手を繋いで 18

「いっただきまーすv」
目前のお重箱に手を合わせて一礼し、持ってきてくれたカカシにも感謝の笑みを向ける。
「い、いいから早く食べなさいよッ。授業控えてるんでショ」
ぷいと額宛で隠れた顔を向け、カカシはぶっきらぼうに言い放つ。
「ご心配ありがとうございます。でも、今日は二時限目からなんで、時間は大丈夫ですよ〜」
鼻歌を歌いつつ、お重をずらしていく。



三重のお重箱は、昔、両親が健在だった頃、よく使っていた代物だ。外側は黒く、内側は赤く塗られ、蓋の隅には桜の花弁があしらわれている。
古いそれは所々色が剥げ、茶色の地肌が見えていたが、まだまだ使える。
奥深くに埋もれていたそれを、よく見つけたなと感心しつつ、蓋を開ける。
三重のそれにはおにぎり、おかず、デザートと一段ごとに分かれた豪勢なものだった。配色も美しく並んだお弁当に、歓声が突いて出る。
あぁ、こんなに豪勢でぜいたくな朝食は生まれて初めてだ。
まずどれを食べようかとしばし迷ったが、初めはやっぱりこれでしょうと、三角おにぎりに手を伸ばして、横から手を叩かれた。
「っっ?!」
まさかのお預けと戦慄する私に、カカシはホルダーから筒を取り出し、先を向けてくる。
「…手、洗ってないでショ。これで拭きなさいよ」
会議を終え、空腹できゅーきゅー鳴る腹を抱えて職員室に戻る道すがら、カカシは突然廊下に出現するなり、拉致るように私を捕まえるや、瞬身でアカデミーの屋上にやってきた。
端から見れば、私は突然消えたように見えたであろう。
だから、当然、手を洗っていない。つぅかそんな暇もなかった。



じっと自分の手を見るが、そう汚れてはいない。
「……オレの飯食いたいなら、最低限のマナーは守ってもらうよ」
内心面倒くせぇと思っていたことが伝わったのか、カカシはやけに鋭い眼光でこちらを見据えている。
「は、はたけ上忍こわーいっ。使いますよ。遠慮なく使わせていただきます」
筒上部の蓋をねじり、開ける。中には丸めた濡れミニタオルが入っていた。
上忍なのに手拭き専用筒まで持っているとは、こいつ…ただ者じゃねぇ…!!
恋のセンサーがビビと危険サイレンを鳴らしてくる。
こういう家庭的な一面が男のツボだということを承知している男を、改めて恐ろしい奴だと再認識する。
帰ったらカカシに対抗するべく手拭きセットを用意するかと手を拭いていれば、カカシはホルダーからもう一つ筒を出すなり、自分の手を拭き始めた。
……あれ?



きょとんと見詰めていれば、カカシは口布を下げ、訝しげな声を発した。
「……何よ」
そして、そのままお重のおにぎりを掴むなり、自分の口元に運ぶ。
その様にどきどきと胸が高鳴る。思ってもみなかったが、もしかして…。
「……はたけ、じょーにん……も、一緒に食べるんですか?」
ちらりと上目づかいで窺えば、カカシは視線を逸らして言い放つ。
「悪い? ちょっとした気分転換もかねてだーよ」
作ってきたのはオレだと眉根を寄せるカカシに、私はぐわわとお腹の底から嬉しくなった。
ぶんぶんと首を振って、もう一度いただきますと声をかけ、おにぎりを掴む。
ぱくりと頬張れば、ほのかな塩味とお米の甘味のコンビネーションに顔がとろける。
「おいひーへす」
もぐもぐと噛みながら笑う。
「あっそ」とつれない返事を返されたが、そんなことは全く気にならなかった。
朝食を誰かと共にするなんて久しくなかったから嬉しかった。それも手作りの朝ごはん。
カカシは箸も準備していたけど、手でも食べられるようにできているそれに、懐かしい思い出を刺激され、胸が詰まった。



爪楊枝に刺さっているたこさんウィンナーとキュウリ。ミートボール。色が薄いけどしっかりと下味のついた煮物。レタスに包まれたポテトサラダに、赤いプチトマト。ナスとひき肉の挟み揚げ。甘い厚焼き卵。たこときゅうりの酢の物。それから、魚のほぐした身が入った三角おにぎり。梅干し入りのおにぎり。白飯のおにぎり。あとは杏仁豆腐と果物のデザート。



『イルカ、おいしいか?』
『いっぱい食べなきゃダメよ?』
アカデミーの運動会。
そう言って、父ちゃんと母ちゃんと囲んだお重のお弁当箱。
あの頃と同じようにいっぱい詰まった手作りのおかずとおにぎり。



「っ……おい、ひ…」
おにぎりを口に運びながら、ツンと鼻に走った痛みに顔を歪めた。
きらきらとした楽しい懐かしい思い出たち。
それと重なるものが目前に現れるとは思いもしなかった。
嬉しくて懐かしくて、そして決して消えない小さな喪失感を与えてくる目前のそれと、一緒にお重をつつける相手。
ずるいなぁと心の中で呟く。
なんて不意打ちだ。



食べることだけに集中していたのに、カカシの奴が「野菜も食べなさいよ」とレタスに包まれたサラダを握らせるから。
あの日の父ちゃんと同じ行動するから、我慢していたものが一気に瞳へ広がった。
「っひっ、はらへひょーひんが、泣かしたぁあ」
押さえ切れない感情に耐えかね、ぼたぼた涙を落としながら、口の中の物を咀嚼しつつカカシを詰った。
ずるい。
カカシはずるい!
「っな!! 何泣いてんの?! 何、人聞きの悪いこと言っちゃってんの?! あ、アアアアアンタが勝手に泣きだしたんでショ!! み、味噌汁でも飲んで落ち着きなさいよッ。中忍のくせにみっともないッッ」
ひぐひぐと肩を震わせ、感情を押さえようとしていれば、やけに慌ただしくカカシが傍らのポットの蓋に中身を注ぎ、私に無理矢理持たせた。
ふわりと立ち上る温かい空気と、味噌のイイ匂い。
思い出したのは、懐かしい実家の朝の空気。
思い出のダブルコンボに、弱っていた私の涙腺は更に崩壊した。



「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、はだげじょーにんが泣かずぅぅぅぅぅ」
「ちょ、なッッ」
おいおい声を上げて泣いた。
カカシと私しかいない屋上で、私はわめき散らして泣いた。
切なくて、切なくて、帰り方が分からない迷子のように大泣きした。
大人の癖にみっともない。
火がついたように泣きながら、冷静な自分でも思ったのに、カカシは中忍の癖にとはいうけど、そういう言葉は一切言ってこなかった。
その代わりに。



「あぁぁ、もー! いい加減泣き止まないと、コレ下げるよ?!」
鶴の一声だった。



途端に私の切ない気持ちはぶっ飛び、黙々と食事に専念する。
うまい、おいしい。激うまッ!! お空に輝く天の川ごときキラメキを放つお弁当の中のお弁当ッ、キングオブお弁当とはこのことやぁぁッ!!
「………アンタ…、ほんとーにイイ性格してんね…」
無心に食事を続ける私の傍らで、カカシは深いため息を吐いた。



その後、カカシとおかずとおにぎりを争い奪いながら、お重の二と三の段を見事制覇した。
世の春を満喫しているお腹を叩き、私はカカシへ笑顔を向ける。
「おいしかったです。はたけ上忍って、料理お上手なんですね。これならいつでもお嫁さんに行けるじゃないですか、羨ましい〜」
だからガイ先生以外のとこにさっさと嫁いでくださいと、心の中で思っていたことが伝わったのか、カカシは非常に嫌な表情を前面に押し出した。
「嫁になるのはアンタでしょーが。普通これくらい出来て当たり前だーよ。…アンタ、仮にもくのいちなんだから料理は必須でショ」
空になったお重を重ね、デザート用の器とスプーンを出すカカシのイイ嫁振りに心の中で親指を立てながら、私はニヒルに笑う。
「ふっ。くのいちではない、はたけ上忍は知らなかった事実でしょうが…。料理下手の更に上を行く料理下手には、特別カリキュラムが用意されているんですよ」
何それと不審な目を向けるカカシに、私は言った。
「その名も、『世の中には無駄という言葉もある。お前には別の道があるじゃないかカリキュラム』です! 料理科目が必須でない男子と共に体術訓練に励むんですッ」
「……それって単に匙投げ出されたんじゃ……」
ジト目でこちらに視線を向けるカカシに、首を竦める。



「まぁ、そうとも言いますが、代わりにいいことありましたよー。くのいちの中で私一人だけ料理参加せずに汗臭い男どもに混じって体術訓練していたせいか、女の子たちが実習で作った料理くれるんですよっ。いや〜役得でしたねー。おまけに基本、男だけ参加する科目だから、くのいちに仕掛けられた時の防御方法とか、男視点で見る体術やら忍術やら学べることができて、今思えばいい経験でした」
さすがに金的蹴られた時の痛みは理解できませんでしたがと言えば、カカシは頭を押さえていた。
どうしたと視線で窺えば、カカシは引きつった顔で聞いてきた。
「……ぐ、具体的に言ってどういうこと習ったの?」
カカシの言葉に、んーと真っ青に広がる空を見上げ、当時を振り返る。
確か、そうだな…。
「んー、急所の防御法が多かったですね。あと、それを鍛える訓練とか」
クラスメイトの男子が自分の一物に重りをつけて鍛えるのを見た時は笑っちゃいましたと、けらけら笑えば、カカシは何とも言えない表情を浮かべた。
「………オレは、あんたと同じクラスメートだった男たちに同情しますよ…」
「? なんでですか?」
分からなければいいとカカシは顔を覆うと、器を手渡してきた。
わー、次はデザートだ。デザートっ。
るんるんと鼻歌を歌いながら、盛り付け用のスプーンで杏仁豆腐と果物を掬っていれば、突如、手元に影が差した。



この絶品デザートを狙っての刺客かと一瞬、殺気が漏れ出たが、それもすぐ収まる。
くるんと空中で一回転し、音もなく軽やかに下りるなり、右手を45度に広げ、左の親指と人差し指で丸い小窓を作り、そこから覗き込みつつ、片足で立つ鶴の如き、気品溢れるポーズを取ったのは、
「ガイ先生ッッッ!!!!」
きゃーと口元を握った両拳で隠し、私はその名を呼ぶ。
「おう、イルカ! 元気か?! マイライヴァールの気配を求め飛んできたが、ここで弁当とは青春だなぁ」
滂沱の涙を流し、ぐっと親指を向けるガイ先生に、私の小鳩のような胸は早鐘を打ち始める。
「ガ、ガイ先生もよろし……」
残ったデザートを見詰め、私は言葉を止める。
お重にたっぷりあるデザートと、私が掬って取った器の中に小盛りになった杏仁豆腐と果物たち。
「ければ、どうぞv」
そっと自分用に持った器を滑らせ、ガイ先生に渡した。
「ありがとう」とかっこいい笑顔で口に運ぶそれをうっとりと見詰めつつ、お重のデザートは私の背後にこっそり隠す。
「ちょっと! あんた、それ独り占めにする気?!」
途端に上がった横からの声に、私は失敬なとお重を胸に抱える。
「ちょ、何、言いがかりつけてるんですカ?! そんな意地汚い真似を私がすると思ってるのですか、はたけ上忍はッッ」
ひどいと横座りして悲嘆にくれる私に、カカシは聞く耳持たず襲いかかってきた。
「見えるから言ってんでショ!! それ、作ったのはオレなの!」
「いやー! 痴漢ーッ、襲われるッ襲われるぅぅ!!!」
胸に抱えるお重を死守していれば、カカシはレンゲを構え、鷹のように強襲する。
その攻撃をかわそうと頭の上に持っても、顔でガードしても、クナイを振り回し追い払っても、カカシが動く度にお重の中にある私の杏仁豆腐と果物は、情け容赦ない勢いで無くなっていく。
気付けば、レンゲ一匙分しか残っていない。
心もとない気持ちでカカシを見れば、にやりと笑った瞬間、それまでも消えてしまった。
見えなかった。全くもって見えなかった!!



絶望に駆られカカシを見れば、レンゲの上にぷるぷると震える白い魅惑のあんちきしょーと赤い宝石のつぶらな瞳のサクランボウが一粒乗っていた。
ちょっと顔を青ざめさせ、胸を押さえながらにやりと微笑むカカシ。
「ねぇ、食べたい? 木の葉の乳牛、サイトウさん家の直送乳牛を使った絶品杏仁豆腐。サクランボウ業界で知る人ぞ知るタケタさんの究極の一粒、甘冠坊。……ねぇ、食べたい?」
胸に抱えていたお重が転げ落ちる。
この展開、身に覚えがある。
この構図、私は見た事がある。



カランカランと空になったお重が転げ回る音を聞きながら、私はぐっと唇を噛みしめる。
させるか、そうはさせてたまるか。一度ならず二度までもあの屈辱を味わってたまるかッッ。
内なる闘志を燃えたたせ、私はカカシと距離を測る。
勝負は一瞬。
これを逃せば、再び私の尊厳は恥辱に塗れる。



逸る気持ちを押さえ、じっと様子を見る私の目の前でカカシはレンゲを左右に振りながら、ふふふと意地悪げに笑った。
「ほしーいの? 食べたいの? それじゃ、ちゃーんとオレにお」
カカシの言葉が突然途切れる。手で口を覆い、うっと体を震わせた。
瞬間、体が動いた。
これが好機ッ、神が与えたもうた絶好の機会ッッ。
チャクラを足先に溜め、踏みだす瞬間爆発させる。ぶつからないように添うようにカカシの近くに身を滑らせ、カカシの腕を掴む。
青ざめたカカシの顔が動き、唯一覗く右目がこちらを見下ろす。
見せつけるように私は笑い、魅惑のデザートが詰まったレンゲにかぷりと食らいついた。


途端に口内に広がる、杏仁の香りとサイトウさん家の濃厚な牛乳のふくよかな味に、一瞬脳がトリップする。
美味しい…!
口に入れた途端に杏仁豆腐はとろけ、ほどよい甘さがお口に広がり、夢見心地の世界へと連れ出してくれる。
もごもごとレンゲ甘噛みし、タケタさんご自慢のサクランボウに舌を伸ばして噛めば、いつも食べている水っぽいそれとは違う濃厚な甘味と微かな酸味がお口に充満した。
お、美味しい……。
ふわわーんと空に漂う雲に抱かれたような幸せに浸りきる。
幸せだ。
こんな幸せな味を作るカカシはすごいと、掛け値なしで褒め称えつつ、目を開ければ、口を押さえたままの恰好で茫然とこちらを見下ろすカカシと目が合った。



「美味しかったよ。グッジョブ」と爽やかに微笑めば、カカシの顔が急に真っ赤になり、問答無用でレンゲを引っこ抜こうとした。
「ぅっ」
我ながら意地汚いが、口にあるものを簡単に手放すような食生活を送っていない。
反射でがきんと逃げいくレンゲを噛めば、カカシは真っ赤な顔で悲鳴をあげた。
「あ、アンタ、自分のしたこと分かってんの?! 何、この女ッ! この破廉恥、痴女ッッ」
きゃーと悲鳴をあげそうな声で詰ってきたカカシの言葉に、頭に血が上る。
「一体何を言ってんですか! せっかくこっちは素直に褒めてやってんのに、言うに事欠いて破廉恥って、痴女ってなんですか?!!」
レンゲを噛みしめたため、うーうーとしか言えなかったが、カカシには私が何を言っているのか分かっているようだった。
私の性格が疑われるから撤回しろとうーうー唸ると、カカシは色白の肌をなおも紅潮させ、激昂した。
「咥えたまま喋んじゃないのッッ!! ここをどこだと思ってんの?! 仮にもアカデミーていうか、アンタ、アカデミー教師でしょッ。どんだけ、ふしだらなのッッ」
18禁小説片手にうろうろとアカデミー歩いている奴に言われたくねー!



その口閉じてやると実力行使に出ようとした私と、真っ赤な顔で起こるカカシの間にガイ先生が割り込んできた。
「まぁまぁ、青春は大いに結構だが、やり過ぎは過ちになるゾッ」
ばちんとウィンクされ、もろに浴びた私は一瞬力が抜ける。その隙を狙って、カカシはレンゲを取り返し、胸の中に抱えた。
「破廉恥ッ、エロ教師ッッ!!」
若干涙目に見えるカカシがむかついて、飛びかかろうとするのを、ガイ先生が止める。
「まぁまぁ、イルカ。カカシの奴も何か思っての行動だ。そう目くじら立てんでくれないか。アイツはああ見えて、シャイなんだッ」
きらりと光り輝く歯が凛々しい。
「はいっ、ガイ先生!!」
ガイ先生に止められ、私は一も二もなく頷き、カカシから距離を取った。



命拾いしたなと、胡乱な眼差しをカカシに向ければ、カカシは生意気にも顔を背けてきやがった。野郎……!!
ぎりぎりと怨念を込めて歯ぎしりしていれば、ガイ先生はカカシに向かって笑みを向けた。
「うまかったぞ、カカシ。しかし意外だな、お前がこんなにも料理上手さんだとは知らなかったぞ」
器を渡すときにぽんと肩を叩き、朗らかに笑うガイ先生。
うぅ、ガイ先生がカカシに触れたッ!
奇声をあげて割り込みたい気分に駆られたが、欲望のまま行動するとあまりにもみっともないため、涙を飲んで耐え忍ぶ。
羨ましい視線を向ける前で、カカシはガイ先生から器を乱暴に奪い取ると、お重の片づけを始める。
「なーんでオレがいちいちお前に報告しなきゃなんないのよ。言っとくけど、あの女が勝手に食わせただけで、オレはお前に食わせるつもりはなかったんだからーね。用がないなら消えてくれない」
不機嫌な顔で言い放ったカカシに、私は耳を疑う。
カカシ、あんた馬鹿じゃないの?! そこは自分の料理自慢をえさに、お弁当作りましょうかって持って行く流れでしょ?!
恋のライバルとはいえ、あまりに下手な手を打つカカシに、私は思わず助言めいた言葉を心の中で送る。
悶える私を尻目に、ガイ先生ははっはっはと一際大きく笑うと、自分の頭を数回叩いた。
「それはそうだが、うまいもんは食いたいだろう。今度、機会あがれば、相伴に預からせてくれッ」
まさかのお弁当催促に、衝撃を隠せない。
まさか、カカシの野郎。これを狙っていたのか! ガイ先生から言うように仕向けたのか、お前ッッ。



これが写輪眼の恋の駆け引き…。
私では到底真似できない高度な心理戦…!



心配なんてするんじゃなかったと、己の人の良さを罵倒していれば、なんとカカシはここでも耳の疑う発言を繰り返した。



「冗談は、その髪型だけにしてくれる? 今回はたまたま。作るつもりはこの先一切ないからーね」
きゅっと風呂敷にお重箱を包み、カカシは口布を上げる。残念だなぁとため息を吐く、ガイ先生に私は思わず手を挙げた。
「ガイ先生! わたしっ、私がお弁当作ってきましょうか?!」
「お、イルカが作ってくれるのか?」
それは嬉しいと笑ってくれるガイ先生に、頬が紅潮する。やった、やったぞ、私! 初めてカカシを出し抜いてやったッ。見事、カカシの前で出し抜いてやったーー!!
よっしゃーと胸の内でガッツポーズを掲げ、早速私はガイ先生の好みを聞きだそうとする。
だが、そうは問屋が卸さなかった。





幕間3へ/ 戻る/ 19


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…ガイ先生の口調が分かりません…。難しい……。
ちなみにカカシ先生は杏仁豆腐の食べすぎで胸焼けした模様です。分かりにくくてすいません…。