昔、あるところに、一匹のこうもりが住んでいました。



こうもりは夜の住人です。
たくさんのこうもりたちは明るい日射しを避けるように、朝、眠り、夜、起きて活動していましたが、このこうもりだけは違いました。
彼はただ一人、こうもりにとって、目が眩む朝に目を覚まし、自由に活動ができる夜に眠りました。



風変わりな奴だと、他のこうもりたちから言われていた彼は、太陽に恋していたのです。
不相応だと、畏れ多いと、バカな奴だと、他のこうもりたちからは言われましたが、彼は構いませんでした。
彼の望みは、恋しい太陽と共にあることだったのです。



けれど、彼は、どう足掻いても夜の住人でした。
例え太陽に恋していようとも、彼の生き方は変えられません。
それでも太陽を求めた彼は、とうとうその命を落としてしまいました。



彼にとって眩しすぎてすべてを消してしまう光と、彼にとっては熱すぎる熱に焼かれながら、彼は小さく囁きました。



「等しく愛するあなたの愛を独り占めにしたいと願った私を、あなたは笑いますか?」



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ねだられた昔話に、酔いに任せて、自分の思いを重ねて吐きだした。そのお返しに、彼も話してくれた。



成就しない恋物語を語り終えた彼は、瞳にこうもりと同じような切なさを含ませ、微笑んだ。



胸に秘めるはずの恋だった。



けれど、今の彼は、足掻いても足掻いても叶わぬ恋をしているこうもりで。
等しく愛を振りまき、恵みをもたらす、太陽には決してなれないけど。
あんたにだけ光と温もりを与える太陽に、俺はなりたいと、本気で思った。





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『月』と対になります。





太陽