ばーすでー後日談2

 びしり


部屋の天井が鳴り、かたかたと窓が小刻みに揺れ始める。
まるでその部屋だけ小規模な地震に見舞われた状態に、超状現象か、ポルスターガイストかと叫びたくなったイルカだが、視線の先にいる二人の存在がそれを否定する。
だって、光ってるのだ。
二人は髪の先からつま先まで青白い光をばちばちと放ち、チャクラ量が徐々に膨らんでいる。
イルカは思う。
この部屋にすむ地縛霊の祟りだとか、怨念だとかの方がよっぽど良かった、と。


家鳴りの根源はふしゅーふしゅーと、呼吸にしてはやけに荒い音を立てながら、肩を大きく上下させている。
まずい。なんだかとってもまずい。
こちらから見える二人のカカシの間には、四つの手のひらの上、細くて黒っぽい、そして三角形が二つついたものが乗っている。
間違いない。あれはイルカが、ちょっと冒険してみようと購入したアレに違いない。


ろくでもない予感を覚え、軋む体に鞭を打ち、痛む体を激励し、イルカはちょっとずつ、ちょっとずつ寝台の上を移動する。
痛みと疲労で嫌な汗がにじみ出るのを感じつつ、イルカはようやく寝台の端、居間に通じる襖に近い場所へとやって来た。
窓際の箪笥で声もなく、ただシューシュー言わせているカカシに気付かれないよう、そっと、細心の注意を払って腰を上げた刹那。


それはやってきた。


『萌える、燃えるぅぅぅ!! オレをモエコロスキですかぁぁッッ! この可愛い黒猫ちゃんめぇぇぇえぇぇッッ』
突如雄たけびを上げ、二人はチャクラを爆発させた。


ボフンだかゴフンだか、珍妙な音をあげてカカシがいた周辺の家具が粉々に粉砕消滅する様を茫然と目にし、ビシっとクモの巣状に罅が入った窓に、イルカは何の感情も見いだせなかった。
チャクラが爆発したにしては、被害は最小限だったと言えるが、自宅のしかも寝室でやられた日には、ちょっと黄昏たくなるものだ。
しかも、その箪笥の中身はイルカの下着やら忍び服の着替えなどの衣類ものが入っていたなら尚更だった。


ぶすぶすと焦げくさい匂いが鼻に付く中、二人はイルカの目の前に瞬身してきた。
ぶーはーと息を荒げ、目をランランに輝かせ、二つの鼻から血を流した変態二人。
寝室の惨事を茫然と見詰めていたイルカだったが、ここに至ってようやく自分の身に危険が迫っていることを知る。
己の手に向かって伸ばされる手は常にわきわきと蠢き、異様に興奮した二人が、はぁはぁと息を吐きながらにじり寄ってきている。
「い、いやいやいやいやいや!! カカシさん! 嫌ですよ。俺は絶対嫌ですからねッッ。もう無理です、もう無理って言ってんだろうが、この変態絶倫節操なし男ッ。俺に指一本でも触れやがったら今度はお仕置きお触り禁止一週間じゃすまさねーぞつぅか、しつけーんだよ、テメェしつこすぎるんだよっ。ねちねちねち人の体散々っぱらいじくり回しやがって、しかもいいとこで途中放置するばかりか、エロい声でたぶらやかしやがってッ、テメェ俺を殺す気かッ、俺を殺す気かってんだよッ!!! それ以上近づいたらタダじゃおかねーぞッッ」
イルカはマジでぶち切れた。
疲労も痛みも怒りで吹き飛ぶ。
啖呵を切り、膝を立てて拳をつく。白目は血走り、額に青筋入って、眼光も鋭ければ、どこからどう見てもガラの悪いヤンキーそのものだ。
あぁんと下から上に向かって舐めるようにガンを飛ばせば、ぴたりと二人は止まった。
よしッと、己の柄の悪さを心の中で褒め称える。
普段から散々ぱら可愛いかわいいと世迷言を抜かしていたが、これで引くこと間違いなしだ。
血気盛んな十代。
そのときの杵柄を心の中で感謝していれば、カスと耳を掠め、頭に何かが乗った。
あ、と気付いた時にはもう遅い。
ずほーずほーとコレ以上になく鼻息を荒くした男が二人、鼻の下の鼻血を拭き拭き、イルカに向かって怪しく微笑んだ。


「活きのいい子猫ちゃんってどーしてこうもそそられるのかねぇ」
「あぁ、もーたまんない。忍びの血が騒ぐ……」
どこから出したのか鎖と首輪を手に、舌舐めずりをしてきた二人に、ぴゃっとイルカの血がどん引く。
昔取った杵柄も、元暗部という肩書には勝てないのかもしれない。
興奮も冷めれば、痛みも疲労もどっとイルカの体を襲う。もうこれ以上一歩も動けない、指だって動かすのが辛いと、ぴるぴると震えるだけのイルカを前に、二人の猛獣は鎖を鳴らし、鈴のついた首輪を鳴らし、んふふふふと不気味な笑い声を上げた。
目が完全にイッちゃってる。
気配も完全に獣だ。
これから我が身の起こる不幸を嘆きながら、イルカは二人のケダモノを見詰めるしかなかった。


『だいじょーぶ。オレは優しいから』


ちっとも優しくない顔で、鎖、首輪プラス、足かせ手錠まで見せつけられ、イルカは心の中で叫んだ。


誰が優しいだとぉ?! 前言、撤回だぁあぁあぁぁ!!!!!







「イルカ、大好きなミルクだよー。ほら、飲んで」
小さく喘ぎながらシーツに顔を埋めていた可愛い黒猫の顔を掴み、口が開く瞬間を狙って出した。
熱かったのか、小さな声を上げて目を瞑るイルカの顔を、白濁の液が汚していく。
日ごろは、お日さまのような笑みを浮かべ、子供たちに慈しんだ眼差しを注いでいるイルカが、自分の欲望に塗れ快楽に溺れている。
たらたらと顎を伝う液を掬い、唇に持っていけば、虚ろになった目のイルカは何も言わずに赤い舌を出し、カカシの親指をしゃぶった。
ぞくぞくする。
昼間のお日さまのようなイルカも好きだけれど、乱れたイルカも好きだ。
っていうより、そのギャップがすごいよね。
まるで本当の子猫のように、カカシの手についた液を舐めるイルカに煽られた。
シーツに倒れ込むイルカの体を横から持ち上げ、頤を包み、堪らす唇に噛みついた。
苦い味が舌を痺れさせるが、それも直無くなる。
噛みついたカカシを受け入れるように、イルカも口を開き、くちゃくちゃとカカシの口内を舐め始める。
外では絶対キスを許さないイルカだが、実はイルカはカカシとのキスが大好きだということは知っている。
「ふ、ぁ…」
とろんとした目に涙が浮かぶ。手を股の間に這わせれば、何度も無理矢理吐き出させ、ぐったりとしていたそれはわずかばかり芯が通っていた。
男の体は正直だ。
かわいいと心中ごちり、それに手を絡め優しい愛撫を加えれば、イルカの瞳から涙が零れ落ちる。
「さわら…い…で」
首を振り、苦悶に顔を歪めるイルカの唇を舐める。弱弱しい声をあげる可愛い猫を笑い、戯れに手を動かし続けていれば、イルカの体が跳ねた。
それと同時に、後ろから荒い息をあげて背中に倒れ込んできた影分身の重さが腕にかかった。
うっとうしい重みに、舌打ちをつく。
「あぁー、気持ちいい……。イルカ、最高ぉ……」
「んっ、い…たい」
一度でいいからと散々ぱら懇願した挙句、抜かずに何回もイルカの身を穿っていた分身がイルカの胸を悪戯に引っ掻く。
奴が何度も弄ったせいで、イルカの乳首は真っ赤に腫れていた。
「止めろ。イルカが痛がってんだろうが。それにいい加減抜きなさいよね」
いつまでもイルカの背中から離れようとしない分身を睨めば、悪びれた様子もなく口端に笑みを浮かべた。
「なーに言っちゃってんのよ。イルカの大事なとこ散々ぱら弄ってる奴に言われたくなーいね。イルカ、かわいそうー。それ、腫れてんじゃないの?」
イルカの物が可愛くて、散々可愛がってやった自覚はある。触り過ぎてちょっとばかり赤くなっているような気もしないではない。
もしかしてイルカが触るなというのは、出せないから辛いというわけでなく、擦り過ぎて痛みを発しているせいかと今更ながらに気付く。


「あちゃー、やり過ぎたかな…」
「十分、やり過ぎでしょ。イルカ、ほとんど意識ないもん」
可愛い黒い耳をつけた、目の中に入れても可愛くない黒猫は、とろんとした顔つきで何もない場所を見詰めている。焦点も合っていない気がする。
それでも、まだあと一つやってもらっていないことがあると、カカシはイルカから離れるように分身に言いつけた。
「えー。もうちょっとやりたかったのにさー。しかも、なんでバック限定なんだよ。おかげで、オレ、イルカの可愛い喘ぎ顔見れないじゃん」
文句言いつつ、イルカから己を抜いた分身を鼻で笑う。
「あったりまえ。調子乗るんじゃないよ。オレのなのに、なんでお前に見せなきゃなんないのよ。それより、ほら、イルカの体持って」
体を離すのが惜しく思いつつ、鼻先にちゅっとキスを残して、分身にイルカを渡す。抱き合う形のそれにちょっとむかっ腹が立ったが、それは一瞬だと己に言い聞かせ、胡坐をかいた。
雄々しくそそり立つ自分のそれを目にし、我ながら苦笑が出た。呆れるほど出したはずなのに、この精力はどこから出てくるのか自分でも疑問だ。
イルカがいれば一生萎えることはないのだろうと、妙な確信を覚える。
「ちょっと、はい、悪戯すんじゃないの。イルカここに乗せて。ほら、早く」
油断すれば、所構わずキスを降らせる分身を叱りつけ、胡坐を掻く上に乗せろと急かす。
ぶーたれた顔を作りつつ、イルカの尻を掴み、分身はゆっくりと下ろす。散々吐き出したそこからは、己と分身のものが零れ落ちた。
ぼたぼたと落ちるそれに満足感を覚えながら、ゆっくりとイルカの中に埋め込まれる己を見詰めた。
「っ」
大した抵抗もなく、イルカの中に全て収まった。
小さな吐息を吐いて、ぐらりと後ろに倒れたイルカの体を受け止め、肩から崩れ落ちそうになる顔を引きとめ、自分へ向かせる。
「イルカ、起きて。これで最後にするから」
ちゅっと鼻傷に口付けを送るが、イルカは返事すら返してくれない。
手枷をつけた両手もだらりと前に落ち、足かせに鎖の付いた足もピクリとも動かない。
これじゃ面白くないと、カカシは顎でしゃくる。影分身も心得たもので、カカシのポーチを開き、一粒の丸薬を持ってくる。
暗部時代からお世話になった特製の兵糧丸だ。効果は己の身で保障されている。
ただイルカは普通の中忍だからと、分身からもらった丸薬を噛み砕き、その四分の一をイルカの口内に唾液と一緒に注ぎこみ飲み下せた。
余ったものは勿体ないが、傍らのシーツに吐き出した。自分が元気になって、イルカを壊しては元も子もない。


イルカの意識を戻ることを待っていれば、ぴくりとイルカの瞼が動く。さすが特製兵糧丸、三日間の不眠不休をもろともしないだけはある。
「…み…」
うわ言のように水が欲しいと鳴くイルカのために、分身がコップに入った水を唇に当てれば、イルカは溺れるように水を飲む。むせないように加減しつつ、それでも勢い余って口端から水が流れ落ちる。
一杯、二杯と飲み、三杯目でようやく落ち着いたのか、コップから唇を外すと少し前屈みになった体から力を抜き、カカシの胸に全身で凭れかかる。
「……カ…カシ…さん?」
零れた水の跡を親指で拭い、艶やかな黒い毛並みを撫でてやる。
気持ち良さそうに目を細めるイルカを愛でながら、こめかみに口付けを送れば、小さく笑った。
無防備なその笑みに己の欲望がずくりと疼く。
イルカも感じたのか、とろりと潤んでいた瞳に急速に意志の光が宿り、顔に赤みが差す。
「ッッ! カカシさー」
思いのほか、兵糧丸は効果を発揮したらしい。
怒りに顔を赤らめたイルカが本格的に口を開く前に、腰を掴み上げ、手を離した。
「ぅあ!!」
背中を反らせ、イルカの口から嬌声が迸る。それに気分を良くし、一回二回と持ち上げたは落とすを繰り返していると、五度目に持ちあげた時イルカが泣き出した。
「やぁ、もういやだッッ、やだぁ」
痙攣するように体が震え、ぽろぽろと涙が零れ落ちる。イルカのものを見れば、中途半端に起ち上がっているが、吐き出した様子はない。
何が嫌なのか分からず窺えば、イルカはしゃくり上げるだけだ。
首を傾げていれば、分身はため息を吐きながら指さした。
「分かんないの? 刺激強すぎて出せないんだって。可愛そうに、こっちまでぴくぴく痙攣してるーよ」
軽く合わせた膝を手にかけ広げ、分身はふぅと小さく息を吹きかければ、びくんと体を震わせ、申し訳ないほどの液がこぷりと先端から吐き出された。
それで少しは楽になったのかといえば、イルカはしゃくり上げ、首を振っている。
「や、や…。体、おかし……!! んぁ、うー」
首を振る度に踊る黒髪に、その上を鎮座する三角形の黒耳。自分では持って行きようのない快感を消化できずに、くねるように体をたわませ、全裸を晒すそれに目が釘つけになる。
淫らな踊りを踊る黒猫に、ごくりと生唾を飲み込むばかりだ。


「苦しいの、先生? 楽になりたい? いつものように突いて欲しい?」
手枷のついた拳で目元を押さえ、こくこくと頷くイルカに、カカシは口端に笑みを浮かべる。
「じゃぁ」
イルカの目がカカシへ移る。その瞬間、イルカの顔は真っ青に変わった。
ぷるぷる震えるイルカの目の前で、カカシはにたりと口を開き、目を細めた。


「『にゃーん』てオレの下で鳴いて、可愛い黒猫ちゃん」


「うにゃぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


そのときの笑みは、影分身の記憶を回収した時のカカシ自身ですら、悪魔の笑みだと認めさせた。








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…エロいんだか、エロくないのか、よく分からなくなりました……。
本よりエロかったらどうしようと、買っていただいた方に申し訳なくなる管理人です…orz
生ぬるいエロで、すいませんッッ!!