「イルカが欲しい!」
目を輝かせ、毎度お決まりの言葉を吐いた、誕生日プレゼントにもらった男を、とことん冷たい眼差しで見下ろした。
「やだ、イルカッてば。今晩はイルカがSな受けに挑戦するの? オレ、根っからのSだから、そんなことされたら三日三晩離してあげらんないよっっ」
興奮すると叫ぶ男の頭の中は一体どうなっているのだろうと、生ぬるい目で見つめる。
きゃーきゃー言う男を見つめていれば、男はぴたりと口を閉じると俺を窺ってきた。
あえて何も言わずに見つめ続けていると、男は「なーんてね」とわざとらしく笑い、こう続けた。
「冗談よ、じょーだん。オレはイルカがいてくれたら、何もいらないよ。その気持ちだけで十分」
そして、男は寂しそうに笑うのだ。
十分だなんて、ちっとも思ってないくせに。
そんなやり取りをし始めて、早10年経ってしまった。
今年、節目の10年を迎えるに至り、研究に研究を重ねて完成させた術を、とうとう物にした。
準備は万端。後は仕上げを御覧じろうってんだ。
いつも、情けない顔して笑う男へ思い知らせてやるために、俺はいっちょやってやることにした。
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カカシ先生、誕生日話〜。
H230526の『プレゼント』から10年後のお話です。
副題:あらゆる意味で痛すぎる初夜話。
プレゼント序