幕間 3
雨は止み、厚い雲は流れ、地表に太陽の光が届く。
光が差した砂の地は、緑の大地へとその姿を変えていた。
砂だらけだった土地には緑が芽吹き、あちらこちらで花を咲かせ、実を結ぶ。
苛烈なまでに強い日差しはその形を潜め、辺りを包み込むように照らしていた。
愛しい苗木たちは、見た目にもにぎやかな子供たちの姿に変わっていた。
緑が続く草原を、我先にと駆けていく姿は微笑ましくも、どこか不安を覚えた。
目に痛いほどの緑が生える世界。
砂だらけの世界を見ていた目にはあまりにまぶしく、戸惑いを覚える。
草原の果てを見ようと駆ける子供たちの前に、彼女が現れた。三人の子供たちの体を抱き止めるように、両腕を広げている。
けれど、子供たちはその腕をすり抜け、駆けていくだろう。
昔のオレや友がそうだったように、つなぎ止めることはできないと思えた。
だが、子供たちは、こちらの意に反して、その身をやすやすと彼女の腕へと飛び込ませた。
彼女が笑う。幸せそうに笑う。
それにつられて、子供たちも笑った。
彼女と子供たちの絆の深さに、ほんの少し胸が焼き付く。
呆然と見やるオレに気付いたのか、彼女は顔を向けるなり、オレの顔を見て吹き出した。
途端に子供たちも眼差しを向け、口々に喋り始める。
一歩、一歩、窺うように近づくオレを、迎える子供たちと彼女。
始めから用意されていたように、オレの場所はそこにあった。
再び駆け出す子供たち。
それを見送る俺と彼女。
止めたい気持ちはもう沸いてこない。
子供たちの居場所は、確かにここにあるのだから。
遠く離れていても、またここに帰ってくるのだと知ったから。
子供たちの後姿を見送る彼女の隣で、オレは常備している本を読んだ振りをする。
二人きりの空気が慣れない。
どこか照れ恥ずかしくて顔を背けるオレに、彼女は無造作に手を伸ばしてきた。
顔を包む、温かい手。
驚くオレに、彼女は快活な笑みを向けるなり、頭に手を乗せた。
そのままぐしゃりと頭を掻き回せられ、遠い懐かしい記憶が蘇る。
もう二度と会うことはないと諦めていた。
失くしたとばかり思った手は、オレの不安を笑い飛ばすように、力強く存在していた。
そこで彼女の稀有なる才能を見る。
全てを受け入れる。
何もかも、呪われた子でさえも受け入れた。
彼女はありのままに受け止め、全てを内包する。
この世界において、彼女の存在は稀だ。
だからこそ、あの翁は迷ったのだろうか?
彼女の元から立ち去る最中、ふとそんなことを考えた。
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