夕暮れ

見かけたのはほんの偶然で――。


その人の隣には、傷だらけの、目を真っ赤にさせた子どもがいて。
里の災厄を封じたとはすでに名ばかりの、忌み嫌われた子どもの側にその人は何も言わずおだやかな顔をして、時折、子どもの口からこぼれる要領の得ない言葉に頷きながら、空を仰ぎ見ていた。


里の平穏な景色の中に溶け込んでいた、ありきたりな光景は、何故かオレの頭から離れなかった。


一本に縛られた黒髪に、一文字傷の入った顔。

空は血を連想させる真っ赤な夕焼け空で。

忌わしさしか感じなかったはずの空が、何故か輝いて見えた。


見かけたのは、偶然。

目にしたのも一度きり。

けれど、その光景が幾度も幾度もオレの脳裏を巡っていた。





おわり




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カカシ、独白。お互いが出会う前にこんなのがあったらいいなぁ…。(悦)