翠玉 8

「……私、あんたから手を引くわ」
昼休憩時。
アカデミーの職員室で、珍しく手作り弁当を広げたマキが、たこさんウィンナーに箸を突き立てた。
「え?! な、なんで!!」
今朝、出かけ間際に「お昼に食べてください」ともらったお弁当に箸をつけるのも忘れ、私は衝撃を受ける。
昨日と言っていることが違うじゃないッッ。
マキが何とも微妙な顔色になり、ちろりと私の隣を見やる。そこには、覆面をつけたままもぐもぐとお弁当を食べている、はたけ上忍の姿があった。
「イルカさん、これ、どう? 自分ではよくできたと思うんだけど」
そう言って、はたけ上忍は自分の弁当箱から、レンコンの肉団子を一つ取り、私の口元へと運んでくれた。
遠慮するのも失礼なので、かぷりとかぶりつけば、タレがない分、身にしっかりと味のついた肉団子の風味とレンコンのシャキシャキ感がお口に広がった。
「~~っ、おいしいです! ここ最近、タレのついた肉団子しか食べたことなかったんですけど、あっさりしているのに味がしっかりしていて、本当においしいですっ」
ぷるぷると震えながら、肉団子のうま味に陶酔していれば、はたけ上忍は良かったと笑い、箸をくわえた。
肉団子は私が食べたというのに、はたけ上忍ってばお茶目っとにやけていれば、隣のマキがぶつぶつと暗い声で何かを罵っていた。
「何よ、この無自覚バカップルは」とか何とか、誰のことを言っているのだろうか。



「話戻るけど、マキ! どうして応援してくれないのっ。昨日はしてくれるって言ったじゃないっっ」
あの言葉は嘘なのかと机を叩けば、荒んだ目がこちらに向いた。
「……あんたねぇ…。昨日どこに泊まって、今日どこから出勤したのか言ってみなさいよ」
突然の言葉に、瞬きを繰り返す。マキもいたのだから知っているだろうに…。
「いいから、言ってみなさい。今すぐ言いなさい、ほら、早くッッ」
ヒートするマキが不思議で仕方ない。このまま放っておいたら、脳卒中をおこしそうだ。
「はたけ上忍の家にお邪魔して、そのまま泊まって、アカデミーにはそこから直接来た」
私の言葉に周りがざわめき始める。
いつもならば皆、食堂で昼ご飯を食べるのだが、今日ははたけ上忍がいらっしゃっているためか、皆、手にパンやおにぎりを握りしめ、自分の机で食べている。
視線と耳はこちらに向いていることは分かるのだが、誰一人として近寄ろうとはしなかった。
あれだけはたけ上忍、はたけ上忍と言っていたのに、おかしな人たちだ。
でも、私にとっては都合がいい。何せ、はたけ上忍と隣合って昼食を食べられるのだから。
一緒に食事をすることが嬉しくて、にっこり笑いかければ、気付いたはたけ上忍も微笑み返してくれた。



「あぁぁぁぁ!! バカバカしいッ。とっととくっつくなり結婚するなり、籍入るなり、子供作るなりしてよねっ! ったく周りは迷惑だってぇのっ」
ぐさぐさと弁当のおかずに箸を突き立て、おいしそうなハンバーグやプチトマトが無惨な姿に変わっていく。
あんな無体な目に遭わせるくらいなら、私のお腹に入れたいと見つめていれば、真横から伸びてきた手が頬に触れるなり、ゆっくりと顔の向きを変えられた。
止まった先には、切なげに眉根を寄せ、目を潤ませたはたけ上忍がいる。
「イルカさん、よそ見しないで」
  ずっきゅぅぅぅぅぅんっっ
周囲のどよめきをバックに、ずごーんとどでかい一発が胸に叩き込まれる。
衝撃を叩き込まれた胸をとっさに掴むが、やり過ごすことはできない。甘酸っぱい衝動にうんうん唸っていれば、口元にプチトマトを押し当てられた。
「はい、あーん」
長い指先で抓んでいるプチトマトをゆっくりと私の口に押し込む。
覆面をしていても美人は美人だ。唯一覗く目元ににっこりと微笑みかけられ、催眠術のように口を開けてしまった。
「はい、口閉じて」
言われるままに口を閉じれば、プチトマトを奥に押し込んでくれたはたけ上忍の指先まで口の中に入れてしまった。
自分のトロさにびっくりして、ごめんなさいと見上げれば、はたけ上忍は大して気にもせず、噛むように促した。
「いいよ。このまま噛んでも。――でも、ゆっくりやさしくね」
頬に手を当てられたまま、はたけ上忍が耳元で囁く。吐息が耳に触れて、首筋に変な電気が走った。
「ん」
妙にこそばゆくて首を竦めれば、はたけ上忍は艶っぽく笑った。
「はい。じゃ、次はカブの煮付けね。ちょっと大きく作り過ぎちゃったから、口を大きく開けて」
食んでいた口から指先を取り返したはたけ上忍は、餡かけのカブを箸で抓んだ。
ここまできて、自分の弁当には手をつけず、はたけ上忍の弁当ばかりをいただいてしまっていることに気付いた。このままでははたけ上忍の弁当を食い尽してしまう!!
「はたけ上忍、私、自分で」
「あ、イルカさん、早く。落ちちゃう、落ちちゃうから」
「あ、あ、あ!」
よく煮込まれたそれは柔らかく、箸で抓んだ先から崩れ落ちてしまいそうだった。
慌てて口を開ければ、ついと顎先を上に向かされ、そのまま口の中に入れてくれた。けれど、私の口を閉じるタイミングが悪かったのか、カブに乗っていた餡が唇からはみ出て垂れてしまった。
「ん、ん」
落っこちそうな餡を手で押さえようとすれば、それより早くはたけ上忍の人差し指が掬ってくれる。
「動かないで」
身じろぐ私の顎先を掴んだまま、はたけ上忍の人差し指が唇をくすぐる。口の中のカブはとろけてもうなくなっている。それを知っているのか、はたけ上忍は指先で開けてと唇を小さく引っ掻いた。
作り手からしたら、餡も残さずに食べてもらいたいのだろう。
促されるまま唇を開ければ、するりと餡をまとった指先が入ってきた。
舌に餡をこすりつけるように触れる指に吸いついていれば、はたけ上忍が聞いてくる。
「おいしい? イルカさん」
真正面で熱心にこちらを見ているはたけ上忍に気付き、私はにっこり笑う。
「おいひーれふよ」
はたけ上忍の指が口に入ったままだったから変な言葉になってしまったけど、十分伝わったはずだ。
私の言葉にはたけ上忍は声付きで笑ってくれたのだから。



『いやぁぁぁぁぁ!!!』
『うおぉぉぉぉおぉぉ!!!』
唇の端に垂れた餡をはたけ上忍がなおも拭ってくれていれば、周囲から苦悶の声が湧きあがった。
どうしたのかと周囲を見回そうとして、隣のマキに窘められた。
「イルカ。アンタはとにかくはたけ上忍との昼食を楽しみなさい。せっかく作ってくださったのに、よそ見したらはたけ上忍に失礼でしょッッ」
顔を土気色にして助言をくれたマキに、それもそうだと頷く。
自分のお弁当にようやく箸を入れて、ありがとうの感謝を込めてはたけ上忍を見詰めれば、はたけ上忍は人差し指をぺろりと舐めていた。
私の餡がまだついていたんだなと、申し訳なく思ってしまう。手が拭ける何かを探すが、ハンカチは持っていても、おしぼりはない。
ハンカチを濡らして渡そうかと腰を上げれば、はたけ上忍は私の行動を知っているかのように首を振った。
「いりませんよ、イルカさん。手に触れて味わい、舌でも味わう。それと同じですよ」
一瞬言われたことが理解できなかったが、おにぎりを手で食べるのがおいしいと言っていることと同じかなと見当付けて、無理矢理納得させた。
「あ、そうだ。今度はおにぎり作ってきますよ。イルカさん、おにぎり好きですもんね」
宴会の時おにぎりを頬張っていてくれたことを覚えてくれていたらしい。
「はい。ぜひ、お願いします」
申し出に甘えて、笑顔で頷く。
おにぎりは美味しいけれど、作るのにはそれなりの手間がかかる。でも、はたけ上忍は嫌な顔は一切せずに、にこにこと嬉しそうな顔のままだ。
はたけ上忍と出会って良かったなーと心底思う。金欠で今日のご飯さえ悩む私のためにお弁当を作ってくれるばかりか、私の好きな物を入れようと心を砕いてくれるなんて。
でも、だからこそ、私は己の身を嘆かずにはいられない。
ツキンと痛む胸を押さえ、ため息を吐いた。



「……なんで私、女だったんだろうなぁ」
ぽつりと呟けば、隣のマキはおろか、職員室にいる同僚たちがガタガタと立ち上がり、私に視線を向けるなり叫んだ。
『はぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ???!!』



突然の声にびっくりするばかりだ。
何事かとおろおろしていると、マキを筆頭に同僚たちが詰めかけてきた。
「ちょっとイルカー! あんた、ここまでされて、なんっで気付かない訳?! そればかりか、とんだ頓珍漢な発言しくさって、あんた、何が気に入らないのぉぉぉぉッッ」
気炎をあげるマキに、身が竦む。
背後の気配が動いた気がしたが、それより先にマキは後方に視線を飛ばし、きっぱり言い放った。
「はたけ上忍。アカデミー職員一同、以後、イルカに近付く輩がいれば逐一報告&はたけ上忍不在時のイルカの監視を徹底しますので、今だけはどうか口を挟まないでいただけませんか?!」
マキの後ろでは涙目の同僚たちが、私の背後に視線を飛ばしている。
一体何が起きているのだと振り返ろうとして、背後から抱きしめられた。
「は、はたけ上忍?」
頭を顎下で押さえられ、両腕を上から押さえられる。がっちりと拘束される体勢に何が起きたと動揺していれば、頭の上から朗らかな声が落ちてきた。
「ごめーんね、イルカさん。俺、ちょっと寒くなっちゃって。イルカさん、あったかいからちょっと温めさせて」
胸の前で交差している腕に触れれば、確かに冷たい気がする。
そういえば、ナルトが寒い寒いと震えていた時も抱きしめてやったら、嬉しそうに温かいって笑っていたっけ。
懐かしい思い出に自然と顔がほころぶ。
そういうことならばと少しでも温かくなるように、はたけ上忍の腕をさすった。
「――ありがとう、イルカさん」
きゅっと一度きつく抱きしめられ、くすぐったくて笑い声が零れ出た。



「……お話、続けてもよろしいですか?」
苦虫を噛み潰したようなマキの顔に気付き、私は口を閉じる。まずいまずい、マキがマジギレしたら、後が厄介だ。
話の邪魔にならないように口を閉じていると、はたけ上忍が小さく笑った。
「いとの中忍でしたっけ? いいところ突くけど、まだ足りないかな。受付はどうにかなんないの?」
一瞬我が耳を疑った。
はたけ上忍の声がいつもと違う。気になって顔を見ようとしたが、身じろいでも全く動けなかった。
仕方なく、同僚たちを引き連れるかのように、はたけ上忍と対しているマキを見る。
マキは任務時でも滅多に見せないような真剣な顔をして、後ろの同僚とアイコンタクトを走らせていた。
「……どうにかできそうです。アカデミーの中で受付を兼任している者がいますので、シフトを動かせばカバーできます」
「上出来。いいでショ。あんたの条件飲んであげるけど、時間は5分。それとこの一度きりだからーね。……で、俺はここにいない方がいい?」
「――席を外していただけますか?」
マキの言葉に、はたけ上忍が鼻で笑った。
「……余計な真似したら、許さないよ。それだけは覚えといてーね、いとの中忍」
びくりとマキの体が跳ねるのを見て、不安が過ぎる。大丈夫かと声をかける直前で、体を覆っていた腕が緩んだ。
もう寒くなくなったのかなと見上げれば、はたけ上忍はにっこりと笑って、私の頭に頬を擦りつけた。
「ありがとう、イルカさん。おかげで温かくなりました。俺、ちょっとトイレに行ってきますので、ここで待っていてくださいね」
そう断って、席を立つ。
いってらっしゃいと見送れば、職員室を出る直前で手を振ってくれた。それに手を振り返し、私は安堵の息を出す。マキと話していた時のはたけ上忍は何だか恐い気配がしたけど、気のせいだったようだ。



「………寿命が縮む…」
「マキ、お前、すげーよッ! おれ、ちびるかと思ったッッ」
「マキさん、私、あなたを尊敬しますわッッ」
眉根を押さえて、椅子に深く腰掛けるマキを、周囲が褒め称える。一体、何が起きたんだろう。
しばらくマキを称賛する言葉で職員室は賑わっていたが、マキが軽く手を払うなり、途端に静まり返った。
その姿に、マキはいずれこのアカデミーの主任になるのだと第六感が私に告げる。
「イルカ……」
「は、はい!」
次期、アカデミー主任の呼びかけに、自然と背筋が伸びる。
何を言われるのかとドキドキしていれば、マキはふっかーいため息を吐いた。
「アンタのさっきの『なんで私、女だったんだろうな』と諦めの言葉を吐くに至ったあんたの心情を、余すことなく私たちに言いなさい」
「……は?」
マキの考えていることが分からなかった。
だが、マキはいいから話せと目を血走らせて迫る。後ろの同僚たちもマキと同様に恐ろしい顔をして迫るものだから、異様すぎて怖い。
一斉に睨みつけられ、私は己の身を守るためにも口を開いた。
「だ、だって、はたけ上忍をお嫁さんにもらえないんだもん!!」
『はぁぁぁあ?』
「駄目よ、みんな! イルカの発言にいちいち構っていたら、5分なんてあっという間よッッ」
マキの言葉に、同僚たちは確かにと大きく頷いた。「あと4分」とストップウォッチを片手にした同僚が時間を叫ぶ。
「まどろっこしい」とマキは叫び、椅子に座る私の両肩に手を乗せ、顔を近付ける。その周りを同僚たちが囲み、私を見下ろしていた。
一体何の取り調べだと、汗を掻いていると、マキが口火を切る。
「だーかーら! 普通考えれば、はたけ上忍は男、あんたは女。めでたくカップル成立じゃない。はたけ上忍に嫁としてもらってもらえばいいのよっ」
皆がそうだと一斉に頷く姿に心がぐらつきそうになるが、私だって負けてはいられない。
「私の夢は自分の生家で愛する人と暮らすことで、その際には是が非でもうみのの姓を残さなきゃなんないのッッ」
「だったら、婿にもらえばいいでしょ?! どーして物事を難しく考えるのよっ。大人しく、はたけ上忍を婿にもらって、とっとと結婚して、傍迷惑な物騒な気配を撒き散らすのをやめてもらってッ」
私たちを心労から解放してと机を叩かれた。叩かれたってこっちが困るのだ。
「だーかーら、お婿さんでも駄目なの! はたけ上忍ほどのお人をもらうには、私はあくまで旦那の位置にいないといけないのッッ」
なんでだと噛みつくマキに、びっと人差し指を向ける。



「はたけ上忍はね。炊事洗濯、裁縫、掃除、ベッドメイキングから服の畳み方から、家事の全てを完璧にこなすのッ。全て、完璧によ! おまけに気配り、心遣い、生け花、茶道、ありとあらゆる教養をも兼ね備えた、高嶺の花ッッ」
ぐわっと目を見開けば、マキが一歩後ずさった。
「ま、まさか……。あんたがはたけ上忍を『父ちゃん』と言い表したのは…」
今まで強気だった顔に、一筋の汗が流れ落ちる。
そこでようやく気付いたかと私はため息を吐いた。
「そう…。はたけ上忍は、今まで私が会った誰よりもクノイチとして優れている。キングオブクノイチ、クィーンと言っても過言じゃない…」
ぴしゃーんと雷に打たれたような顔をするマキと同僚たち。
「……キングオブクノイチって何だ?」
「や、知らねーぞ」
ざわつき始めた男どもを眺め、知らないのは無理はないと吐息を吐く。



クノイチだけに伝わる伝説の人物。
その者は、あらゆる家事と教養を身につけ、お茶の一杯で男、いや女をも陥落せしめる、キングオブクノイチ、又、別の名をクィーン。
何を隠そう、私の父ちゃんが初代クィーン、その人だったのだ!!



元暗部で、切り込み隊長として名を馳せた上忍の母ちゃんは言った。
自分は女として色々足りないものがいっぱいあったけど、それが逆に良かったと。
そのおかげで、最高の嫁さんを、クィーンをもらえたんだから、と綺麗に笑った母ちゃんの幸せそうな笑顔を私は一度たりとも忘れた事はない。



「クィーンの手料理を食べ、クィーンの家事を間近で見ていた、その子供である私が認める…。はたけ上忍は、二代目クィーンになり得る人物……!!」
周囲から呻き声が零れ出た。
ぺたんぺたんと、床に崩れ落ちる音が聞こえる。それは目の前にいるマキも例外ではない。
ぽっかーんと口を開けて間抜け面を晒している男たちへ私はニヒルな笑みを浮かべた。
クノイチではない、お前たちには分かるまい。
クノイチとして生きようと思ったそのときから、誰よりも女として完成度を高めてきた日々。
それは一重に、クノイチを極め、そしていつの日か、愛する人のお嫁さんになるため……。



うっっと涙にくれる私に、横から突っ込まれる。
「嘘だー! お前ら、そりゃ嘘だろうッ」
「男を不能にするような薬作っているお前らが、そんな可愛い最終目標立てるわきゃねーだろッッ。散々ぱら金、地位、ブランドって言ってる癖にッッ」
「嘘付きー! 女はみんな、嘘付きだぁぁっ」
ぎゃーぎゃーわめく男どもを無視し、私は項垂れるマキの肩に手を置く。
「マキ、私の気持ち、分かった?」
マキはゆっくり顔を上げるなり、「イルカ」と私の名を呼び、その瞳に涙を浮かべた。
「ごめんなさい…私……」
「いいのよ、マキ。私も母ちゃんみたく、今から頑張ればいいだけの話なんだから」
元暗部な母ちゃんはべらぼうに強かった。
熊を素手の一撃で倒したのは序の口で、火影さまの命を狙いに来た、ビンゴブックに載る他里の忍びをじゃがいもが入ったスーパーの買い物袋で撃退したり、ゴキブリを一匹殺すために死の森の一角を燃やし尽くしたり、致死率99%の毒を飲んでも死ななかったり、腕が吹っ飛ぶような結界の解除を「面倒くさい」と力技で破ったりと、母ちゃんは武勇伝の多い人でもあった。



してはいけないことをすると、「イルカ、吊るすわよ」と三日三晩吊るされて生死をさ迷ったことを思いだしていれば、マキが手で口を覆い、呻いた。
「イルカ…、あんたがシャチさんを目指すには色々と荷が重すぎるわ……」
「……シャチさんか…。あの人、鬼だったよな」
「ガキの頃、本気で『殺すぞ』って言われた時は、俺、マジで死んだと思った……」
アカデミー時代同期だった同僚たちの言葉に、ふふふと私は笑うしかない。



「はたけ上忍と添い遂げようと思うなら、頑張るしかないじゃない」
「でもねぇ」「しかしなぁ」と唸る同僚たちに、私は皆が忘れている肝心なことを告げた。



「だって、私、暗部の女だし。女としての道は残されてないもの」



『あ』という周囲の声に混じって、「5分経ちました」と時間を告げる声がした。










戻る/ 9

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……ここのカカシ先生も変態でした…orz セクハラ……!!
そして捏造の嵐だぁぁぁぁ!!