神妙に待ちに入ったイルカを見下ろし、カカシは嬉々として手を這わせていく。
頬から首筋、腰から太股へと、肌の感触を確かめるように触れるカカシの手は、いつもより大きく感じた。
軽く撫でるだけの行為なのに、イルカの心臓はやかましく鳴り、あっという間に息があがる。肝心な場所に触られてもいないのに、一人熱をあげる自分が恥ずかしくて、何度も息をかみ殺した。
「出来るだけ、興奮しないように気を付けるけど、痛かったら言ってね」
興奮すると痛くするのかと眉を潜めたイルカに、カカシは小さく笑う。
「だって、今のイルカ先生は、オレしか知らないイルカ先生なんだもん。興奮するなって言う方が無理でショ」
分かりたくないが、この先待っていることを想像すると、カカシの言い分はもっともだと頷くイルカがいる。けれどあっさり認めてしまうのも危険な気がして、一応釘を差しておく。
「……痛くしたら、即、ぶん殴るからな」
「はい、肝に銘じます」
かしこまった言い方がおかしくて吹き出せば、カカシも目元を和らげ、笑みをこぼした。



「じゃ、胸、触るね」
しばらく他愛ないじゃれあいを続けていたが、それだけでは物足りなくなったのか、カカシが宣言する。
そういうことは言うなと言い掛けた言葉は、カカシの手が這うと同時に喉の奥に消えた。
「ん」
シャツの上から大きな手が胸を包み、強弱をつけて揉まれる。いつもはないものが揉まれる感触は、イルカにとって不思議な感じだ。
気持ちいいというよりはくすぐったいような、もどかしいような、曖昧な感覚が肌をざわつかせる。
「気持ちよくない?」
反応が芳しくないせいか、カカシが尋ねてくる。
気持ちはよくないが悪くもなくて、首を傾げれば、カカシは顔を接近させた。
「じゃ、これは?」
悪戯っぽい口調で囁いたと思ったら、敏感なところを突然摘まれ、息を飲む。そのままシャツごと口に含まれ、吸いつかれ、イルカの背中がしなった。
「カ、カシさん…!」
突然すぎると抗議を込めて、目の前にある髪を軽く掴めば、くぐもった声で笑われた。
歯でしごくように柔らかく噛みつかれ、痛みと快感が同時に走る。もう片方の頂にも続けて噛みつかれ、空いた頂は指先でイジられ、押さえきれなくなった声が勝手に漏れ出た。
「っ、あ…!」
耳から、甘い高い響きの声が滑り込んでくる。
自分が発していると理解はしているが、間近で聞こえる女の嬌声に、変な倒錯感を覚えてしまう。
今はカカシの頭に添えるだけとなった手を口元に当て、声を封じ込めようとしたが、その動きを読んだカカシが邪魔するように手を掴んできた。
「もっと声聞かせて。オレだけのイルカ先生を味わせてよ」
非難するより先に、カカシに上目遣いで熱っぽい眼差しを注がれ、熱が上がる。惚れた相手に懇願されて、嫌とは言えなかった。
「……ばかヤロー」
どうにでもしろと両手をシーツに押し付けるイルカに、カカシは上機嫌にイルカの頬へ派手なリップ音を立てて吸いついた。
時折、首筋を吸いつく以外は、胸ばかり愛撫をするカカシに、イルカは段々ともどかしくなってくる。おまけに、未だシャツの上からしか触ってくれず、シャツ越しに舐め回すものだから、肌にシャツが張り付いて居心地が悪かった。
「カカシ、さん」
もどかしいついでに股の奥がむずむずしてきて太股をすり合わせていると、伏せていた顔を上げ、カカシは晴れやかな笑顔を見せてきた。



「あー、もう最高! イルカ先生、超卑猥っ」
ハートが乱舞する口調に、何だと下に視線を向けて、イルカは言葉を無くす。
カカシがしつこく舐めたためにシャツは透け、肌を容赦なくさらけ出している。しかも、その透けた部分というのが、赤く充血した乳首とへその三カ所のみというマニアックさ。
破廉恥。
そんな言葉がイルカの脳裏を駆け巡る。
「今度は、男のイルカ先生もしましょー! もう一度この感動を再現しまショ!!」
目の前で熱く語るカカシの頭を問答無用で一発殴った。
「ふ、ざけんな!! てっめ、よくもこんな破廉恥な格好が想像できたもんだな!!」
「ひどい! 痛くしてないのに、オレ、痛くしてないのに!!」
「俺の心がいてーつってんだ!!」
ぎゃいぎゃい言いながら、お互い両手を組み合わせて力を競わせていたが、マウントポジションを取られているばかりか、所詮、女の非力な腕力で勝てる訳もなく、勝負は一瞬でついた。
カカシが少し力を入れた途端、両手は呆気なくシーツに埋まり、身動きが封じられてしまう。
「くっそ、何だこの非力さは!!」
「やーん、イルカ先生がかよわい〜」
歯噛みするイルカとは正反対に、カカシは浮かれている。
本当の俺はかよわくないと語気を強めても、カカシはどこ吹く風でイルカの顔中にキスを降らせた。
「カカシさん!!」
ふざけんなと名を呼べば、カカシは顔を上げる。そのとき、どこか余裕のない笑みを浮かべているカカシに気づいた。
もしかして、こんなふざけたことをするのは、いっぱいいっぱいな自分を誤魔化すためだったりするのだろうか。
試しにイルカは膝を立てて、カカシの物へ故意に当ててみる。すると、カカシは小さく呻いて、慌てたように腰を引いた。
触れたカカシの物は硬くなり、完全に立ち上がっていた。



「……おいたしないの」
イルカに悟られたことが恥ずかしいのか、少しばつの悪い表情を浮かべ、小さくメッと叱るカカシに、イルカの悪戯心が刺激される。
イルカの手首を押さえつけているため、腰を引いたとはいえ、カカシとの距離はあまり離れていない。
にやっと小さく笑みを浮かべ、イルカは膝をより立てて、カカシの物へ愛撫を開始した。
膝でしているために、力の強弱が思い通りにいかない。だが、そこがカカシには予測不可能な動きのようで、不意に訪れる快感と痛みに、興奮しているように見えた。
時折息を噛み殺しては、柳眉を潜め、カカシが見下ろしてくる。
白磁の肌がより薄桃色に色づき、紅色になった唇に赤い舌が這う。
匂いたつように色香を振りまき始めたカカシに、イルカは生唾を飲み込む。
カカシが快感に打ち震えている姿を、こうもじっくりと見たことはない。顔の造作がきれいなことも相まって、とんでもない卑猥物を見ている気分にさせられる。
この人、閨でも覆面してた方がいいよなと、カカシの色香に当てられたイルカは真剣に思う。
もう少しカカシが感じる顔を見たくて、押さえられている手首を離してほしいと腕に力を込めた。
膝の愛撫ではカカシも決定的な快楽にはほど遠いため、すぐにイルカの意図を理解して離してくれると思っていたが、逆に手首を強く握られて、虚を突かれた。
「へ?」
間の抜けた声をあげるイルカの肩にカカシは顔を突っ込むと、引いていた腰もイルカの足に押しつけ、潰さんばかりに抱きしめられた。



「ちょ、カカシさん! くるしっ、重い!!」
堪らず声をあげるイルカに、カカシは荒い息をこぼしながら、イルカの首筋に吸いつき唸った。
「本当に悪い子。オレの気持ちも知らないで…。覚悟しなさいよ」
直後に肩へ噛みつかれ、痛みに体が跳ねる。
その瞬間、やばいと冷や汗が吹き出た。
前もこんなことがあった。
カカシは長期任務で月単位で任務に行っていて、受付の任務が終えたイルカと、報告に来たカカシが廊下で偶然出会った時のことだ。
無事に帰ってきたカカシの姿に安堵して、目尻に涙が浮かんだ瞬間、抱きしめられ、先の言葉を言われた。
その後、カカシに連れ去られ、息も満足にできないほどの快楽に一晩中苛まれ、翌日、イルカは仕事を休んでしまった。
翌々日に、急に休んですまないと同僚たちに頭を下げに行けば、同僚たちは揃いも揃って、気にすんなとどこか悟ったような笑みを浮かべていた。
そのときはなんて心の広い同僚たちだといたく感動していたが、この度のことで、裏からカカシが手を回していることが判明し、イルカは羞恥でごろごろと転がり回りたい気分になった。
カカシのことだ。イルカが休んだ原因を、いや、事前に休むことになると同僚たちに告げていたに違いない。
そんなカカシのことだから、今回は羞恥報告をされると、イルカは危機感を覚えた。
「カカシさん、痛くしないって、言っただろ! 我慢するって言ったじゃねーかっ」
無駄な足掻きと知りつつも、ここで止めねばと叫べば、カカシは同時に言った。
『我慢するとは言ってなーいよ』
二重音を奏でたことに、一体何が起きたと口を開き、肩に吸いつくカカシ以外の気配を感じて、視線を横に向ければ、
「来ちゃったっ」
てへっと小さく舌を出し、右手を自分の頭に当て、小首を傾げてイルカを見下ろす、もう一人のカカシがいた。



「うっ、あぁぁぁぁぁあああ! ああああああああ!!」
姿を認めた瞬間、イルカの脳裏にバッドエンドの文字が流れる。これまた悲しい音楽つきという、無駄に出来映えの良い表現を見せてきた己の脳に悪態をつきつつ、イルカはがたがたと震えた。
床に転がっていただろう影分身のカカシは、ご丁寧にも全裸だった。準備は万端だぜと影のやる気具合を見せつけるように、一物はイルカが引くほどにたぎっている。
「ずいぶん、早かったねぇ。もう少し手こずるかと思ったんだーけど」
噛みついた場所から滲む血を舐めとりながら、カカシは平然と影の乱入を受け入れている。
「そりゃ、イルカ先生の芸術的卑猥姿を生で見たかったしねぇ。つぅか、オレの本体って大概鬼畜だーよね。最初からじゃなくて、後から乱入させようって、ねぇ。可哀想に、イルカ先生、びっくりして声も出なくなってるじゃない」
カカシがイルカの背に腕を回し起きあがらせると、すかさず影がイルカの後ろへ張り付いてくる。
肩から顔を出して、破廉恥とイルカが称した姿を舐めるように見下ろし、影は笑った。
「せんせ。大丈夫、安心して。オレは本体と違って優しいから」
囁かれる言葉は優しいが、腰におしつけている硬い物はまったくもって優しさという言葉は見あたらない。
「あらま、心外。オレだって優しいーよ。イルカ先生にはこれからたっぷり気持ちよくなってもらうからね」
楽しみにしててと鼻先に口づけられ、イルカは何と言っていいか分からない。
ただ一つ分かったのは、明日、洗濯は出来ないということだけだった。





******





「あ、やっ、や!!」
男のときと比べずいぶんと小さくなったものを舐めてやれば、イルカはせっぱ詰まったような悲鳴をあげた。
肩に乗せた足が震え、突っ張るように伸ばす回数が多くなったことを見越し、皮から出た肉芽に強く吸いつけば、イルカの体はがくがくと震え、カカシの頭を抱き込み、甘美な声をあげた。
「あ、あぁぁぁぁ!!」
それと同時に、女の部分に入れていた指が強く締まり、ほどなくして力が抜けると滑らかな液体が溢れ出てきた。
鼻にかかった吐息を吐き出し、全裸のイルカの体が後ろへ倒れ込む。すかさず影が抱き止め、溢れ出た液体を啜っていたカカシへ不満の声をあげた。
「もー、ちょっと。アンタばっかりずるいじゃない。オレもイルカ先生のそれ飲みたい」
ねぇ、本体ばっかりずるいよねと、意識が朦朧としているイルカの唇に舌を這わし、こぼれ出た唾液を舐めとる影に、カカシは鼻を鳴らす。
「よく言うよ。さっきから暇があれば、先生の唇にちょっかい出してるくせに。止めなさいよね、先生、苦しがってるでショ」
滑りがよくなった場所に、三本目の指を入れれば、イルカの体が跳ねて小さく息を漏らす。
「苦しがってんのは、お前のテクがないからでショ。責任転嫁なんて男らしくなーいの。あ、せんせ、起きた?」
瞳に意志が宿ったと同時に、両方の乳首を摘まれ、イルカの体は波打つように小刻みに跳ねた。
「っ、も、やだ。止めて……」
影に背中を支えられ、両足はカカシの肩に乗り、ほとんど身動きが取れないイルカは、懇願するように自分の胸を苛む影の手を振り払おうとした。
「そんなこと言わなーいの。ほら、ここ気持ちいいでショ? せんせ、ここ大好きじゃない。後から噛んであげるから、意地悪なこと言わなーいの」
優しい声音で宥めながらも、イルカの胸を揉みしだく手は止まらない。
常に甘い快楽に犯され、尽きることのない愛撫は息ができないほどだ。
男の時のように一瞬に向けた快楽とは違った、底なし沼のような快楽は、ひどくイルカの身を苛んだ。
「っ、やだ、もぅ、やだ」
ぐずぐずにとろけさせられて、体に力が入らない。舌の動きも鈍くなっているみたいで、うまく言葉が紡げなくなっていた。
それなのに、目から溢れる涙は無尽蔵で、イルカの意志とは反して勝手につるつると流れ出る。
早く終わらせたいと泣くイルカに、カカシたちは感極まった声をあげた。



『かっわいい〜』
影はイルカの頬を伝う涙を舐め、カカシは突き入れた指をゆっくりと動かし、赤く充血している乳首に吸いついた。
「もぅ、どうしよう、この子!!」
「ん、あ」
「こんな子、反則だーよね! 可愛いわ、色っぽいわ、小悪魔的だわで、こんな子一人にしたら襲われちゃうっ。誘拐されて、監禁されちゃう!!」
「っ、や、あぁ!」
強く指を突き入れられ、痛みともどかしい何かが体を走り抜けた。
思わず前にいるカカシにしがみつけば、後ろから抗議の声があがる。
「なんかオレだけすっごい仲間外れ感ハンパないんだけど!」
「うるさいねぇ。ま、イルカ先生も慣れてきたみたいだし、次のステップいこうか」
カカシはイルカの中から指を抜き、肩に置いていた足をゆっくりとシーツの上へ下ろした。
ようやく足がついたことで安心したのか、イルカは俯き、しばしの休息をとっている。
「ねぇ、どうせオレの出番は後なんでショ? だったら、見せてよ」
いたわりを込めて、頭を撫でていれば、影が意見をしてきた。カカシとしては、じっくり正面からしたかったが、後々統合される記憶でもあるので、影の意見を汲み取っても損はないと考え直す。
イルカが驚くといけないので、影と小声でやりとりしつつ、双方の案がまとまったところで、所定の位置についた。



「…な、に?」
ふらつくイルカの脇を持って、影が後ろから抱えあげる。
イルカの前には寝そべっているカカシがいて、カカシの物が天を向いていた。
「ここ、座って」
影が誘導するままに、寝そべるカカシの腰近くへ座り、イルカは訳が分からず、影を見上げる。
「んー、上目遣いがこれまた格別っ。イルカ先生、オレにもアンタの初めて見せてね」
額に口づけを送られ、分からないながらも前を向けば、寝そべったカカシがイルカの腕を取り、「きて」と囁いた。
腰を上げて誘われるがまま、カカシを跨いで膝でにじり寄ると、影の手が腰を固定してきた。
「え?」
一歩も動けずに困惑していれば、影はイルカの横腹に顔をすりよせ笑う。
「今から、一つになーるの」
その言葉に、イルカの下に待ちかまえているものが何かを知って、身が竦んだ。
カカシの性行為時のものは、たぶんだが一般男性に比べて若干だが大きいように見える。指が三本入っただけでもきつかったのに、あの場所にカカシのものが入るとは思えなかった。



「カ、カカシさん、ストップ、ストップ!」
茹だっていた頭は待ちかまえている凶器を前に、クリアになった。
慌てて腰を引こうとしたが、影の手がそれは許さず、体を捻ろうとしたが前のカカシが両手を引っ張っているのでそれもままならない。
「カ、カカシさん、もう少し広げませんか? もうちょっと、ほんの少し! 何なら、俺がしますから、もう少しだけ時間をっ、時間をください!!」
お願いしますと恥も外聞も捨てて、懇願したが、カカシたちの手は一向に緩まず、そればかりか、影の手は無情にもイルカの腰を徐々に落とし始めていた。膝に力を入れて対抗しようとするが、腰は刻一刻と落ちていく。
「ひっ」
入り口にカカシのものが触れ、イルカは悲鳴を漏らす。
まずい、このままでは入れられてしまう。心の準備も不十分なままやられてしまう。
「カ、カカシさん!?」
待ってください、本当に待ってくださいと震えるイルカに、カカシたちの声がハモった。



『もう待ちません』
好き勝手に人の体弄くり回し、イルカの制止の声を無視した奴らの言う言葉ではない。
お前らが、いつ待ってくれたと、罵声を張り上げようと息を吸った瞬間、狙いすましたように影が無理矢理腰を落としてきた。
抉る瞬間を予期し、息を飲み込んだイルカだったが、その感触はつるりとあらぬ方向へと滑った。
「……あれ?」
前のカカシが訝しげな声をあげる。後ろにいるカカシも「おっかしいなぁ」と呟き、股の間を検分するかのようにのぞき込んでくる。
「バ、バカ! 見るな!」
「今更でショー? 本体ほどじゃないけど、全部余すところなく見たヨ」
しれっと最悪なことを言う影に、顔の熱が上がる。
そうこうしているうちに、カカシも起きあがって、イルカの体に腕を巻き付けるなり抱き寄せ、「ここだよね?」と後ろから無遠慮に指を這わせてきた。
「うん、ここだよ。だって、穴があるもん」
「だよねー。なんで、滑るのかな。穴あるのにね」
二人のカカシに挟まれ、指であらぬところを開かれ、そこを注視してくる二人に、イルカは発狂したい気分に陥った。
「ちょっと! あんたら、真面目にやるつもりあるんですか!?」
一体何の羞恥プレイだと涙混じりに叫べば、二人から渋い声が帰ってきた。
「当たり前でショ。こんなにおっ立てているのに、何を言い出すのよ」
「本当、本当。出来るなら、オレだってねじ込みたいのに、イルカ先生の体を思って耐えているんでショ?」
何で分からないかなぁとため息を吐く二人に、イルカは切れた。







戻る/ カカシ×女イルカ2








イルカ先生誕生日当日まで、いっていないという恐ろしさ…orz
そして、……18禁って何だろう…。(遠い目)






比翼(カカシ×女イルカ1)