身震いが走って、思わず肩を抱いた。
何故だか肩がスースーする。
春とはいえまだ朝方は冷え込む。窓から入る光量と自分の体内時計具合から見て、あと2時間くらいは寝ていられる時間帯だ。
目を開けると眠気が去りそうで、布団の中に潜り込もうとして体が動かないのに気付いた。
原因が分からず、しぶしぶ目を開ける。
うすぼんやりと見えるのは、見知らぬ壁の色。
自分の部屋の壁は木の板で、目の前にあるのはまっ白い壁だ。
これはまだ夢の中なのかなと思いつつ、白い壁を見つめていれば、背後で身じろぐ気配がした。
「……起きたの?」
ぞくりとするような色気のある掠れた声が耳をくすぐった。
振りかえろうとして、ぎゅっと体を抱きこまれる。
そういえば、何かがずっと背中に張り付いていたなとぼんやり思う。だから体が動かなかったのかと回らない頭で考えていれば、目元に何かが降ってきた。



それはちゅっと小さな音を残して去っていく。
夢の中だからなのか、やけに重く感じる体を動かして、去っていった気配を追って視線を動かせば、そこにはとても奇麗な人がいた。
朝の白い光を受けて輝く銀髪に、目鼻立ちが整った顔。染み一つ見当たらない、つややかな白磁の肌。目の色が片方は青で、もう片方は縦に大きな傷があったけどとても奇麗な赤色をしていた。
「…天使さまだー」
オッドアイの美形の天使さまに抱きしめられて起きる夢を見るなんて、私も夢見る乙女だったんだなぁと、ふにゃりと笑えば、天使さまも小さく笑った。
「可愛いね、イルカ先生。昨日も違った意味で可愛かったけど……。あんた、いいよ。久々に、はまりそうだわ」
髪に手を差し込まれ、再び落ちてきた柔らかい感触を受けて、ぽやっとしたのも束の間、ひやりとした危機感が脳裏に走った。
あれ? 今、何て言った? 今、私のことを何て……。



徐々に覚醒していく頭の中で、目の前の天使さまと合致する人物が思い浮かぶ。
髪は銀色。瞳は青と赤。耳に馴染む低い声。その人物といえば……。
だらだらと嫌な汗が噴き出る。
このままでいては碌でもないことが判明すると分かっているのに、私は蛇に睨まれた蛙のように身動き一つできなかった。
もしや。もしや、この天使さまは……。
見つめることしかできない私を見つめ、天使さまは妖艶に微笑むと、悪魔のごとき口説き文句を口にした。




「ねぇ、オレと付き合わない? 写輪眼の女になれる、絶好の機会だーよ」




写輪眼。
はたけカカシ。
ナルトたちの上忍師、カカシ先生!!



今まで築いてきたものがガラガラと崩れていく音を聞きながら、私は絶叫した。
「いにゃぁぁぁぁあぁぁぁっぁ!!!!!!」






――父ちゃん、母ちゃん。
私、うみのイルカは、一夜の過ちを犯してしまいました。












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ブログにあげていた小説を移動しました! ……こちらは鈍足更新となります。
こちらの女イルカ先生は、天然ボケ、一直線明後日方向思考です!!
カカシ先生は女たらし設定ですよ〜!





ひみつ序章