月夜
見かけたのは偶然で――。
暗い夜道から視線を外し、頭上に輝く月を仰いで、木々の梢を跳躍する白い光を見た。
狐面を被る白い装束に身を包んだそれは、自里の者達からも恐れられている者だった。
目にしたのは一瞬。
でも脳裏に焼きついた。
月の光を受け、煌めく銀髪が光の軌跡を残し疾走する。
訳もなく泣きたくなるような静謐な夜に、淡い銀色を残してくれた。
見かけたのは、偶然。
目にしたのも一度きり。
それでも、静かな夜に月が浮かぶ度、俺は空を見上げた。
おわり
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夕暮れ
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イルカ先生独白。夕暮れと対になる感じです。