢したが、もう二度とカカシ先生と二人っきりで飲みに行かないことを固く誓った。何故だか知らないが、カカシ先生は私と二人きりでない酒飲みの場ならば比較的に温厚になる。そのため、一度二人で飲んだ後、誘われても必ず誰かを誘うようにしている。全くもって訳分からん神経質な男だよ。
基本的に人には優しいし、子供たちのこともよく見てくれてるし、いい人には違いないのだが、私はこれまでに何度となく理不尽な内容で怒鳴られたので、カカシ先生は苦手な部類に入る。
冷めた目で聞いていることに気付いたのか、マキはふぅぅと重いため息を吐いて、「あんたには豚に真珠だったわね」と諦念の入り混じった声で馬鹿にされた。ほっとけ!
いつかマキにカカシ先生の本性を見せつけてやると決意しながら、手元にある書類に目を落とす。割り振らなければならない任務は、いよいよ残り二枚となった。
配達、失せ物探しの二つ。
どれもDランク相応の任務だが、片や時間的に厳しく、片や運が必要な任務なため、残ってしまったものだ。
時計を見れば、いつの間にやら、時間は午後六時十分前。
後十分すれば、帰れる。念願のおせちが口に入る。勝手に綻ぶ口元を引き締めつつ、交代する前にこの任務書を裁けたら幸先良いのにと任務表を見つめていれば、名を呼ばれた。
「……イルカ」
「ん?」
顔を上げた瞬間、マキの手が任務書をかっぱらい、私の親指を印判につけるなり、二枚の任務遂行者の欄に押しつけられた。
気を許していたとはいえ、一連の見事な手腕に呆気にとられる。
「……マキ」
「ん?」
名を呼べば、マキは端から見れば可愛らしい、私にとっては悪魔の笑みを向けてきた。
「なーんてことすんのよぉぉッ! 私、これから三代目と年越すって言ったでしょーッッ! いやー何これッ。砂浜に落としたピアスを見つけてくれって、しかも、一年前に落としたって、舐めてんのー!? おまけに配達だって、コレ、隣の隣の町の山二つ越えた先の村じゃないッ。あそこって悪路で最悪な道って有名なの、知ってるでしょー!?」
頭を抱えて嘆いていれば、マキは露とも悪いとは思っていない顔で、女でさえ見ほれるような妖艶な笑みを浮かべた。
「噂に疎すぎて、時代逆行しているあんたに、私から一足早いお年玉をあげる」
そんなことで私のハッピー正月ライフが取り戻せるかと、半ば怒り狂っていると、マキは顔を近付けひっそりと囁いた。
「今年の福男は、マイト・ガイ上忍も選ばれたって」
その瞬間、私の背後に、雷が落ちた。
*****
マキからお年玉以上のお年玉を得、涙目で引き留める三代目を振り切り、私が里を出たのは午後6時10分頃。
里を出たのは、もちろん任務遂行のためだ。
まず向かったのは、失せ物探し。
里から近い場所にある海辺に落としたという、赤いピアス。
ピアスにこれとった特徴もなく、しかも、一年前にたぶんここに落としたというおぼつかない情報を元に辺りを捜索した。
暗くなっていく海岸で夜目を利かせ、砂浜に這いつくばって寝るのも惜しんで捜索した結果。
見つけたのは、初日の出が地平線上から顔を出した時だった。
周囲が明るくなり、ご来光を見るために押し寄せてきた人込みの足元を浚うように見ていた視界の端にそれはあった。
視界を横切る小さなもの。
二本のハサミと、背中には貝を背負う、ヤドカリという生き物。
そのヤドカリが背負う貝の苔に、朝日を浴びてきらりと光る赤い星があった。
「しゃー、んなろぉぉぉぉ、メルヘンゲットだぁぁあぁぁぁ!!!」
歓喜のあまりヤドカリごと掴みあげ、人だかりの中、勝利の雄叫びを初日の出に向かって叫んだのは、致し方ないことだろう。
ほんの少し眠気を感じつつも、るんるん気分で回収したピアスを忍鳥に預け、次に向かったのは、書簡届けだ。
任務書によれば、新年の挨拶に書簡を手渡して欲しいとのこと。
忍びの者とは分からぬ格好で、一月三日までに届けて欲しいという、制限付きのものだった。
山を二つばかり越えねばならぬが忍びの足ならば全速力で走れば一日と半日。往復で三日。イベント最終日三日目にぎりぎりで戻ってこれる。
町娘風の服に変装し、朝飯と気力回復のための兵糧丸を噛み砕きながら、上機嫌で向かった先で、思わぬことに巻き込まれた。
街道をそれとなく急ぐ私の後をつけてくる薄い気配。
始めは気のせいかと思ったが、一向に離れようとしない気配に舌を打ち、山道へと入った途端、その予感は的中した。
山道の前後を挟むように、塞がれて現れた他国の忍び十五名。狙いは懐に入った書簡だろうか。
まずは情報収集と、怯える演技をしつつ、年若い忍びへ誘導尋問してやれば、元来口が軽かったのか、喋る喋る。
その若い忍びが言う事には、私が持っている書簡は、火の国の大物大名の奥方が昔の愛人にしたためた新年の挨拶にかこつけた、逢瀬の約束を記したラブレターのようだ。
大物大名とはいえ、名ばかりの夫を意のままに操る奥方派と、それを蹴落としたい老中派の争いに、イルカは巻き込まれたようだ。
そんなこと依頼書には何にも書いてなかったじゃん。
これDランク任務じゃなくて、Cランク任務でしょ。一体誰が裏を精査した。あいつか。あの年だけ無駄に食った、禿親父スケベ爺か。
そういえば、依頼主の奥方は年を召したとはいえ大層美人な方だった。
十中八九、私見が混じっているなと怒りがこみ上げてくる。任務を請け負ったのが私だったから良かったものの、下忍だったらどうなっていたか分からない。
帰ったら、依頼人と担当者にそれ相応の罰を受けてもらうと密かに闘志を燃やしつつ、私は目の前にいる団体さんを油断なく観察する。
べらべらと情報を喋っていても何ら静止しない忍びたち。私を殺せると高を括っているのか、それとも他の違う理由か。
何となく勘で、違う理由があるような気がしつつ、無駄に食っちゃべっている若い男にしびれ薬を仕込んだ千本を打つ。
奥方を蹴落とす動かぬ証拠になるとケラケラと笑った男の首に命中し、一発で男は地に沈んだ。
牽制のつもりで打ったのだが、まさか当たるとは。
「あ、ヒラ! くっそ、お前一体何をした!!?」
「待って、この人今何か放ったわよ!」
「な、なんだって!! じゃぁ、こいつは!!」
ざわざわと一気に過剰反応を起こす目の前の団体さんを尻目に、容赦なくこちらは一撃で倒させていただく。
忍びとしてまだ大成していない、新人の匂いを嗅ぎ取り、意識を失わせることを重点にして、一気に2人の意識を刈り取った。
ばたばたと倒れていく仲間に、敵は右往左往し始める。そのお粗末さは木の葉の下忍以下、いやアカデミーの幼少クラスに等しい。
まさか新人育成のための模擬演習に、この書簡が選ばれた訳じゃないよなと嫌な予感を覚えていれば、敵の一人が大きな声で叫んでくれた。
「先生! この人、忍びです!!」
姿を隠しているであろう監督者役を暴露する年若い忍びに、敵ながらその教師に同情してしまった。案の定、「馬鹿野郎! お前は減点30だ!」と居所を悟られないように叫んだ教師の声が響く。
しゅんと落ち込む敵の周りにいたほかの者たちが励ましているが、任務中にそんなよそ事を気にしていたら命が危ない。私だったらげんこつの一発は落とすと胸のうちで思いつつ、気を取り直して排除に乗り出す。
一対多で戦う時は、個体撃破が望ましい。幸い、足の速さには自信があるし、この辺りの地形は良く知っている。素早さに物を言わせて攪乱し、誘導しながら一人一人潰していこうと決める。
先制攻撃を仕掛けた後、上に飛び上がり、敵の人数と位置を把握。
迎撃態勢に入った敵へ、避けられる念頭に千本を打ち、次の手として起爆札を手に隠し持てば、放った千本は見事2名の忍びの急所を貫き、そのまま倒れてしまった。何とラッキーなことだ。
砂浜のピアス発見効果が続いているのかと嬉しく思いつつ、繰り出そうとしていた起爆札を、倒れた忍びに釘付けとなっている忍びたちの真上に投げつければ、破裂した衝撃と、それと同時に木々の大ぶりな幹が頭上から降り注ぎ、2名が昏倒した。残りは8だ。
それからも嘘のように命中するクナイと千本に、これは楽勝でいけるかと一瞬頭に浮かんだが、すぐさま気を引き締める。
目の前の敵は油断しない限り負けはしないだろう。だが、監督者である忍びは自分と同等かそれより少し上の実力を持っているはずだ。
闇雲に切りかかってくる忍びたちをかわしながら、油断なく辺りを窺い、山道を駆けた。
そして、数時間後。
ひよっこの忍びたちを11人、完全に身動きできない状況へ追い込んだところで、ぶち切れた。
ただでさえぎりぎりだというのに、目的地まで半分も来ていないばかりか、うるさい蠅のように周りでうろちょろとする忍びたちが憎くて憎くて仕方ない。
人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られるんだよとばかりに、逃げ回る時に仕掛けた結界を作動させ、その中で痺れ薬を散布する。
世界に一つしかない、お手製の痺れ薬を食らい、ぼたぼたと地面に転がる忍びを踏みつけ、私は駆ける。
それだというのに、山道を後少しで抜ける目と鼻の先で真打ちが登場した。
酸いも甘いも味わったであろう、落ち着いた雰囲気を持つ壮年の男。
男の生徒たちであろう忍びを倒した私を前にしても、冷静を保ったままの男は油断ならないと肌で感じた。
それと同時に、長期戦になるということが確定した瞬間でもあった。
あまりの運の悪さに、視界が真っ赤に染まる。もはや時間がないというのに、時間が、時間がないというのに!!
きぃぃぃっと奇声をあげて鬱憤を晴らしたいと地団太踏んでいると、近くに何かの気配を感じた。 ふと視線を集中すれば、黒いものに身を包んだ、白い仮面のツーマンセルを目に捉えた。
ここは、木の葉にそこそこ近い。当然木の葉に帰る仲間もいる。
私が、偶然見かけたのは、木の葉の最強にして最恐の暗部だった。やった、勝った、私は運命の神を味方につけたのだ!!
「きぃやぁぁぁ、助けてぇっぇ、犯されるぅぅぅぅ」
瞬間、腹から声を大にして叫んだ。
ぎょっとする敵忍に構わず、私は山の腐葉土にまみれた服と、木々に引っかかって出来た服の切れ目を無理矢理引き裂き、かよわい女性らしく、地面に横座りに倒れる。
真向かいの木に、音もなく近くに現れた暗部に気づかぬ素振りで、恐怖におののく可憐な女性を演じる。
「誰かぁ、誰か来てぇぇ!!」
「な、なにを言っている! さては何か」
「このままじゃ犯されるぅぅ! 嫁入り前の清らかな体を無体にも汚されるぅぅぅ、あぁぁれぇぇぇぇぇっっ」
よよよと悲嘆に泣いていると、敵忍は何とも言えない気配を滲みだしていた。
自分の大根役者ぶりに敵忍が正気付くのも時間の問題と思えたが、さすがは木の葉の暗部。その前に行動を起こしてくれた。
「……アンタねぇ。やりようがもう少し他にもあるでしょうが」
敵忍を昏倒させると同時に、外套を頭から被った、犬面をつけている暗部さんが声を掛けてきた。
期待を裏切らないその行動に、嘘泣きで出た涙を拭い、心からの拍手を送る。
「ありがとうございます、暗部さま!! このお礼は、後程必ずや致します。火影様経由でお贈りしますので、楽しみに待っててくださいませ!!」
奮発して火の国大名ご用達の干物を進呈しようと心に決めつつ、助けてくれた犬面暗部さんと足を止めてくれた猫面の暗部さんにそれぞれ頭を下げる。
ではと礼もそこそこに駆けだそうとすると、肩に重みと力がかかった。
急いでいるんですがと視線に力を込めて言外に申せば、引き留めた犬面の暗部さんが少し顔を背けて注意してくる。
「……アンタさ。任務で急いでるのは分かってるけどその格好どうにかしなさいよ!! 仮にも女なのに、どういうことよ!!」
ぷんぷんと怒り出した犬の暗部さんの言でようやく自分の有様に気付いた。
自分で服を裂いたとはいえ、これはさすがにひどい。
森の中を駆けずり回ったせいで服は泥だらけ、着物の合わせは乱れ、覗く胸元と太ももの素肌からはひっかき傷が多数出来ている。本当に強姦でもされたような格好だった。
「……あはははは」
恥ずかしくなって、笑いで誤魔化す。
いそいそと着物を正し、その場で泥とほこりを叩いていれば、犬暗部さんが頭についていた木の葉を取ってくれた。そればかりか、どこからともなく針と糸を取り出すなり、見事な手つきで破れた箇所を縫い合わせてくれた。
何て素早く正確で、しかもうまいのだろうか。
着たままなのに簡単に綻びを直してしまう手腕に、感嘆の息がこぼれ出た。
「ありがとうございます! 見苦しいものをお見せして、すいませんでした」
深々と頭を下げて礼とお詫びを言うと、犬暗部さんは私の頭から爪先まで眺めた後、安堵したような息を吐いた。
「うん。まぁ、ましになった。……ねぇ、もしかしてアンタが急ぐ理由っていうのは福男のイベントのせい?」
これで用もないと思っていただけに、更に話しかけられて面食らう。恩人かつ女としての嗜みを気付かせてくれただけに無下にもできず、はやる気持ちを押さえて答えた。
「はい。その、お恥ずかしい限りですが、今年の福男に憧れの人がいるんです。普段なら絶対に無理ですけど、イベントなら少しでも可能性があるじゃないですか。だから、その一度でいいからぎゅっと抱きしめてもらって……ほ、頬でもいいからチュッてしてもらえたらなって…」
言い終えた後、素直に言い過ぎたかと少し悔いる。
真っ赤になっている自分を自覚しながら、誤魔化そうとすれば、興奮気味な声が響いた。
「そ、そう!! がさつで鈍すぎてどうしようもないアンタでも可愛いところがあるんだーね!! イベント何てくだんないって思ってたけど、アンタがそう言うなら参加してあげるーよ!!」
拳を握りしめ、鼻息を荒くさせる犬暗部さんに一瞬ビビる。
思わず一歩退こうとすれば、そうはさせじと犬暗部さんは私の手を捕まえた。そして、一度咳を払うと、懐から丸薬を取り出して、唇に突っ込んできた。
わざわざ暗部特有の鉤爪を外して、素肌で丸薬を押し付けたことにも驚いて、泡を食っていると、犬暗部さんは滔々と語りだす。
「とはいっても、ズルは駄目だからーね。でも、頑張るアンタが間に合わないっていうのも可哀相だから、これ食べてちゃっちゃと済ましておいでよ。……待っててあげるから。ほら、食べて。元気になるから」
歯で侵入をガードしていたが、力づくで押し込めようとしてくる執念に負け、私は大人しく丸薬を口内に入れて噛み砕く。
もごもごと口を動かしていれば、犬暗部さんは小さく笑って、私の唇についている丸薬の粉を親指で拭い取ってくれた。
「全く、手間がかかるねぇ、アンタって」
くすくすと笑いながら、何度も唇を触れる犬暗部さんに奇妙なものを感じていれば、後ろの方から声がかかった。
「先輩。彼女、引いてますよ」
猫面暗部さんの言に身を跳ねさせて、犬暗部さんは手を引くと、鉤爪付き手袋を装着しながら焦ったような声で私を追い立ててきた。
「ほら! アンタ、いつまで、ぼんやりしてんのよ。さっさと行ってきなさいよ!! ほら、走る、駆ける!!」
肩に手を掛けられ、くるりと向きを変えられるなり、背を押される。呆然としながらも走り出せば、犬暗部さんが叱責を、猫面暗部さんは手を振って応援してくれた。
「さっさと行きなさいよ! 間に合わなかったら承知しないんだからね!!」
「行ってらっしゃーい」
「は、はいー! がんばりますー!!」
二人の暗部に見送られ、後ろ手で手を振った後、私は本格的に走り出す。
そのとき何となく犬暗部さんについて何か引っかかるものを感じた。
帰還途中で疲れているだろうに、色々と気遣ってくれた犬暗部さん。
出会ってから、女としてだらしない、色気がない、動作ががさつ、無防備すぎて見ていられないと、まるで母親のように小言を繰り返す、元生徒たちの上忍師と雰囲気が似ていたなと思う。
口内に残った丸薬の味を何となく味わいながら、目的地の場所へ突き進んだ。
*****
「ふ、ふふふ、はははは、あーははははは!! やった。私はやってやった……!!」
木の葉の里の出入り口、『あ』と『ん』の門を潜り、私は闇に没した里へと帰還を遂げた。
ちらほらと灯っている民家の明かりを横目に眺め、誰もいない大通りを通り抜ける。途中、得た棒きれを杖代わりに、疲労に沈んだ体を気力で進ませた。
色んなことがあったが何とか無事に三日までに里へとたどり着いた。
道中着ていた着物は書簡を届けた後、すぐに着替えた。やはり動きやすい正規服が一番だ。おかげで遅れをだいぶ取り戻せたが、体はがたがただった。
食事は兵糧丸のみ、不眠不休で走り続け、仮眠は合間合間の一瞬とくれば、着替えはおろか心の洗濯である風呂も入れなかった。
だが、これでガイ先生との抱擁と口づけの可能性が高まったということだ。数々の困難にめげずによく頑張ったと自分を褒めてやる。
這う這うの体で、受付所へたどり着けば、任務終了期日である最終日である今日。そして、福男たちから選ばれる福女たちの選定会でもある場所は、人でごった返していた。
任務報告者と、イベント対象者たちを選り分ける係と、報告者を裁く係の者たちが忙しなく働いている姿を横目に、報告書を書き連ねる。
忍鳥に預けたピアスはすでに受付に渡し済みだ。あとは報告書を出せばいいだけ。
「……イルカ、あんたに一体何が起きたの。……っていうか、臭い。あんた、正気?」
ふふ、ふふふとやり切った達成感に浮かれて笑っていれば、不意に影が落ちた。そちらに向かって顔を向ければ、顔をしかめているマキの姿がある。
「あぁ、マキ、お疲れ。私と違って綺麗に身だしなみ整えちゃって、まぁ。……って、しくじったぁぁぁぁぁ!!!」
ほぼ四日間の不眠不休に加え、砂浜、街道はおろか森や悪所を走り回ったおかげで、汚れは蓄積され、冬場とはいえ饐えた臭いがする。
現に、私が受付所へ踏み入れた途端、受付員が目の色を変えて極寒の寒さの中、窓を全開にし、そして周りにいる報告者およびイベント対象者たちがあからさまに顔を歪めて、私を見つめていた。
どうりで、人があふれかえっているのにも関わらず、私が通ろうとする道は自然と開いていったはずだ。
書き終えた報告書を握りしめ、悔恨にうめく。
身だしなみを整える時間を作ることを忘れていた。こんなにも汚くばっちい姿で、ガイ先生と接近するなんてありえない。そんな公開処刑じみたものを味わうなんて冗談ではない。
「だ、誰か、ファブ●ーズを!! なければリセッ●ュでも構わない! 誰かぁぁぁ!!!」
救いの主はいないかと血眼の目を周囲に投げかけるが、救い主は現れなかった。
「あぁ、もう。この際、選ばれないことを祈りなさいよ。それか、後からしてもらえるようお願いしなさいよ!」
それより早く報告書を出して去れと、杖に使っていた木の棒を持ち、受付所へ押し出す暴挙に出たマキへ文句をぶつける。
「痛い! マキのばか! 友達甲斐ないっ!! 箪笥に小指ぶつけて苦しんじゃえっ」
「はいはい、さっさと出して、お家に帰りなさい。結果は後から教えてあげるし、一応、イルカも対象者ですってお目当ての方に言ってあげるから」
顔を引きつらせる同僚に報告書を出しながら、今までの頑張りは一体何だったのかとめそめそ泣く。
人から言われるのと、その場にいるのとでは、絶対確立が違う。その場にいた方が目に留めてもらえる可能性は高いはずだ。いや、待てよ。
「っ! この汚さが逆に引き付けるかも!!」
「……あんた、女としてもう終わってるわ」
「イルカ。悪いことは言わねぇから帰れ。男から見てもお前最悪だぞ」
背後からマキ、前からは同僚である受付員から突っ込まれ、悲嘆がさらに高まる。
イベント何て大嫌いだと辛抱ならずに叫ぼうとしたとき、報告書入り口が開いた。そして、編み笠と煙管がトレードマークの三代目の姿に続いて、今年の福男たちが現れた。
今年は上忍師から、ダンディーな髭が特徴の猿飛アスマ上忍ことアスマ兄ちゃんと、木の葉の太陽、青い獣、そして憧れのマイト・ガイ上忍ことガイ先生!! そしてカカシ先生の三名だ。
三名の登場に、受付所内は途端につんざぐような黄色い歓声で埋め尽くされる。中には何故か野太い声も交じっていたが、まぁ気にしないでおこう。
面倒くせぇと言わんばかりのアスマ兄ちゃんとと、歓声に手を振って応えるガイ先生。カカシ先生はいつもの如く顔の大半を隠した覆面姿で、ぼんやりと周囲を見回していた。
「!! 間に合った!?」
「ほい、報告書確かに受け取りました。イルカ、帰りはあちらからどうぞ〜」
「きゃー、カカシ様ぁぁぁ、私、ぎりぎりまで任務頑張ったんですぅぅ!! ほら! イルカ、帰りはあっちよっっ」
憧れのガイ先生を目に捉え喜色がわいたのも束の間、受付同僚は窓を指さし、カカシへ熱い眼差しと声を送るマキは後ろ手で棒を突きつけ、窓の方へと押しやってきた。
「あー、イルカ。というわけで帰れ」
「受付さみぃから帰れ、な?」
「あぁぁぁぁぁ、裏切り者ぉぉぉ! 火の意志はどうした!! 同僚であり友人を見放す、裏切り者どもめぇぇぇ!!!」
Dランク任務の癖に行程考えていないお前が悪いとばっさり切られ、掃除道具であるほうきの柄を使って追い立てられる。
「ちゃうねん、ちゃうねん!! Dランクやなかった、Cランクやったねん! あの禿エロドスケベ親父の裏調査が間違ってたんやぁぁ、わては被害者やぁぁぁぁ!!」
「はいはい、似非、堺の国おつ。その件は後程じっくり精査してやっから、今は帰ろうなぁぁ」
「ばっちぃイルカは帰ろうなぁ」
「おら、諦めろや」
窓の桟に追い立てられ、辛うじて残るのは桟に踏ん張る足と、横枠を掴んでいる手だけだ。
体の中心を押されて、前向きでほとんど体は出ている状態だし、枠にしがみ付いている手は容赦なく箒の柄でつつかれている。
痛い、寒い、心が寒い!!
今年始まったばかりなのに、なんて不運と、泣く泣く同僚の箒つつき攻撃に根負けして儚く旅立とうとした時だった。
三代目ことじっちゃんがイベントの開催を宣言する言葉を遮る者が現れた。
「火影さま。この後、私的な用事があるんで、オレだけ先に福女選んでいいですか?」
唐突な言葉に、受付所内がにわかにざわつく。
発言したのはカカシ先生だった。
「緊急任務。オレ、文句も言わず遂行しましたよね。しかも、秘蔵ひ」
「ごほん、ごほん。まぁ、なんじゃ、カカシも忙しいからの。特別に認めてやるわい」
思わぬ横やりにじっちゃんはいい顔をしなかったが、カカシ先生は何やら不穏な空気をにじませ、唯一覗く目を笑いの形に引き絞ると、じっちゃんは目を逸らした。
編み笠を深くかぶり直し、誤魔化す素振りのじっちゃんへ、丁寧に頭を下げ、カカシ先生は一人、前に出る。
唐突な成り行きに、同僚たちの箒攻撃が一瞬止む。
もしかして粘っていれば、ガイ先生の選任も早まるかと窓の桟を掴む手に力を込めれば、我に返った同僚たちが箒攻撃を開始した。けど、イルカ、負けないもん!!
だというのに。
窓際に立っているせいで吹き込む風が悪臭を室内に運びこむせいか、傍にいた者たちも加勢してきた。
汚いものに触るのは嫌とばかりに足蹴りにしてくる里の仲間たちに、言い知れぬ悲しみと怒りを覚えていれば、外に放逐しようと背中に苛烈な蹴りを繰り出していたマキから黄色い声が響いた。
「え、やだ! 本当!?」
はしゃぐ声からしてカカシ先生の選任者が決まろうとしている最中なのだろう。
いまだカカシ先生の選定なのかと、絶望が胸に忍び寄る。
頭を箒の柄に押しやられ、蹴りや柄の突きが浴びされる中、私はふっと小さく笑った。
グッバイ、私の福男。そして、ハロー、地面。
精も根も尽き果てたと、ふっと力を抜き、羽ばたかんばかりに二階の受付所から外へダイブする寸前、背中を押していた力が消えると同時に、腹へ腕が回り中へと引きずられた。
直後に聞こえたのは、まさかの声だった。
「オレの福女は、うみのイルカだーよ」
力強い腕に支えられ、見上げれば、カカシ先生が私を見下ろしながら口布を下げている姿だった。
想像していなかった成り行きに頭が真っ白になる中、カカシ先生の顔が近づき、ついにはその顔が見えないほどまで近づいた。そして触れる温かく柔らかい感触と、口内に入ってきた熱いものに為す術もなく翻弄される。
ぎゃぁぁぁぁぁと周囲が叫ぶ騒々しい中、呼吸困難であっぷあっぷしていると、不意に唇が外された。
唾液で濡れたせいか、それとも先ほどの熱との対比か、唇がやけにひんやりしている。
目を白黒させていまだ腰を掴まれている状態で、カカシ先生を見れば、カカシ先生はとても嬉しそうに笑って、私の首筋に鼻を寄せて吸い込むなり、チュッと小さな音を立てた。
チカっとした痛みに我に返って、いや、いやいやいやいやいやと震える声を上げて引っ付くカカシ先生を離そうと頭に手を掛け押しやる。だけど、カカシ先生はびくともせずに、いまだにすーはすーはと息を吸い込んでいるではないか!! ぎゃぁぁぁ!!
「ちょ、止めて、止めてください!! 私、風呂入ってません着替えもしてないし臭いしばい菌まみれで汚いぃぃぃぃっぃ!!!」
うわぁぁあんと泣きながら叫べば、カカシ先生はそんなことと小さく笑って言ってのけた。
「イルカ先生の体臭が凝縮してるってことでショ? 惚れた女のたまんない香りってことでしょーが。しっかし、ようやく素直になったーね。鈍すぎるからもう駄目かって諦めそうになっちゃったよ。今年は、いい年になりそうだーよ。これから、よろしくね」
姫始めにはちょっと遅いけどいいよねと、再び周囲に絶叫をもたらす言葉を吐き出しながら、カカシ先生は人一倍声をあげているじっちゃんに向かって頭を下げた。
「あけまして、おめでとうございます。本年からはイルカともどもよろしくお願いしまーすね。それでは、ドロン」
あばばばばばと驚愕に打ち震える私を差し置き、カカシ先生は流暢な手つきで印を組むと、煙を吐き出し私ともども待機所から離脱した。
その後、私の身に降りかかった数々の出来事は、黒歴史として私の記憶に封印されることとなった。
おわり。
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時期外れ過ぎるアップです…。
そのうちカカシ視点も書きたいです。はい。
追記:一人称に直しました。三人称から書き始めていたので、直し損ねがあったんです…。
福男